転職希望者が前月比105.4%増加 リモートワークや在宅勤務などウィズコロナ時代の転職とは
JIJICO / 2020年10月20日 14時30分
転職希望者が前月比105.4%増加 リモートワークや在宅勤務などウィズコロナ時代の転職とは
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、転職市場も大きく変わっています。近年続いていた売り手市場は買い手市場に転じ、中途採用を中止・延期する企業も目立ってきました。一方で、コロナ禍による自粛期間や在宅勤務などをきっかけに、改めて自分の働き方を見直し、転職への意欲を高めている人も少なくありません。DODAが発表した2020年9月の転職求人倍率レポートによると、転職希望者数は前月比105.4%、前年同月比111.4%と伸びています。<参考> DODA転職求人倍率レポート(2020年9月)
これから転職を考える上で、知っておきたい転職市場の「今」や、ウィズコロナ時代に求められる人材について、また、転職を成功させるコツなどを、転職エージェントとして、数多くの求職者を支援している森本千賀子さんに聞きました。
多くの企業が「即戦力」の採用には積極的。これからのキャリア形成は、ライフステージによって働き方を柔軟に選ぶことがポイント。「変化に対応する力」が問われる
Q: コロナ禍を機に、転職への意欲を高める人は増えているのでしょうか。その理由は何だと考えられますか? -------- ステイホームによるリモートワークや在宅勤務などを経て、「考える時間」が増えたという人は多いのではないのでしょうか。通勤や移動時間、夜の会食などがなくなり、仕事を効率的に進められるようになると、自ずと創出された時間によって「今の仕事でいいのか」「自分が本当にやりたいことは何か」など、自分のキャリアを振り返る時間ができたと思います。コロナ禍をきっかけに、転職を考える理由として、次のような声が多くありました。
・コロナ禍により、会社の業績が悪化し、休業要請をされたので将来が不安になった。 ・コロナ禍でも出社が前提。在宅勤務に移行できる会社もあるのに、社員の身の安全をどう考えているのか、対応に疑問を感じた。 ・副業を認めてくれるような会社で、もっと柔軟な働き方をしたい。 ・コロナ禍の影響を商機ととらえ業績を伸ばしている会社で、もっとチャレンジしたい。
ウィズコロナの中、劇的に社会が変わりました。変化に対応しながら、自分らしく挑戦できる環境を求め、多様な選択肢を持ちたいという人が増えていると感じます。
Q:一方で、コロナ禍による経済悪化が予測されています。転職市場の状況は? -------- 2008年に起きたリーマンショックと比べると、転職市場はそこまで悪化しているという印象ではありません。
厚生労働省が、8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.04倍で、8カ月連続で低下したと発表しましたが、リーマンショックでは2009年7月に0.42倍と、さらに下回っていました。リーマンショックは、ある日突然起こったため、企業は備えもなく、対応もできず、いきなり苦境に追い込まれました。存続自体が危ぶまれた企業も多く、「早期退職を募る」「求人をいったん止める」というネガティブな手段しかとれなかったのです。
一方、コロナショックは、健全な経済状況下で起こりました。リーマンショックの経験から、内部留保などの備えをきちんと行っていた企業も少なくありません。また、時代が変わり、次世代通信規格「5G」の登場など、業務のオンライン化のインフラが整っていたことも大きな違いです。「働き方改革」の議論を進めていた中でもあったので、企業も働く側も、リモートワークや在宅勤務に抵抗がなくなっており、事業を継続できている企業は多くあります。
確かに、それまでの売り手市場のように、ポテンシャルを重視した「第二新卒」の中途採用については、あえて今行わなくてもいいと考え、求人を控えている企業は増えています。ただ、経験やスキルを持った「即戦力」となるキャリア採用については、確実にニーズがあります。
Q:コロナ禍でも、積極的に求人を行っている企業はありますか? -------- 現在、採用活動に積極的な企業は、大きく分けて次のような特徴があります。
【①新しい生活様式に対応し、業績を伸ばしている企業】 外出自粛によりニーズが高まった電子商取引(EC)、オンライン診療のほか、リモートワークにより広がったZoomなどのオンラインミーティングシステム、休校により利用が増えたオンライン塾やオンラインゲームなどは、拡大路線の業種です。
例えば、外食サービス全体では落ち込んでいますが、フードデリバリーは伸びているなど、コロナ禍の影響をチャンスに変えている企業はあります。
【②業務効率化、人員削減に貢献するサービス】 人工知能(AI)やロボットなどの台頭により業務を効率化し、人員を削減する動きは、コロナ以前からあります。
