上沼恵美子って、なにがそんなにスゴイの?「西の女帝」の光と影

女子SPA! / 2020年8月18日 8時46分

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上沼恵美子『時のしおり』テイチクエンタテインメント

「東の女帝・小池百合子。西の女帝・上沼恵美子」と称されるほど、関西で絶大な人気と権勢を誇る上沼恵美子さん(65)。

 関西ローカルの長寿番組『快傑えみちゃんねる』(関西テレビ)にて、上沼さんがYouTuber「カジサック」ことキングコングの梶原雄太さんを「収録現場でいびり倒した」という噂が広まったのは記憶に新しいです。

 その後、上沼さんは改編期を待たずして同番組を自ら降板。25年もの長きにわたる人気コンテンツは、あっけなく打ち切りとなりました。

 そもそも、なぜ上沼さんは関西にこれほど強い影響力があるのか。関西に住む人以外には、いまいちピンときません。いったい上沼さんのなにがそんなにすごいの? 西の女帝が冠番組を降板したら放送界はどのように変化するの? 複数の放送関係者に、取材してみました。

◆「カリスマ」へとステージをアップさせたきっかけは視聴率

 上沼恵美子さんは実姉と組んだ漫才コンビ「海原千里・万里(うなばらせんり・まり)」の千里として1971年に17歳でデビュー。十代のフレッシュな感性と十代とは思えぬ卓越の話術で「天才漫才少女現る!」とうたわれました。

 漫才歴わずか6年にして元関西テレビ常務取締役制作局長の男性と結婚し演芸活動を休止。タレント「上沼恵美子」として再起動します。「実家は大阪城」「このあいだ金閣寺を買いました」などの大ボラから、漫才師時代に自分たちをいじめた先輩芸人を暴露するなど関西人が好む下世話な話題を速射砲のように繰り出し、一躍お茶の間の人気者に。

 そんな人気タレントが「カリスマ」へとステージをアップさせたきっかけは? 千里・万里時代から彼女を知り、現在制作会社を営む男性は、こう語ります。

「上沼さんが強大な力を持つようになったのは平成10~20年くらいの時期ですね。上沼さんさえ出演すれば、どの番組も漏れなく視聴率が爆上がりする、そんな時代でした。

 歯に衣着せぬ舌鋒の鋭さ、ゲストを上げたり下げたり自由自在に操作できる話術がサブカルチャーの時代にマッチしたんです。夫の方針で東京進出できなかったのが、かえって『浪速の至宝』という雰囲気をたかめました」(制作会社取締役)

◆最盛期、関西の主な地上波すべてに冠番組があった

 上沼さんをカリスマとして君臨させたきっかけは、なんと言っても「視聴率」。高い数字の前に、上沼さんに意見できる制作者は誰もいなくなったのだそう。

「大阪のテレビ界は東京に輪をかけて視聴率至上主義なんです。しかしながら、視聴率を獲得するノウハウはまるで持っていない。

 上沼さんや故・やしきたかじんさん、現在の吉村府知事などタレントパワーで数字が獲れる人は無策の在阪局において神様です。そんなふうに各局、視聴率の女神である上沼さんに依存しきっていました」(制作会社取締役)

 視聴率の女神とも呼ばれた上沼さんは、ひと頃はNHK『バラエティー生活笑百科』(初回から2013年9月28日放送回まで28年半レギュラーをつとめ降板)を筆頭に、毎日放送、朝日放送、関西テレビ、読売テレビと関西主要地上波のすべてに冠番組を持ちました。すなわち在阪の放送局を制覇していたのです。

 この時期の女帝ぶりを、かつて上沼さんの番組に要職で参加し、現在は関西を離れているある人物は、こう話します。

「特に『快傑えみちゃんねる』が毎週月曜日オンエアだった時代(番組開始の1995年7月から2009年3月まで)の快進撃は本当にすごかった。視聴率が20%を超えるなんてザラでした。

 ダウンタウンがMCをつとめたフジテレビの人気音楽番組『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』の2時間特番を放送する際であっても、視聴率で勝っている『えみちゃんねる』はその座を譲りません。『HEY!HEY!HEY!』は仕方なく関西のためだけに異例の『2時間特番の1時間バージョン』を編集せざるをえないほどでした。当時の関西はダウンタウン<上沼恵美子だったんです」(旧・関係者)

◆敏腕マネージャーが各局のプロデューサーを束ねていた

 全国ネットの番組を相手取ってもビクともせぬ不動の人気を得た上沼さん。次第に上沼さんはタレントから「女帝」へと駒を進めてゆきます。

「今年の5月で退職したという元芸人の女性マネージャーが、とにかく腕利きでした。たとえば上沼さんが可愛がっていた犬が死んだら、すぐにすべての番組のプロデューサーへ連絡し、犬への弔辞を書かせる。そして合同葬儀を開かせていました。

 それがどこまで上沼さんの意思だったかはわからない。けれども関西のテレビ界は、いつしか上沼さんに忠誠を尽くすのが当たり前という雰囲気になっていったんです」(旧・関係者)

 関わる番組すべてのプロデューサーを束(たば)ねるほどの敏腕女性マネージャー。彼女は番組の収録が終わるたびに一斉に「収録現場の雰囲気を、局の垣根を超えて各番組プロデューサーに報告した」と言います。そこには、ある理由がありました。

