なぜ今『おしん』がブーム?若者にウケた“いい意味での裏切り”3つ

女子SPA! / 2019年6月25日 8時46分

連続テレビ小説 おしん 総集編 [DVD]

 NHKBSプレミアムで月~土の7:15から放映されている『おしん』。言わずと知れたNHK朝の連続テレビ小説史上最大のヒット作であり、世界50か国以上でも人気を博した名作中の名作です。

 朝ドラ先行放送の“前座”で放映されている過去の朝ドラの再放送ではありますが、密かに新作の『なつぞら』以上にハマっている40代以下の視聴者が多いのだそうです。好評の声に応えるべく、総集編の放送だけでなく、深夜から朝にかけての一挙再放送が毎週放映されるなど、にわかに『おしん』ブームが再燃している模様です。

『おしん』が放映され人気を博したのは今から36年前の1983年。しかも、描かれているのは明治の時代から昭和にかけてです。この令和の時代、なぜ『おしん』がウケたのでしょうか。それは、視聴者の予想をくつがえす、いくつかの“裏切り”があったからだと筆者は思います。

◆1つ目の裏切り――「昔の作品はダサい!」面白半分で視聴してみたら…

 ちょうど1年前に放映されていた朝ドラ『半分、青い』。バブルの時代に数々のヒット作をとばした北川悦吏子氏が脚本を担当したこの作品は、多くの若者たちの心を掴んだ反面、どこか時代錯誤の展開や台詞の印象を視聴者に与えました。

 Twitterでは『#半分白目』や『#半分青い反省会』などのツッコミタグやアンチタグが盛り上がり、SNSで内容につっこみながらみんなでワイワイ楽しむという朝ドラの新しい視聴方法が盛り上がりをみせたのです。

「ツッコミ所の多いドラマをいちゃもんつけながら語り合う」――『おしん』も当初、若者の間ではそんな期待感を背負って視聴をされていたということが『#おしん』ではなく、チャレンジ枠を意味する『#おしんチャレンジ』というタグが盛況なことから推測できます。

 初週こそ、乙羽信子さんの演じる現代パートのおしんが起こす家族のゴタゴタやおしんの失踪騒動が中心でした。まさに、私たちの知る脚本・橋田寿賀子先生らしい内容で、ツッコミどころも多く、『#おしんチャレンジ』のタグも本来の意味で利用されていました。

 しかし、現代のおしんが自らの人生の回想を始め、本格的な少女編に入るとどうでしょう、それを忘れての物語にめりこんでしまう視聴者が多数出現したのです。

「朝が来るたびに泣かされてしまう」

「脚本の力、役者の力、全てのものに感動させられる」

「こんなすごいドラマが過去にあったなんて知らなかった」

 感想サイトやSNSには多くの絶賛の声が。時代を越えた物語の力に、皆、否応なしに引き込まれて行ってしまったのです。名作はどんなに時がたっても素晴らしさは色あせません。それだけ『おしん』は名作だったということでしょう。

◆2つ目の裏切り――「泉ピン子、橋田寿賀子ってうるさいオバさんでしょ?」

 ヒロインの母役・泉ピン子さんや脚本の橋田寿賀子さんは、『おしん』を語るにおいて欠かせない重要な人物です。

 泉さんは、近年のドラマでは「うるさいおばさん」や「いじわるな人」を演じることが多く、バラエティでの空気を読まない発言や下品なイメージもあり、好感度は高くはありませんでした。

 長くて直接的な台詞が印象的な橋田先生の脚本も、物語に流れる一昔前の空気感やわざとらしさも含め、今の視聴者が敬遠する要素の多い作風であると言えます。

 しかし『おしん』で、貧乏に耐えながらも献身的に娘を愛する母を演じた泉ピン子さんの力強くリアルな演技力や、橋田先生の圧倒的な筆力はそのイメージを覆すものでした。

 苦労をして女優となった泉ピン子さんの生き様が現れた当たり役であり、また橋田先生の長台詞も、その時の時代背景や状況を丁寧に説明している点でむしろ効果的でした。

 15分の朝ドラゆえにわざとらしさや波乱万丈さも違和感がなく、若い視聴者たちも素直な気持ちで見ることができたのではないでしょうか。

◆3つ目の裏切り――「ずっと貧乏やいじめに耐え忍ぶ女性の話なのでは?」

『おしん』は、貧しい農家の出身ながらも様々な逆境に耐えて、時代を生き抜き、スーパーの経営者として成功した女性の一代記です。

 多くの人は『おしん』というと「極寒の中、筏(いかだ)で川下り」「小さいのに子供を背負って下働き」など、「おしん=苦労、辛抱」のイメージがあります。「社会や家庭の中の多くの辛抱に耐え、文句ひとつ言わず生きる女の話」であると勘違いしている人もいることでしょう。

 しかし、実際は辛抱しながらもそれだけではなく、理不尽なことがあればまっすぐに逃げ出すし、社会の矛盾にも疑問を持ち、女性の開放や自立の必要性も描いています。

 時折挟まれる現代パートでの「すでに成功したおしん」の姿も、ただ苦労して終わるわけではないことを暗示し、安心して視聴することができるのです。

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『おしん』は光石研さんや中村雅俊さんなど、現在ベテラン俳優として活躍されている人の若い姿を見ることができます。また描かれている時期が放送中の大河ドラマ『いだてん』とほぼ同じ時代なので、時代背景を比較してみたりと、物語以外の楽しみ方もたくさんあります。

『おしん』の再放送は来年の3月まで続きます。リアルタイム組によると、ここからがもっと壮絶なのだそう。今なら、あらすじを読んだり総集編を見て途中からでも十分入っていけるかと思います。第二次おしんブームの波に乗るなら、まさに今ではないでしょうか。

<文/小政りょう>

【小政りょう】

映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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