実は誤訳や省略がいっぱいだった村岡花子訳の「アン」

WEB女性自身 / 2014年8月3日 16時0分

 25%近い視聴率を連発しているNHK朝ドラ『花子とアン』。名訳といわれる村岡花子の『赤毛のアン』だが、『快読『赤毛のアン』』(彩流社刊)の著者で川村学園女子大学の菱田信彦教授は、誤訳や疑問点、不正確な点を指摘する。

 第1章、マリラがリンド夫人に孤児を引き取る計画を話している場面。村岡訳はこうだ。

《最初マシュウはくろんぼの子はどうかって言いだしたんだけれど、それにはわたしはきっぱり『いやだ』と言ったんですよ。何もそれがわるいというんじゃない。けれどロンドン育ちのくろんぼはわたしゃごめんだ》

「ヤバい訳ですね。海外事情があまり伝わってこない時代ですから、彼女は“street Arab”がホームレスの子供たちを表す言葉だと知らなかったのだと思います。アラブを文字どおりアラブ人と受け取り、非白人を差す表現だと考えて、こう訳したのでしょう」(菱田氏)

 また、原文では文庫本で半ページ以上に相当する文章を、70字程度とごく短く省略してしまっている。このような箇所はたくさんあるという。村岡花子が訳した『赤毛のアン』は、モンゴメリの原書とは、少し違ったものだった。

「村岡は、英文を正確に訳すことにあまりこだわっていません。自分が感じた作品世界のイメージを、当時の読者にはっきり伝えることが、彼女の目的でした。読者に伝われば、原文をどう訳すかは、極端に言えばどうでもよかった。原作の抒情的な表現やユーモラスな物言いを巧みに生かした文体です。『赤毛のアン』を読んでいて、私の読解はいまだに村岡には及ばない、と思います」(菱田氏)

 現在の新潮文庫版では、これらの点は訂正されている。完成させたのは、村岡花子の孫で、翻訳家の村岡美枝さんだ。そして、美枝さんの妹で文筆家の恵理さんが書いた『アンのゆりかご』(マガジンハウス)が、『花子とアン』の原案本となっている。

 村岡花子訳は、現在いうような「完全な訳」ではなかった。だからこそ長く読み継がれる名訳になったのだろう。

(週刊FLASH8月12日号)

女性自身

トピックスRSS

ランキング