ダイエット薬や脂肪吸引で死に至った女性も…解剖医は見た

女子SPA! / 2020年1月8日 8時45分

画像はイメージです(以下同)

「自分がどう死ぬか」と考えたことありますか?

 いま健康体なら、全然実感湧かない人も多いと思います。でも恐ろしいことに、人は100%、誰もが死ぬんですよね。だから自分にもいずれ死は訪れます。それはいつ、どんなふうなのか、たいていの人には分かりません。

 2019年12月に『女性の死に方』という本が出版されました。

 法医解剖医として3000体以上を解剖してきた西尾元先生が、自身の知見を元に「女性の死」をまとめたものです。

 法医解剖というと、最近は『科捜研の女』『アンナチュラル』など、ドラマでもよく取り上げられていますね。解剖医とは、遺体の死因を特定するお医者さんです。

◆ネットで買った海外ダイエット薬で薬物中毒死

 本では、いくつものパターンの死が紹介されています。遺体が運ばれてくるところから、解剖をして、警察からの情報を鑑みて死因を特定していく様子は、まるでサスペンスドラマを見ているようです。また、さまざまな死因を通して、人生そのものを考えさせられます。

 本書内のケース17「拒食症が疑われる女性が海外から購入していた「エフェドリン錠剤」では、ガリガリに痩せた女性の遺体が運ばれてくるところから話は始まります。平均よりも痩せている場合は結核が疑われるそうですが、彼女の肺には異常はありませんでした。

 ですが、血液検査でダイエット薬の成分が検出されるのです。以下、本書から引用します。

<結局、解剖した時点では、痩せすぎていること以外に異常は見つからなかった。

 警察の話によると、中川さんは父親と2人で暮らしていたという。ただ、数年前から部屋にひきこもり状態になっていて、親子が顔を合わすことはほとんどなかったそうだ。

 食事も別々にとっていたそうで、彼女が何をどれくらい食べていたのか、誰にもわからない。私は拒食症を疑ったが、拒食症は血液検査をしたところで異常が見つからないことも多く、診断は容易ではない。

 ただ、中川さんの場合、解剖後の血液検査であることがわかった。彼女の血液には、やせ薬の成分が含まれていたのである。その成分は致死濃度に達しており、彼女は薬物中毒で亡くなったと判断できたのだ。

 検出された薬物の名前は、「エフェドリン」。通常、この薬物は処方箋がないと手に入れることができないものだが、中川さんはインターネットを使って外国からエフェドリンを含む錠剤を購入していたらしい。

 実は、中川さんがひきこもっていた自室の壁には、自分の痩せた姿を撮影した写真が何枚も貼られていた。写真には、「ダイエット万歳!」と書かれていたという。>

◆脂肪吸引のあとに血栓ができて死亡

 このほかにも脂肪吸引手術を受け、血栓ができて亡くなった女性の話などが印象的です。

 脂肪には毛細血管が張り巡らされているため、それを除去すると、当然ですが小さな出血がたくさん起きます。その出血を止めようと、身体は血を固めようとして血栓ができやすくなるのだとか。脂肪吸引手術が要因となってできた血栓により死亡してしまう可能性があるとのこと。

 こうした死は女性特有のものだと言います。著者の西尾先生に話を伺ってみました。

「解剖する遺体のうち7割は男性で、女性は3割しかいません。その中で、女性には特有の亡くなりかたがあると感じ、女性に焦点を当ててまとめたのが本書です。

 男性は、ひとり暮らしで生活が荒れてきて、お酒を飲むようになり、ご飯をあまり食べなくなって過剰飲酒に起因する消化器系の病気になって亡くなってしまうというのが典型パターン。

 女性はそうした亡くなりかたをするかたは少ないんです。女性は友だちとご飯を食べに行ったり、カルチャーセンターに通ったりと、人とコミュニケーションをとる人が多いですよね。一緒に何かをするのが好きな傾向があり、孤独になりにくい性質が、死に方にも影響していると感じます。一方で美容整形やダイエットが関連した死因は、女性特有のものです」



◆家族と暮らしていても孤独な死がある

 美しくなりたいと行動したことが原因でなくなってしまうのは、とても切ないものがあります。本書ではさまざまな死因から、他人の人生を垣間見られる興味深さがあります。とくに、一人暮らしの人が突然死して死因を確かめる例が多いそうですが、孤独死と孤独は違う、と西尾先生は言います。

「孤独死がいろいろと問題になっていますが、一人でいる人が孤独とは限りません。社会とつながりを持っていれば、孤独ではなくなるでしょう」

 確かに本書では、家族と同居しているのにもかかわらず自宅で亡くなってしまった方や、家族がいたからこそ問題が起きて亡くなってしまった方も紹介されています。

「誰かと一緒にいることでストレスになり、それが病気の原因になることもあります。いい死に方、悪い死に方というふうに考えたことはありませんし、こういう死に方がいい、ということも特にありません」

 死を間近に診ている先生だからこその客観的な視点だと感じます。しかし人が亡くなったあとに死因を特定することは、残されたご家族のためなのでしょうか?

「そもそも私たち法医解剖医が解剖して死因を調べるのは、死体検案書を発行するためです。犯罪捜査目的の司法解剖を除けば、死因が明らかでない遺体について犯罪の見逃しはないか、あるいは結核など感染症に罹患していないかなどを確認します。死因を特定することには、そうした公益性があります」

◆誰でも、突然死ぬことはありえる

 私たちの誰もが、唐突な死を迎える可能性があります。死因がわからなければ、解剖に回る可能性がある、ということです。

「外出先などで亡くなった場合、警察が身元を探すのにとても苦労します。スマホは開けないし、持ち物に手がかりがない場合、誰に連絡したらいいのかを突き止めるのに大変な時間がかかるんです。こうした作業で行政の手を煩わせてしまうことになります」

 筆者個人的には死んだあとのことはどうでもいいと思っていますが、確かに、なるべく人に迷惑をかけないようにしておくのも必要かもしれません。私たちが常に手元に身元の証明になるものや、緊急時の連絡先を記したものを持っているだけで防げるはずです。本書を読んでいると、人生には何が起こるか分からないなとしみじみ思いました。悲観的になるのではなく、自分の死について考え備えておくことはとても重要なのかもしれません。

【西尾元氏 プロフィール】

1962年、大阪府生まれ。兵庫医科大学法医学講座主任教授、法医解剖医。香川医科大学(現香川大学)医学部卒業後、同大学院、大阪医科大学法医学教室を経て、2009年より現職。法医解剖医として20年で約3000体の遺体と向き合ってきた

<文/和久井香菜子>

【和久井香菜子】

ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「ブラインドライターズ」運営

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