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田中圭、サイテーな不倫男を演じても憎めない理由。ドラマ『A2Z』にみる“ちょうどよさ”

女子SPA! / 2023年3月29日 17時48分



◆愛されキャラな理由

 田中圭と言えば、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、2018年)の「はるたん」こと春田創一役だが、テレビドラマ史上、このはるたんほどの愛されキャラはいないと思う。飲んだくれて玄関先でそのまま寝てしまったり、靴下をその辺に脱ぎ捨てたり、だらしない生活臭すら漂うキャラクターなのに、田中が演じるとたちまち愛されキャラになる。

 思いっきり愛くるしい田中圭スマイルを見せてくれた意味でも、もはや国民的なキャラクターだと言っていいだろう。が、その一方で、ごくまれに真顔になる瞬間もある。『A2Z』で言うと、まさに一浩が不倫を自白する場面でインサートされる「魂が抜けた顔」がそれだ。

 田中の愛されキャラボタンには、オンとオフがあるように思う。ただただ笑顔満点(オン)なだけでは平面的で面白くない。そこにすこしばかりのオフ状態が追加されると愛されキャラ度合いがより引き立つというバランス感覚。これを理解すると、田中が決して見た目だけではなく、俳優の演技として愛されている理由が分かる。

◆オフ状態の田中圭の魅力

「魂を抜かれた顔」は文字通り、かなりオフ感が強かった。夏美の回想場面として過去を語る白黒画面の中、虚(うつ)ろな表情で、まさに真顔の田中圭が座っていた。ここにははるたんのような笑顔が入り込む余地はない。田中の演技の面白さは、このオフ状態にこそある気がする。

 第2話で夏美と一浩が久しぶりにレストランで食事をする場面がある。席が準備されるのを待つ間、バーで乾杯する。美大生の恋人からプレゼントされたネクタイを夏美に結ばせるのが、いかにも一浩らしいが、もはや最低な男にも慣れてきた頃合い。

 ふたりが8年前に結婚したときと同じシチュエーションでの会話では、一浩のさりげなく温かい表情が垣間見える。それには夏美もついほだされてしまう。豊かな宵の口、抑制のきいたマチュアな微笑みを浮かべる。田中のオフ感が、たまらない夜のひとときを演出する場面だった。



◆“ちょうどいい田中圭”が楽しめる作品

 もちろん、はるたんに代表される天下の田中圭スマイルも大好きである。でも田中の真骨頂は、春田創一役にばかりあるわけではないと強調しておきたい。ジョン・ウー監督作品『マンハント』(2018年)で田中が演じた研究者の苦悶の表情を思い出してもいい。同作には回想場面の中で極限まで感情を抑え込んだあまりに繊細な田中圭がいた。

 田中はどうも回想場面の中で見事なオフの演技をする俳優なのかもしれない。『A2Z』では、はるたん的なグズな感じや茶目っ気を滲ませながらも、ときおり真面目な表情に切り替わる。第3話で、編集者夫婦同士、新人作家を取り合うように夏美と一浩が鉢合わせになる場面で、ほくそ笑む一浩の表情には、田中の大胆さと冷静さを同時に感じた。

 オンからオフへ、オフからオンへ。緩やかな調整のきいた、“ちょうどいい田中圭”の演技が楽しめる作品である。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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