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「渡部出禁」「松ケン炎上」…ほぼフェイクで釣るネットニュースの不毛な戦い

女子SPA! / 2021年3月21日 8時46分

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〈アンジャッシュ渡部「豊洲出禁」〉〈松山ケンイチ「嫁」発言で炎上〉など、人々の関心を引くネットニュースのタイトルたち。しかし中には本文を読んでみると単なる“釣り”である場合や、拡大解釈が過ぎるものもあります。

 たとえば、渡部の件については①〈“キャッチーな”タイトルで特定の人物のイメージを低下させる〉、という問題があります。〈渡部建 早くも豊洲出禁…騒動拡大で市場から「もう来ないで」〉(女性自身/2021年3月2日)というタイトルはあたかも渡部が何か問題を起こしたかのように思わせてしまうものですが、本文を読むと、実際はメディアが押し寄せ渡部が仕事できなくなっただけの話。しかし「豊洲出禁」というパワーワードの威力は大きく、ツイッターのトレンドになったほどです。

 もう一つのネットニュースのタイトルの問題としては②〈数人のツイートを見て「タレントの〇〇炎上」「賛否両論」「怒り」〉といったニュースを出す件。たとえば〈松山ケンイチの“嫁呼び”に女性視聴者が怒り「この発言はマズい」〉(まいじつ/2021年2月21日)がそれにあたります。

 果たしてこのような状況について、最盛期は月に800~900本のネット記事のタイトルをつけてきたネットニュース編集者で『ネットは基本、クソメディア』(角川新書)などを著書にもつ中川淳一郎さんはどう見ているのでしょうか。女子SPA!編集部への特大ブーメランを覚悟で読み解いてもらいました。(以下、中川淳一郎氏の寄稿)

◆過激なタイトルや釣りタイトルが発生する背景

 こうしたくなる気持ちは分かります。何しろ見出しというものは「お買い上げいただくかどうか」をもっとも左右するものだからです。ネット記事は読まれたところで広告費が発生します。そして、日々コンテンツ量は増加するだけに、とにかく魅力的なタイトルをつけなくてはならない。

 仮に「釣られた」と思ったとしても別にお金を払っているわけでもないからそこまで恨むこともない。さらに、Yahoo!やLINEやニュースアプリ、SNS経由でニュースを見ることが多いだけに、「一体どのメディアが出した記事か」に関心がいかず、そのメディアを今後ボイコットする、などは大多数の読者はしません。

 もちろん、過去には2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)のユーザーが「またゲンダイか!」「ゲンダイをソースにするな!」「日刊ヒュンダイの記事でスレ立てるな」などと親中韓系だと目されている日刊ゲンダイを敵視していた時期はあります。あとは私が携わっているNEWSポストセブンも羽生結弦のファンからは滅法(めっぽう)嫌われている。だからファンは「傷つきたくないからポストセブンの記事かどうかを事前に確認する」なんて書き込むもの。

 しかしこの2つの例は極めて珍しい。となれば「旅の恥はかき捨て」とばかりに各サイトの編集部はタイトルについては不誠実にしても構わない、と考えるようになります。何しろネットニュースの場合は「PVこそ正義」であり「1PVの価値は1PVで等価」という考え方が根付いている。

◆「豊洲出禁」「もう来ないで」はやっぱり強いが……

 過激なタイトルや釣りタイトルが発生する背景はこんなものですが、続いては前出の2つの問題点について私見を述べてみます。私は2006年からネットニュースの編集に携わり、2020年8月31日をもって一応「セミリタイア」をし、編集業からは手を引きましたが今でも記事を編集することはあるので「ネットニュース編集者」の肩書は残しています。

①〈“キャッチーな”タイトルで特定の人物のイメージを低下させる〉

 これについては「渡部関連の記事は内容がどうであれPVが稼げる」という法則があります。元々渡部の不倫をスクープした週刊文春は大したものですし、豊洲で働いていることをスクープした日刊大衆も同様。だが、そこに追随するサイトはコバンザメ。

〈渡部建 早くも豊洲出禁…騒動拡大で市場から「もう来ないで」〉

「豊洲出禁」という言葉と「もう来ないで」はやっぱり強い。「もう来ないで」と実際に言われたかもしれませんが、「いやぁ~、渡部さんさぁ、ちょっとあなた頑張ってるのは分かるけど、マスコミと一般の見物客が来過ぎちゃうからちょっとしばらく来ないでいてくれるかなぁ……。ごめんね」といったやり取りが実際はあったとしても「もう来ないで」と見出しに出されると強い。

