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リモートワークでモチベーションが上がらないのはなぜ?営業スキルも向上させる雑談の効果とは

JIJICO / 2020年9月28日 18時0分

リモートワークでモチベーションが上がらないのはなぜ?営業スキルも向上させる雑談の効果とは

リモートワークでモチベーションが上がらないのはなぜ?営業スキルも向上させる雑談の効果とは

時短勤務やコロナ禍でのリモートワークと、働き方が多様化し、それに伴う会議の効率化、コミュニケーションのデジタル化が進んでいます。社内勤務の場合も、「会話」について少なからず神経を使わざるを得ない状況が続いています。ミーティングの前後や共同作業の際、また社内でちょっとすれ違う時にしていた〝雑談〟や〝無駄話〟が減り、「なんとなくやる気が出ない」「仕事が楽しくない」「アイデアが出ない」と感じている人が多いようです。

また、仕事上の打ち合わせや商談の際には、まずは当たり障りのない雑談から自然に入ることが、スムーズな会話の流れへ導くために良いとされます。ビジネス上のモチベーションや営業スキルにも関わる〝ちょっとした雑談の効果〟とは、どのようなものでしょうか。ビジネスコーチングの講師、松本瑞夫さんに聞きました。

雑談はチームの「関係性の質」と「思考の質」を高めるエッセンス。雑談スキルが高い人は、心から相手の話に興味を持つことができる〝聴き上手〟でもある

Q:雑談は、リアルな職場では「他の人同士の会話や電話の声が気になる」といった、むしろ騒音の一つととられることが多いのではありませんか? -------- 社外から電話をしたとき、電話口の背後の物音や雑音は想像以上によく聞こえるものです。業種にもよりますが、事務所内の雑談は、対外的にあまり快く思われないことの方が多いでしょう。特に来店接客を伴う業種では、社員同士が談笑している様子は、マイナスの印象を伝えてしまうことがあります。

また事務所内でも、集中して仕事を進めたい人にとって、聞きたくないのに聞こえてくる第三者同士の会話は雑音でしかなく、不快です。会話だけでなく、上司や目上の人の「ああ、疲れた」「最悪だ」などといった、ため息まじりの独り言は、聞いた者の「大丈夫ですか」「どうかしたのですか」という反応を強要されているようにも聞こえ、まわりの人にストレスを与えてしまいます。ちょっとした会話や独り言でも、業種のイメージや声の音量に対して配慮が必要です。

Q:クリエイティブな職種では雑談が発送のヒントになることは、よく知られていますが、そのほかに、仕事上の効果があるとすれば、どのようなものですか? -------- 確かに、しんと静まり返ったオフィスでは、電話の対応の声だけが響き渡るようで、気疲れする場合もあります。少しの雑談が良い息抜きになる場合もあるでしょう。

ただ雑談と言っても、その内容はさまざまです。一般的には大きく3つに分けられます。 ・単なる世間話 … テレビや食事、天気の話など ・相手を思いやる話 … 体調、近況など ・心理的に訴えかける目的のもの … 商談の成功など、意図的なもの。ある程度のスキルが必要

また、雑談の効果を考える際には、会社など組織内のパフォーマンスと関連付けることもできます。その一例として、元マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する組織の成功循環モデル「グッドサイクル」という考え方があります。

① 関係の質 … 互いに尊重し、共に考える ② 思考の質 … 気づき、興味がある ③ 行動の質 … 自分で考え、自発的に行動する ④ 結果の質 … 成果が得られる 再び①へ 信頼関係がさらに高まる

チーム内の関係の質が高まると(①)、メンバーは自分から課題に気づくようになり、仕事を面白いと感じるようになります(②思考の質が向上)。すると、自発的に行動するようになり(③行動の質が向上)、その結果、成果が上がり(④結果の質が向上)、信頼関係(①関係の質)のさらなる向上へとつながるという良い循環が機能し続けるというものです。

この4つの質のうち、①の「関係の質」を高める際に、雑談が大切な働きをすると考えられます。

どこまで高いレベルの成果を目指すのかは別にしても、仕事上のチームの関係性をより良いものにするために、実務とは関係のないようなちょっとした会話を交わすことは、共に考え行動する上で、とても有効であることは間違いありません。

Q:会議や打ち合わせ、商談の前後にちょっとした雑談がある場合とそうでない場合で、会議内容や進行に影響があるものですか? -------- 商談や会議、打ち合わせの場面では、互いに緊張して力が入った状態を解きほぐすための緩和剤として、意図的に雑談が使われることもあります。人はリラックスモードに近い方が、物事の捉え方が柔軟になり、アイデアがひらめきやすく、より力を発揮しやすくなることはよく知られています。人財育成の講習会でも、内容に入る前に全く関係のない雑談から始めることがよくあります。ポジティブにマインドセットして講習に望むためのワンステップとなります。