「収録中に上沼さんが『このゲスト、気に入らへん』と感じたら、すぐにマネージャーが他局の番組へ通達します。すると他局のブッキングも白紙に戻るんです。すごいでしょう。上沼さんの番組は出演する人がわりと決まっていて、しかも突然どの番組にも出なくなる。その背景には、そういう理由があるんです」(旧・関係者)

◆視聴者もカリスマ視するように

 他局の番組制作をも変えてしまう上沼さんの影響力。そういったピリピリした雰囲気は一般視聴者へも伝わります。視聴者が上沼さんをカリスマとして崇(あが)めるに至った背景にも、マネージャーの尽力がありました。

「マネージャーによるカリスマ性の演出は徹底していました。一般視聴者をスタジオに入れる公開収録や公開生放送の番組では、本番直前まで観客は上沼さんの姿を見ることはできません。『上沼さん専用の移動できるカーテンつき装置』で姿を隠しながらスタジオの立ち位置まで誘導していました。上沼さんは本番と同時に現れる神秘的な存在なんです。

 庶民派として人気の上沼さんでしたが、街で一般人にサインを書いたり、2ショット撮影などの要望に応じたりした例は、知る限り一件もないはずです。ブランディングの徹底ぶりは矢沢永吉に匹敵していたかもしれません」(旧・関係者)

◆キンコン梶原に怒ったきっかけは挨拶メールが来なかったこと

 移動式の秘密のヴェールに隠されながら、圧倒的な話術で視聴者を心酔させてゆく上沼さん。しかし……ここ近年、上沼さんのセンスと一般視聴者の感覚とのあいだに乖離(かいり)を感じるスタッフも増え始めたのだそう。上沼さんの番組に携わった経験がある40代の制作スタッフのひとりAさんは、こう語ります。

「上沼さんはとっても義理堅い人なんです。たとえばサンドウィッチマンの伊達が結婚したとき、『自分が初めてM-1で審査員をつとめたチャンピオンだから』と、驚くほど高額な祝儀を包みました。そんなふうに人情に厚い部分もあるのです。けれども、誰もが自分と同じようにやって当たり前だと考えてしまうんですね。自分の次男を放送作家として番組に参加させてしまう公私混同ぶりも、そういう考え方からきているんだと思います」(制作スタッフA)

 恩や出会いに報いたい、そういった温かな気持ちを抱く上沼さん。しかし、他者にも同じレベルの感謝を求めてしまう。その考え方に、年下の出演者や若い視聴者とすれ違う原因があるようです。共感が得られなくなり、視聴率も、ひと頃ほど高い数字を獲れなくなってきました。

「キングコングの梶原を公開処刑のような状態に追い詰めてほとんどカットとなった収録回も、きっかけは『収録当日に梶原から挨拶のメールが来なかった』、たったそれだけが原因なんだそうです。

 新型コロナウイルスの影響で2か月も大阪へ来れなかった梶原は、当日に上沼さんの楽屋へ直接挨拶へ出向くつもりでした。ところが上沼さんは梶原からのメールの着信を確認するために、なんと朝6時から起きて待っていたそうなんです。

 どっちが悪いわけではない。価値観の違いですよね。でも僕らの感覚で言うと、梶原が特に失礼だったわけではないんだよなあ」(テレビ制作者A)

 ちなみに現在はサンドウィッチマンの伊達とも袂を分かつ状態なのだそう。原因は「M-1で同じ事務所のカミナリを酷評した理由を質問したから」なのだとか。

 では、さらに世代が隔絶している30代の制作者Bさんは、上沼さんをどのように観ているのでしょう。

◆M-1で急に和牛に怒り出したのは、いつもの「思い出し怒り」?

「上沼さんって、よく『思いだし怒り』をするんですよ。ふとした拍子に、以前に悔しい想いをした経験がよみがえってくるんですね。そしてスイッチが入ってカッとなったら、もう毒舌が止まらない。

 たとえば番組で安室奈美恵さんの話題が出たとしますよね。すると突然『紅白歌合戦で司会をしていたとき、小室哲哉に突き飛ばされた』って記憶が呼び戻されて、収拾がつかなくなる。小室さんだってわざとぶつかったんじゃないだろうし、もともとの安室さんの話題となんの関係もない。

 M-1でからし蓮根について審査コメントをしているとき、急に和牛に怒り出したでしょう。上沼さんをよく知らない視聴者は驚いていたけれど、あれはわりと日常茶飯事なんです」(テレビ制作者B)

 制作会社を営む男性は「上沼さんの威厳はかつて地上波を制覇していたところから生まれていた。総本山とも言える『快傑えみちゃんねる』の自主降板により、大きな一角が崩れたわけだ。これによって放送局どうしが連動しなくなるし、上沼さんを脅威だと感じなくなる。本人が思っている以上にこの先ヤバいと思う」と語ります。

◆「えみちゃんねる」のYouTube版を!

 痛快に世相を斬り、視聴者を大いに笑わせ、楽しませてきた西の女帝、上沼恵美子さん。

 放送局も世代交代が進み、上沼さんの偉大なる功績を知らないジェネレーションも台頭し始めました。コンプライアンスにより、かつての毒舌も封じられ、好き放題に話せはしないでしょう。いっそ「えみちゃんねる」をYouTubeチャンネルに移行して、存分に思いの丈をぶちまけてみてはいかがでしょう。

<取材・文/女子SPA!編集部>

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