膝に力が入らなくなるのは靭帯が切れている可能性も?
JIJICO / 2021年5月31日 12時30分
膝に力が入らなくなるのは靭帯が切れている可能性も?
靭帯は骨と骨を繋ぐ強固な組織 靭帯が切れると関節が不安定になる
靭帯は骨と骨を繋ぐ組織、腱は骨と筋肉を繋ぐ組織で、ともに結合組織と呼ばれる伸び縮みしない強固な細胞です。ヒトは、200個強の骨と約260の関節で構成され、600以上の筋肉が関節を動かし、靭帯が関節を安定させています。骨、筋肉、靭帯で構成される関節は、全て調和が取れていれば、スムースな動きになりますが、関節に違和感を覚える時は、いずれかに何らかの異常がある時です。特に、関節を動かす時よりも、じっとしている時に安定しない、痛みを感じるようなら、靭帯を痛めている事が考えられます。膝や足の関節にある靭帯を損傷すると、歩く度に痛みや不安定さを覚える様になります。無理して歩いていると、靭帯が切れて、捻挫や挫傷を起こす恐れがあります。1週間以上痛みが続く状態の場合、そのうち治るだろうと放置せず、整形外科医や捻挫や挫傷が専門分野の柔道整復師がいる医療機関の受診を推奨します。
運動不足の人は筋力低下で振り返っただけで膝の靭帯が切れることも
テレワークが続き、通勤をしなくなった事による運動不足を感じている人は、多いと思われます。休日に、筋力が低下している事を考慮しないでスポーツ等をして、ケガをする確率が、高くなっています。(「肉離れって何?筋肉は切れたら元に戻るの」(https://mbp-japan.com/jijico/articles/32252/)「アキレス腱が切れたらどうしたらいいの?腱は元に戻るのか」(https://mbp-japan.com/jijico/articles/32255/) 参照)急激な運動は、関節にかかる力が大きいため、靭帯断裂を生じます。太ももの筋力が低下している人は、人に呼ばれて振り返っただけで膝の靭帯を断裂する場合があります。デスクワークが主な人は、毎日10回程度のスクワットを行い、大腿部の筋力を維持する努力が必要です。
膝には主な靭帯が7つある どこが切れたか見分ける方法は?
体の中で強靭な関節は、顎、腰や膝と言われます。膝は、大腿(だいたい)骨・脛(けい)骨・腓(ひ)骨・膝蓋(しつがい)骨という4つの骨で構成された関節です。骨の数が多い分、靭帯の数も他の関節より多くあります。主要な靭帯は、前後十字靭帯、内外側副靭帯、膝横靭帯、膝蓋靭帯、弓状膝窩靭帯の7つです。膝の靭帯を断裂すると、歩行が困難になります。靭帯損傷の程度によりますが、5分から10分程度で膝が腫れ始め、足を着けなくなります。にもかかわらず、受傷の状態によっては、時間が経つにつれて痛みが軽減して歩けるようになります。膝を支える靭帯や動かす筋肉が多くあるため、切れた靭帯の働きを代用する事が出来るからです。そのため、大したケガではないと思い、通院をためらう人も少なくありません。膝関節を支えるために必要な十字靭帯や側副靭帯を損傷した場合は、素人でも疑いの目を持つ事が出来ます。 ●前十字靭帯を損傷すると、階段を下る時、膝に不安定感を覚え、痛みが出る傾向にあります。 ●後十字靭帯を損傷すると、階段を上る時、膝に不安定感を覚え、痛みが出る傾向にあります。 ●内側側副靭帯を損傷すると、膝を45度に曲げて内側に太ももを倒したとき、膝の内側(親指側)に痛みが出やすくなります。 ●外側側副靭帯を損傷すると、膝を45度に曲げて外側に太ももを倒したとき、膝の外側(小指側)に痛みが出やすくなります。 以上の動作をして、強い痛みが出るようなら、部分断裂もしくは完全断裂を疑って良いと思います。4本全部完全断裂すれば、全く動けなくなりますの、すぐ判断付きますが、1か所の部分断裂であれば歩行が可能です。痛みがある時は、どこかの靭帯を損傷している事が考えられますので、無理して歩かず、専門医の受診が必要です。
靭帯を断裂した際 靭帯再建術(観血療法)と保存療法(非観血療法)のどちらを選択する?
靭帯を完全断裂した際、靭帯再建術(観血療法)か保存療法(非観血療法)を行うと、同程度の期間で癒合が認められます。日常生活を問題なく送れるようになるためには、その後約2~4週間必要です。靭帯再建術の術後と保存療法を比べると、双方日常生活に支障はありませんが、保存療法を選択した場合は、 1.関節拘縮が起きやすい 2.運動性がやや落ちる ように感じています。そのため、完全断裂の際は、「観血療法による治療」か「非観血療法による治療」を選択するか悩むところでしょう。スポーツを楽しみたい人や若い人は、前者を選択する例が多いように思います。手術の痕(あと)が残る事を回避したい方は、後者がおすすめです。長期間固定していたために生じる関節拘縮(こうしゅく)を防ぐため、鍼灸治療を併用すれば、大きな運動障害を回避することが可能です。膝の靭帯を損傷した場合、癒合に至る期間はほぼ同じ5週間前後ですが、社会復帰という点に限れば柔道整復治療と鍼灸治療を用いた治療をした方がやや早いと言えます。
靭帯の完全断裂は整形外科 部分断裂のときは近くの整骨院へ
靭帯が完全に断裂し断端が離れている場合、断裂部が挫滅している場合や損傷部位が広範囲に亘っている場合等は、靭帯再建術等の「観血療法による外科手術」が必要です。関節を全く動かす事が出来ない時は、整形外科医にご相談ください。靭帯の断裂は、関節運動を制限し、損傷した靭帯の関節を適切な角度で固定する事により、修復が可能です。柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷(筋損傷・腱損傷・靭帯損傷)が専門の医療資格者です。靭帯を損傷したかもしれないと思ったら、6時間以内に、お近くの整骨院・接骨院を受診していただきたく思います。軽度の靭帯損傷は、約2~3週間程度で修復され痛みが消失します。中等度の場合、再生に約3~4週間を要します。重度の場合は、損傷部位により癒合期間が異なります。約5週から最大で12週間程度必要です。関節は、臨床経験上24日目頃から関節に拘縮が起き始めます。靭帯の修復時まで固定を継続すると、関節が硬くなり、日常生活の復帰が遅くなります。柔道整復治療では、関節拘縮を最小限に抑えることが可能ですので、合わせてご相談ください。また、関節拘縮が生じた際は、鍼灸治療をすれば拘縮の解消が可能です。膝関節の場合は、約5週~6週固定すると、強い拘縮を生じますので、お近くの鍼灸師がいる鍼灸院や医療施設にご相談ください。柔道整復治療と鍼灸治療を併用している医療機関の場合、連携が可能かご確認いただきたく思います。
(清野 充典/鍼灸師)
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