「ツッコみたくもなる」疫病が繋いだ2人の恋路。最期を悟った井浦新“道隆”も切なすぎた|NHK大河ドラマ『光る君へ』第17回
女子SPA! / 2024年5月5日 15時46分
ふたりの関係がうまくいってほしくて、無理だと分かっていても、つい成就を願ってしまう。
◆さわとの仲直りがまひろに響く
回復したまひろのもとには、百舌彦が様子を見に来ただけではなく、さわ(野村麻純)が訪れる。
一緒に石山寺を訪ねてケンカ別れをしていたふたり。まひろはさわに文を出していたが、そのたびに突き返されていた。
さわは疫病で兄弟を失っていた。そのことで命の儚さを知り、まひろとの友情の大切が身に沁みたという。また、まひろに追いつきたいと、まひろの文を一生懸命に書き写していた、と。再び、親しくつきあっていこうと約束するふたり。まひろにとっては嬉しいできごとだったのだろう。その夜は筆を持たずにはいられない、という衝動に駆られる。少しずつ、まひろの書き手としての衝動が積み重なっていっている。文章が人の心を動かす。その経験はまひろの人生を形作っていくことになる。
しかし、個人的には「そんなさわ……自分勝手な……」と思ってしまうのは性格が悪いからだろうか……。
◆悪化する道隆の病
一方、内裏では道隆が急激に体調を悪くしていた。安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)を呼び寄せるが呪いなどではなく「寿命だ」とばっさり切り捨てられる。
そんな道隆の心残りは家の繁栄。一条天皇(塩野瑛久)の寵愛を受けている定子(高畑充希)だが、まだ子はいない。そんな定子に「皇子を生め、皇子を」と迫る。今の時代なら炎上案件であるが、この時代でも十分不快な発言であることは定子のそばにいる清少納言(ファーストサマーウイカ)の表情から伺える。さらに、正気を失った状態で清涼殿に行き、御簾をめくりあげて一条天皇に「伊周(三浦翔平)を関白に」と迫る。
身内ばかりを取り立てていると公卿たちに眉を顰められていたが、道隆にとって一番大事だったのは本当に身内だったのだな、ということが感じられる。
そして一条天皇はその言いなり……にはならない。自分がどのように公卿に言われているかを一条天皇は知っていた。彼の心の中には民のためという気持ちがある。伊周を関白には命じないし、伊周への「内覧」の許しも道隆が病の間だけという条件をつける。関白家の思い通りにはもうはならない。
◆道隆、最期のとき
不安を残したまま、道隆は床に臥せっていた。妻の高階貴子(板谷由夏)に手を握られながら。
そして道隆は「わすれじの行末まではかたければ 今日をかぎりの命ともがな」と口にする。これは貴子の歌だ。道隆と結ばれ、新婚のころに詠んだもの。「いつまでも忘れないと言うけれど、先のことは分からない。その言葉を聞いて幸せな今日、いまここで命が終わればいいのに」という意味だ。ものすごく率直な歌でびっくりする。幸せの絶頂にいるときにもう今日死んでもいいです! と思うことはあるが、貴子は道隆との日々の中でそう感じていたのだ。それを最期のときが近づいているときに道隆が口にする。切ないやら、幸せやら……。道隆は関白としては眉を顰める人だったかもしれないが、人を愛することを大事にしていた人なのだろう。
◆時代が動く
道隆が亡くなれば、また新たな関白が擁立される。
伊周か、道兼(玉置玲央)か。汚れ役として動いていた道兼だが、憑き物が落ちたようにすっきりとしている。道兼が動かす世を見てみたい気がするが……。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
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