どのような内容でもよいのですが、参加者の簡単な自己紹介や個人的ニュースの紹介など、なるべくプラスのイメージの話題を選んで話すよう、参加者に促しています。一見本題とは無関係でも、こうした話の後は発想力や捉え方がアップするので、結果的に伝えたい本質的な内容に、より気付きやすくなる効果があります。

前述の「思考の質」というポイントにも、こうした雑談のエッセンスが影響していると言えそうです。

Q:職場や仕事上の雑談についてのイメージは、コロナ禍で変化があるのでしょうか? -------- 人は本質的に、自分が知らないことやもの、未知の領域には恐怖を覚えるものです。初対面の人に対峙する場合も、相手の趣味・嗜好、人となりを知れば知るほど警戒心を解き、親しみを覚えてくるにつれ、自ずとコミュニケーションが増えていきます。

コロナ禍で増えたリモートワークや、会話を制限されるような働き方では、こうした情報を得る材料が極端に少なくなっています。このような状況下では、「承認の重要性」を実感せざるを得ません。

SNSやチャットなどでの会話では、対面のような目配せやうなずきで「わかりました」「いいと思います」のような「承認」のサインにも、わざわざワンクリックのひと手間が必要になります。そのスレッド内には、このひと手間を意識する人と、あまり重要視していない人とが混在しているため、参加者同士の反応がわかりづらいと、活発な意見交換の妨げになります。

よく言われるリモートマナーとまではいかなくとも、その会議の運営者やファシリテーターなどが、メンバーを緩く巻き込むようなレスポンスルールの工夫をする必要があるのではないでしょうか。

相手に対しての配慮を表すためにも、雑談の意義が大きかったことに気付かされます。

Q:営業スキルの一つとして捉えたとき、商談の際などに、雑談がうまい人の方がそうでない人より営業力が高いように思われますが? -------- 「雑談がうまい人」というのは、なにも話す内容が面白いということではなく、むしろ「相手に話をさせることがうまい人」のことを言うのではないかと思います。つまり「聴き上手」という人のほうが、営業の成果に結びつきやすいということです。これは、意図的・戦略的なもので、ある程度はテクニックで身につけることができるものです。

「自分の話すことに耳を傾けてくれる」「興味を持って熱心にうなずいてくれる」となると、誰しも話しやすくなり、その分共有する情報量も増え、心理的な距離が近づきます。自己肯定感の高まりとともに、無意識に相手に信頼感を抱くようになります。

お互いにうなずき合い相手にペースを合わせるペーシング、相手の言ったことを繰り返すバックトラッキングという行為などにより、共感しリラックスして親密な関係性へ近づくと、本題に入った時にスムーズに話が運ぶということがあります。

目安として、2:8ぐらいの割合で、相手に多く話す機会を与えるのが良いと言われています。さらに、そうした何気ない会話の中から、商談のヒントが見つかることもあります。

Q:どのようにすれば、雑談スキルを向上させることができますか?不快に思われない雑談のコツは? -------- 相手の話を引き出すためには、まず自己開示をして質問を促すという方法があります。扱うテーマは当たり障りのないことから、仕事・趣味・性格・友人・家族など、少しずつ相手のアイデンティティーに関わることへ近づくのが理想的です。

たとえば、「週末、私はこうして過ごしましたが、あなたは?」「私は小学生の娘がいるのですが、お子さんは?」など。社内でしばしば顔を合わせる程度の人同士でも、当初は雑談の質より量を増やすことの方に意味があるかもしれません。ウイズコロナでも、「おはよう」や「最近調子はどう?」などの声を掛け合う機会は、なるべく多く持ちたいものです。

一方、営業成果を上げる目的で雑談スキルを向上させようと、前述のようなあらゆるテクニックを駆使したとしても、その前提に「相手に対して本当に興味・関心を持つ」という姿勢がなければ、場合によっては逆効果になってしまうことがあります。

人は、話をしながらも無意識に相手の「聴く姿勢」を観察しているものです。口先で話題を振っただけでは、なかなか口を開く気持ちにはなれないというのが自然でしょう。「相手がどのような人生を歩んできたのか」といったことに心から興味を持つ、もっと言えば愛情を持つことが大前提なのですが、これはそう簡単なことではありません。

以前、良い営業センスを持ちながらも、なぜか雑談スキルが上がらず、結果に結びつかなかったという営業マンが好調に転じた後に語ったのが、この「〝相手に興味を持つ〟ということができずに、商談が思うように運ばなかった」というものでした。これはむしろ精神論になってしまいますが、営業スキルや雑談スキルのテクニックを磨く前に、こうした自身の気持ちの傾向に気付くことが、欠くことのできない一つのステップのような気がします。

(松本 瑞夫/コンサルタント、講師)

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