 この見出しについては「また渡部がゲスなことをして市場関係者を激怒させたか!」とミスリードするものです。私が原稿を読んだうえで見出しをつけたらこうします。

〈渡部建の豊洲市場無報酬熱心労働、取材陣殺到し撤退余儀なくされる〉

 もちろん女性自身のタイトルの方がPVを取れるのは分かりますが、内容をより正確に表すにはこちらでしょう。ただし、「無報酬熱心労働」というどことなくクスリと笑いたくなるキーワードはまぶしています。場合によっては「パワーワード」に化けてくれるかもしれない。

◆実に「おいしい」記事の量産方法

 各編集部は正直「消耗戦」になっています。文春をはじめとした取材力のある週刊誌系が出した記事の後追いをすればいいだけ。たとえばこんな感じです。

「渡部建・東出昌大、二大最低オトコに『どっちがマシか』論争が勃発」(エンタMEGA/2020年6月14日)

 これは取材力のないメディアが、明らかにPVが取れる渡部と東出両方の名前を見出しにだすことができ、さらに「論争勃発」とネットの声を紹介するつくりになっています。結局炎上を渡部と東出に押し付け、自分達はPVを稼ぐことに専念できる。実に「おいしい」記事の量産方法です。

 あと、イメージ低下、というワケではないものの、これは「ちょっとやり過ぎでは(苦笑)」というタイトルもあります。

〈止まらない衝撃!阪神・ロサリオ、2戦連発シーズン95本塁打ペース〉(サンスポ/2018年2月13日)

 紅白戦2試合を終えたところ「実戦3試合で早くも2発。シーズン95本塁打ペースに金本知憲監督(49)も大喜び。極上トロ(闘牛)のバットが止まらない!!」という記述がタイトルの根拠になっています。これをスポーツ紙本紙でやるのであれば、まぁ、カネを払って買っているので自己責任ですが、ネットではいかがなものかと思います。

 どう考えても紅白戦3試合で2本ホームランを打ったからって143試合制の公式戦でもそのペースで打てるわけないじゃないですか。この理屈だったら紅白戦初日に1本ホームラン売ったら「シーズン143本塁打ペース」と言うことができるようになる。

◆数人のツイートで「炎上したこと」にされたサザエさん

 そして、②〈数人のツイートを見て「タレントの〇〇炎上」「賛否両論」「怒り」〉といったニュースを出す件です。

〈松山ケンイチの“嫁呼び”に女性視聴者が怒り「この発言はマズい」〉(まいじつ/2021年2月21日)

 についてですが、ネットニュースの安易な作り方は「ツイッター上で怒っているごく少数の人を見つけ、『怒り』『賛否両論』『炎上』と煽る」ことにあります。その記事を出すことにより「炎上したこと」にされるのです。

 昨年、『サザエさん』(フジテレビ系)について、デイリースポーツのオンライン版がこの見出しで報じました。というか、ただテレビ番組の内容を紹介し、ネットの声を集めただけだけどよ。

〈「サザエさん」がまさかの“炎上”…実社会がコロナ禍の中でGWのレジャーは不謹慎と〉(2020年4月26日、現在はタイトルを修正)

 しかし、その後の東京大学准教授の鳥海不二夫氏による検証では、「4月26日のサザエさんが不謹慎だと言った人は11人しかいなかった話」とのことです。要するに、「サザエさん」でコロナ禍のGWにレジャーに行くことについて「不謹慎」と指摘した数人がツイッターにいたことにより「炎上」というタイトルをつけたわけですね。

 11人が否定的な意見を述べただけで「炎上」というのはマズいと思ったのか、後に「サザエさん 実社会がコロナ禍の中でGWのレジャーは不謹慎との声も」に変えています。確かに「『不謹慎』と指摘する声はあった」わけなので、これは「まさかの“炎上”」よりは実態を表しているものの、一部の極端な人の声を基に過激タイトルをつけるのは「クソ野郎!」と私は言いたい。

 最近マナー講師のことを「失礼クリエーター」と呼ぶようになったが、ネットニュースの編集者ども、貴様らこそ「炎上クリエーター」じゃ、ボケ!

<文/中川淳一郎>

【中川淳一郎】

フリーのライター・編集者。一橋大学卒業後、博報堂で企業のPR業務を担当。退職後、雑誌編集者を経て「NEWSポストセブン」などのニュースサイトの編集者に。著書に『ネットは基本、クソメディア』(角川新書)など。noteで「月刊お気楽フリーランス論」を発信中。

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