がんの夫と過ごした最後の2週間。交互にくる温かい時間と苦しい時間

女子SPA! / 2020年11月14日 8時47分

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 筆跡アナリストで心理カウンセラーの関由佳です。約3年がんの闘病をした夫ですが、亡くなる約2週間前に病院から帰宅。自宅での看護生活となりました。

 すでに手の施しようがなく、ほぼ食事もトイレも自分ではできず、痛みをコントロールしながら過ごす生活。当然、家に帰ってきたら、妻である私の全面介護ということになります。

 最初はどうなることかと思っていましたが、私にとってはかなり濃厚な、夫との最後の時間となりました。

◆「家に帰りたい」夫の最後の希望を叶えてあげたい

 自宅に戻ったのは、夫のたっての希望でした。脳梗塞の後遺症で失語があった上に、脳にがんが転移していたこともあり、まともに会話がしにくくなっていたのですが「家に帰りたい?」と聞くと、その質問にだけは「うん」と即答。

 どうやら主治医や看護師さんにも同じだったようで、どうにか夫の最後の希望を叶えてあげたいと思うようになりました。

 正直、私も自宅で仕事をしているので、入院先の病院に毎日通うよりは、夫には家にいてほしいと思っていました。そこで主治医と病院のソーシャルワーカーと担当のケアマネジャーに相談。しばらくして関係者を交えて打ち合わせをすることになりました。

◆看護師の言葉が私の覚悟を試す……

 それまで、ちょっとした面談をするくらいだろうと勝手に思っていたのですが、行ってみるとケアマネジャーとソーシャルワーカー、主治医と訪問看護の看護師2名、訪問医療の医師の6名が勢ぞろい。夫が自宅に戻るにあたり、家に必要な介護用品についてケアマネジャーが説明し、生活や処置について主治医と看護師が相談。

 私としては目の前のやり取りが、まるでアベンジャーズがそろって作戦会議を進めているようで、なんだか現実味がなくぼんやり聞いていたのですが、ふと1人の看護師が厳しい表情で、まっすぐ私の目を見つめて問いかけてきたのです。

 「奥さん、今の旦那さんを家に帰すということは、どういうことが自分に起こるか、理解していますか?」

◆夫を看取る覚悟はずっとし続けてきたこと

 その言葉で、ようやく私の脳はピントが合い、現実を直視。そう、夫を自宅に帰すということは、私が最期を看取るということなのです。

 わかっていたつもりでしたが、改めてはっきり聞かれ、正直背筋がゾクッとしました。ですが、もう夫を看取るというのはずっと覚悟し続けてきたこと。だからこそ他の誰にも頼みたくなかったですし、何より自宅に戻りたいという夫の希望は、私に最期まで一緒にいてほしいという意味のはずです。

 私は「はい、わかっています。覚悟はずっとしています」と看護師に言葉を返すと、彼女は厳しい表情からスッと力を抜き、「わかりました。では私たちがしっかりサポートするので、何かあったら全力で頼ってくださいね」と優しい言葉をかけてくれました。この瞬間、私の覚悟はがっちりと固まりました。

◆支えてくれる人の温かさを実感

 その会議が終わった、3日後。しんしんと雪の降る日に、夫は介護タクシーで自宅に帰ってきました。

 2名の介護士の方が、夫を毛布でぐるぐる巻きにして寒くないよう、丁寧に部屋のベッドまで運んでくださり、なんてかっこいい仕事だろうと感動したのを覚えています。

 さらにその日の夕方に、再度アベンジャーズが自宅に集合。ケアマネ、訪問看護師、ヘルパー、介護用品店の担当者が集まり、次の日からのシフト組みと、私へ簡単な介護のアドバイスをくれました。

 日本の福祉って捨てたもんじゃない! 私はこの日、本当に温かいケアを受けて、そんなことを強く感じました。

◆シモの世話も貴重な経験に

 初めて真剣に介護生活を送りましたが、毎日午前中にはヘルパーさんが来て体を綺麗にしてくれましたし、2日に1回は看護師が様子を見に来てくれ、週に1度は訪問入浴と訪問医療が入ったので、意外とにぎやかな毎日。入れ替わり立ち替わり誰かが来るので、心細さを感じることはほぼありませんでした。

 いわゆるシモの世話も、子育て経験のない私にはわからないことばかりでしたが、やってみればなかなか面白く、どうすれば夫が快適に用を足せるか、オムツや尿取りパッドの選び方や使い方をヘルパーさんと試行錯誤しながら話し合い、大変良い経験になりました。

 思っているよりも全然抵抗はなく、夫がたくさん尿を出しているとわかると、むしろ愛しく感じるほど。これも経験してみないとわからないことで、夫には本当に感謝です。

◆温かい時間と苦しい時間が交互に……

 とはいえ、夜突然苦しみだしたときや、夜中にせん妄(※)により身に付けているものを全部はがして騒いだときは、さすがに私もうろたえ、半泣きで看護師に助けを求めたことも。

 真っ暗の中、夫を見ながら仕事をした日もあり、結果的に2週間のうち、後半はほぼ寝ずに過ごしていたように記憶しています。

 今思えば、温かい時間と苦しい時間が交互にくるような、心身ともにかなりきつい日々でしたが、訪問入浴でお風呂に入っているときの夫の幸せそうな表情や、ヘルパーさんに体を拭いてもらった後の穏やかな寝顔を思い出すと、家に戻してあげて本当によかったと心から思いました。

 さて、次回はついに訪れた、夫との最後の瞬間についてつづりたいと思います。

(※)せん妄とは、突然発症する意識障害の一つです。意識が混濁し、興奮状態になったり、幻覚が見えたりするなどさまざまな症状が出る病態です。

―シリーズ「私と夫の1063日」―

<文/関由佳>

【関由佳】

筆跡アナリストで心理カウンセラー、カラーセラピストの資格も持つ。

芸能人の筆跡分析のコラムを執筆し、『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』(関西テレビ)などのテレビ出演も。

夫との死別経験から、現在グリーフ専門士の資格を習得中。

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