緊急避妊薬『ピル』が薬局販売が可能に!?押さえておきたい種類や副作用について医師が解説

JIJICO / 2020年10月19日 14時30分

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緊急避妊薬『ピル』が薬局販売が可能に!?押さえておきたい種類や副作用について医師が解説

性交直後の服用で、望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」。これまで、入手には医師の処方せんが必要でしたが、処方せんなしで購入可能とする方針を政府が固めたと言います。報道によると、10月8日、内閣府が今後5年間の「男女共同参画基本計画」案で示したもので、正式な計画を年内にまとめる予定だそう。専門研修を受けた薬剤師が説明し、対面で服用する条件などが盛り込まれています。

緊急避妊薬は、「モーニングアフターピル」と呼ばれ、すでに諸外国では薬局での販売が認められており、日本の遅れを指摘する声が出ていました。同じく、避妊を目的に、毎日服用する「低用量ピル」も国際的にみると普及が進んでいません。

男女ともに改めて知っておきたい、ピルの正しい知識とは。産婦人科医の桝田充彦さんに聞きました。

緊急避妊薬は、性交渉後72時間以内に服用すると約85%~90%の確率で避妊できる。毎日服用する「低用量ピル」は避妊だけでなく、月経不順や月経痛などの治療としても有効

Q:「緊急避妊薬」とは、どのようなものですか? -------- 「モーニングアフターピル」と呼ばれる緊急避妊薬は、プロゲステロン(黄体ホルモン)が主成分の薬剤です。国内の正規品は2種で、先発品の「ノルレボ」と、後発品の「レボノルゲストレル」があります。成分はほぼ同じで、どちらも保険適用外の自費となるため、価格の差もほとんどありません。当院で処方している「ノルレボ」は1錠8000円程度です。

避妊をしなかった性交渉の後、72時間以内に、1回1錠を服用します。その時点で、排卵後であれば、受精卵が子宮内膜に着床するのを妨げます。一方、排卵前であれば、排卵そのものを抑えます。効果は、服用が早ければ早いほど高くなります。

85%~90%の確率で避妊できますが、10人に1人くらいの割合で、服用しても妊娠するため、毎日服用する「低用量ピル」と比べると、避妊の効果は低いと言えます。服用後は生理周期が不規則になるため、数日で月経が起こります。月経がくれば、避妊が成功したサインです。

3週間たっても月経が来ない場合は、妊娠の可能性があるため婦人科を受診してください。

緊急避妊薬は、副作用の心配があまりないことも、大きな特徴です。「低用量ピル」の重大な副作用である、血管の中で血液の塊ができて詰まってしまう「血栓症」のリスクはありません。また、服用後にムカつきや吐き気が起こることがなく、飲みやすい薬です。

当院でも、10代から40代まで、幅広い年齢層の患者に対して、望まない妊娠を回避するための手段として処方しています。

Q:同じく避妊を目的とした「低用量ピル」とはどのような薬ですか?避妊以外にも効果があるのですか? -------- ここで言う「ピル」とは、毎日服用するピルのことで、女性ホルモンと言われる、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が合成されたものです。女性ホルモンを、体の外から取り入れることで、脳が排卵後のホルモンの状態と認識し、排卵を抑制します。卵胞ホルモンの含有量の違いにより、下記のように分類されます。

【中用量ピル】 国内の正規品は「プラノバール」があります。主に、月経周期をずらす「月経移動」に用いられます。ムカつきや吐き気といった副作用が強く出やすく、ケースバイケースですが、長期的な治療に使われることはあまりありません。

【低用量ピル】 多数の種類が出ており、毎日の服用により、高い避妊効果が得られます。

【超低用量ピル】 国内の正規品には「ヤーズ」「ルナベル」があります。用量が少ない分、副作用が出にくく、近年、低用量ピルに代わって主流となっています。

避妊効果は、ピルを服用中に妊娠する確率が年間で約0.2%と、コンドームなどほかの避妊法と比べて確実に避妊できる方法と言えます。「将来、服用をやめたときも、妊娠しにくくなるのでは」と心配の声がありますが、ある論文で、ピルを長期服用していた女性のうち、服用をやめた半年以内に妊娠した割合は約80%、というデータがあります。つまり、ピルによる月経のコントロールは、「妊娠しやすい体に整える」とも言えるのです。

