卵は冬場は57日間ナマで食べられる。賞味期限を守って損している現実

女子SPA! / 2019年6月8日 15時45分

 あなたのお家は、食品をどのぐらい捨てていますか? 賞味期限を過ぎちゃった、野菜がシナシナになっちゃった、買ったけど食べきれない…。

 実は日本の食品ロス(まだ食べられるのに捨てられた食品)はなんと年間643万トンで、そのうち291万トンが家庭から出ています(※環境省、平成28年度推計値)。これは社会問題になっており、5月24日には、食品ロス削減法が参院で可決され成立しました。

 そして食品を捨てる原因の一つ、「賞味期限」を、私たちは大誤解しているというのです。『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者で、食品ロス問題に長年取り組んでいる井出留美さんに取材しました。

◆賞味期限を守りすぎて、食品を捨てている

――前回の記事では、4人世帯で年間6万円分も“まだ食べられる食品”を捨てている計算になるということでした。その原因の一つに「賞味期限」があると。ご著書に書かれていた「冬場は、卵は57日間、生で食べられる」というのは衝撃でした。

井出:卵は「夏場に生でたべる」ことを前提に、産卵後1週間以内にパックし、パックしてから2週間後の日付が賞味期限になっているんですね。なので、気温10度以下の冬でしたら、産卵後57日間は生で食べられるし(※)、賞味期限が切れても、加熱すれば十分食べられますよ。

※日本卵業協会HP参照

――火を通して食べるなら、2か月は余裕だと。

井出:ちなみに、家庭の冷蔵庫で保存する場合は、ドア内側の卵ケースではなく、パックのまま冷蔵庫の奥へ入れてください。ドア内側だと、ドアの開閉のたびに揺れますし、温度変化が大きいです。

◆賞味期限と消費期限の違い、知ってますか?

――本でも指摘されているように「賞味期限はあくまでアバウトな『目安』」なんですね。さらに、「消費期限」と「賞味期限」は違うんですよね。

井出:日持ちのしないお弁当やサンドウィッチ、お惣菜に使われるのが「消費期限」。これは「食べて安全な」期限なので、守って食べ切ったほうがいい。

 一方、賞味期限は「美味しく食べられる」期限だから、期限をすぎても食べられるんです。

 ただ、消費期限も賞味期限も、自分の鼻や舌で判断することが大事だと思います。例えば、クリスマスケーキをワンホール、「消費期限が今日だから」と、無理して食べきる人っていないですよね。そこは各自の判断です。

◆書かれた賞味期限より2割ぐらい長い

――賞味期限はどのぐらい過ぎても食べられるんでしょうか?

井出:そもそも、「賞味期限」って短く設定されているんです。賞味期限は自社で決める場合も、業界が定める場合もありますが、まずは保存条件と菌の繁殖を調べる「微生物試験」、粘りや濁りといった品質の変化を調べる「理化学実験」、実際に検査員が飲んだり食べたりして五感で評価する「官能検査」をもとに、美味しく食べられる日数が計算されます。

 ただ、この日付がそのまま賞味期限になるわけじゃないんです。各検査から算出された日付に1未満の「安全係数」と呼ばれる数をかけて賞味期限が設定されているんです。

――1未満ということは、いろんな試験で出された日数より短くなるんですね。

井出:メーカーは出荷された後の保存状態を把握することができませんから、品質が変わってしまうなど、さまざまなリスクを想定して短めにしているんです。消費者庁が推奨している安全係数は0.8以上です。

――0.8ということは、「美味しく食べられる期間」が10か月なら、賞味期限は8か月と書いてあるわけですね。食べる側は、「書かれた賞味期限より2割ぐらい長い」と考えてもいい。

井出:そうです。ただ、会社や商品によっていろいろで、私の取材だと冷凍食品で0.7、1年以上もつ食品でも0.66に設定していたりしています。0.3という安全係数を使っていた会社もありました。

――0.3!? 100日間おいしく食べられるのに、「賞味期限30日」と書くわけですね?

井出:だから、賞味期限を厳密に守るのって、言葉は悪いんですが、ある意味、愚かなんです。ただ、賞味期限がどうやって設定されているかというこうした背景がわかると、自分でも判断しやすくなりますよね。

 もちろん、保存状態がちゃんとしていることが前提ですし、小さいお子さんや高齢の方、また、体調が悪くて免疫力が落ちている時などは注意が必要です。

 あと、缶詰の賞味期限は3年間ですが、基本的には半永久的にもつんですよ。缶の中に材料を入れる真空調理なので、菌が混入しませんから。

 缶詰の賞味期限3年というのは、缶そのものの品質保持期限は3年間なので、3年で区切っているだけなんです。

◆加工食品の賞味期限は、日付がないほうが良心的

――賞味期限についても知らないことばかりです。

井出:もう一つ。賞味期限が3か月以上あるものは、日付まで書かずに「2019年5月」のように月まででOKなんです。ポテトチップスやチョコ、缶詰・乾麺などの加工食品は、ほとんど3か月以上の賞味期限があるんですが、年月日まで表示されています。これが食品ロスのもとなんです。

 今の消費者庁の決まりだと、半端な日付は切り捨てられ、食品としては流通できなくなります。つまり、「賞味期限2019年5月」なら5月いっぱいは販売できるのに、表示が「2019年5月10日」だと10日は切り捨てられて販売できるのは4月いっぱい。5月に入ると「ゴミ」になってしまうんです。

――日付まで書いてあるほうが、誠実で正直な会社かと思っていました。

井出:日付まで書くのは、単にメーカー側の商品管理やトレーサビリティ(追跡可能性)のため。でも、これがロスを増やしている。最近、食品ロスを減らすために日付表示をやめるメーカーも増えていますけどね。

― 食べ物を捨てすぎる私たち vol.2 ―

【井出留美さんプロフィール】

博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ等に勤務。3.11食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託された。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書)、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

<文/鈴木靖子>

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