データやデジタル技術により、ビジネスモデルを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の取り組み、ネットワークを活用したクラウドサービス、「脱ハンコ」を進めるオンライン契約システムなど、新たなビジネスモデルで勝負しようと考えている企業では、引き続き人材の引き合いは強いです。
【③今が採用のチャンスと考える企業】 中長期の経営戦略・資本政策・立案などに着手できている体力のある会社ほど、ほかの企業が求人を控えている今の時期こそ「優秀な人材を採用しやすい」と考えています。
【④リーマンショックの反省から「採用はストップしない」】 2008年のリーマンショックの際に採用活動を控えた結果、いざ経済が回復したときに「人材が確保できない」という過去の教訓から、「採用を止めてはいけない」と採用を継続している企業も多くあります。
また、通勤を前提としないリモートワークの求人も増えています。地方に住み続けたい人や、ワーキングマザーなど、希望の生活スタイルを維持しながら、働き方を選べるようになっている面もあります。
Q:これからの時代に求められる人材とは? -------- 時代が変化するスピードはとても速くなっています。それまで当たり前に存在していた業務でも、デジタル化やAIの技術が進むと、すぐにとって代わられます。そのため、「この資格さえ取得すればいい」「この職種なら将来も安心」といった、「正解」がない時代になっています。
変化に直面する中で、「仕事がAIに奪われる」などと不安になるのではなく、「自分は別のことでも力を発揮できる」と、すぐに切り替えられる力が必要です。すなわち、「変化への対応力」が求められています。
変化への対応力は、これまでの経験で培われるものです。社内であれば、「部署を異動した」「海外赴任をした」「副業に挑戦した」経験などは、アピールできるポイントとなります。単一事業でなかなか異動が難しいなど、社内でそれほど「変化」を経験できる機会がない人もいるかもしれません。その場合は、社外で副業、いろいろなコミュニティーやボランティアに参加するなどの、多様な経験ができる機会を増やしておくといいですね。
また、採用活動でオンライン面接への移行が加速しています。面接日時の調整がスムーズになり、選考過程のスピードアップは目を見張るものがあります。一人の求職者に、何週間もかけて複数回の面接を行っていた企業が、1週間のうちに2~3回面接を行うようになっています。
対面できないことや、オンラインにより面接官が一堂に集まる必要がなくなったため、より多くの面接官が、求職者との面談を経て多面的に分析する傾向も強まっている印象です。ツールも含め、オンライン面接の対策ができているかどうかは、最低限のスキルとなるでしょう。
Q:ウィズコロナ時代の転職を成功させるために、意識しておくべきことはありますか? -------- コロナ禍で実感した人も多かったと思いますが、人生でこの先、何が起こるのかはわからないものです。後悔することがないように、まずは自分自身にきちんと向き合い、「自分は何がやりたいか」をもう一度考えてみてください。「やりたいこと」「叶えたいこと」は、言葉で伝えられるようにしておくことがポイントです。その上で、自分の夢や希望を実現できる場所を探します。
働き方は多様化し、コロナ禍以前の社会に100%戻る、ということはないでしょう。通勤も含め、リモートワークや在宅勤務などを取り入れたハイブリッド型が進むと考えられます。これからは、働き方を人生のライフイベントやライフステージによっても、柔軟に選択できるようなキャリア形成が大切になります。その中では、多様なワークスタイルを認める、柔軟性のある会社かどうかも見極める必要があるかもしれません。
また、「自分がどうありたいか」という視点も重要です。「平日は地方で子どもとゆったり過ごす」など、生活スタイルや生き方そのものを自由に選択できるようになりつつあります。特に、これまで家庭や子育てとの両立で、時短勤務しか選べなかったという女性などでは、リモートワークでフルタイム勤務を叶えるなど、制約をもたずとも可能性が広がっていく時代になると思います。
コロナ禍の影響は長引き、収束の時期は予測できません。転職においてタイミングは重要ですが、リスクがあるからといって何もしないのではなく、「明日できること」から始めましょう。その一つに、副業があります。副業というと「特別なスキルが必要なのでは」などと、ハードルを感じる人が少なくありません。例えば、NPO法人での運営スタッフなど、団体側から歓迎され、すぐに始められる業務もあります。
クラウドサービスが台頭し、ルーティンワークや非生産的な業務は、ITやAIにとって代わられることは間違いありません。一人一人の価値がこれまで以上に問われる時代とも言えます。自分の視野を広げ、まずは目の前のことに最善を尽くしましょう。
(森本 千賀子/転職エージェント)
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