また、次のような症状に対する治療にも用いられています。

【月経不順の改善】 月経が決まった日に確実に起こり、周期が規則正しくなります。

【月経前症候群(PMS)症状の緩和】 女性ホルモンのバランスを一定に保つことができるため、「生理前にイライラする」などの症状が緩和されます。

【月経痛や経血量の軽減】 子宮内膜の増殖を抑え、厚くならないため、月経痛の原因となるプロスタグランジンの量が減少し、経血量が劇的に減少します。

特に月経痛は、子宮内膜症など、ほかの病気が隠れている場合もあります。ピルは、子宮内膜の増殖を抑える作用があるため、その治療にもつながるのです。

Q:ピルを服用すると、副作用はあるのでしょうか? -------- 低用量ピルに比べると、卵胞ホルモンの用量が多い中用量ピルの方が、副作用が強く出やすくなります。中用量ピルの軽度な副作用としては、ムカつきや吐き気などがあります。

重大な副作用として、「血栓症」のリスクがあります。血管の中で血液の塊である「血栓」ができやすくなり、肺などの血管が詰まってしまう病気です。ただ、発症の確率は約10万人に2人~3人で、妊娠中や産後のリスクと比べるとはるかに低い数値です。

Q:国連が発表する「避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)」によると、ピルの内服率は、日本2.9%に対して、イギリス26.1%、フランス33.1%と、日本が遅れているというデータがあります。普及が進まない理由は? -------- ピルの入手には処方せんが必要なため、婦人科の受診がハードルとなっています。特に若い人は、「内診が嫌」と、受診をためらいます。婦人科を受診したからといって、必ずしも内診があるとは限りませんが、若い人が行きづらい要因の一つとなっています。

ピル服用の目的には、「避妊」と「治療」の2つがあります。避妊目的の場合は、保険適用外のため、1シートで約2500円かかります。一方、前述の月経困難症や月経前症候群などの治療に用いられる場合は、保険適用となるため、先発品で1シート2200円、後発品は1100円程度になります。毎日服用する必要があるため、金銭的な負担となる可能性はあります。

当院では、月経痛などの治療目的で、中学生からピルを処方します。ところが、患者本人がピルの服用に納得していても、母親が反対するケースが少なくありません。 親世代は、「ピル=避妊、中学生から避妊する必要はない」「副作用が怖い」「将来、妊娠しにくくなるのではないか」など、ピルに対してあまり良いイメージを抱いていない人が多いことも、普及が進まない原因です。

また、欧米諸国との国民性の違いも大きいでしょう。欧米には、もともと、セックスや性をオープンにできる文化があります。一方、日本では、「性のことは隠しておこう」という考えが古くから根付いており、学校などで性教育を受ける機会が不足しています。その点でも、ピルに対する理解が進みにくいと言えます。

Q:緊急避妊薬が薬局で販売されることは、ピルが広く知られるきっかけになると考えられますか?今後、期待されることや懸念されることは? -------- 緊急避妊薬が、処方せんなしで、自由に買えるようになること自体は好ましいことです。低用量ピルも含めて、多くの人がピルについて知るきっかけになるでしょう。ただ、「薬局で購入できるから、婦人科を受診しなくていい」とは思わないでほしいですね。

婦人科の受診には、単にピルを処方してもらうだけではなく、病気を早期に発見するという大切な目的があります。「子宮や卵巣に異常がないか」「性感染症の疑いはないか」など、ほかの異常も含めて診察をするため、定期的に診察を受けなければ病気の発見が遅れます。

本来は、婦人科を受診した上でピルを処方してもらうことが理想です。薬局で自由に購入する際も、薬剤師が「あわせて婦人科の受診を」と、声をかけるような取り組みを行ってほしいですね。

ピルは、女性が主体的に避妊でき、自分自身を守ることができるという点で、大きな意義があります。万が一、パートナーの男性が避妊に協力してくれなかったとしても、望まない妊娠を自ら回避することはできます。

ただ、パートナーの男性も、女性が妊娠を望まない場合は、避妊に協力することは当然のことで、「どちらか一方が避妊を考えればいい」というものではありません。その前提を忘れずに、女性はピルと上手に付き合っていけるといいですね。

(桝田 充彦/産婦人科医)

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