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NHK大河『光る君へ』道隆死す。井浦新にしかこの“独裁者”を演じられないと言い切れるワケ

女子SPA! / 2024年5月2日 8時45分

 その後、息子・道長の代に摂関政治の全盛期を迎える礎を用意したのが、兼家。威厳ある佇まいを体現する段田をに対して、カメラが他の俳優よりも明らかに色っぽく写るようにワンショットを抜く。

 兼家のあと、関白になった道隆を演じる井浦は、段田の余韻をまといながら、独自の風雅を発している。

 大の酒好きで、冗談で周囲を笑わせてばかりいたらしい。清少納言は、『枕草子』の中で、笑い過ぎて「あやうく打橋から落ちるほどであった」(田中澄江現代語訳)と書いている。

◆井浦新にしか演じられない大役

 疫病の蔓延とともに平安の人工的な美しさのメッキがはがれ、その幻想を体現する道隆の狂気がにじみ出す。第17回冒頭、喉が渇いたといって道隆は、しきりに水を飲む。龍笛もうまく吹けない。一条天皇(塩野瑛久)の御前で演奏中、一瞬宙を舞ったあと、ドタリと床に倒れてしまう。

 病に臥せる道隆に明らかな変化があるのは、顔色の悪さだけではない。それまで常に日の光を浴び続けていた関白の顔に物理的なかげりが見えるようになるのだ。

 最初に臥せった夜はまだ月明かりが照らしていたが、弟・道兼(玉置玲央)を呼ぶ場面では、部屋に入り込む光が道隆の顔を全然照らさない。

 それでも入内すると一応チラチラ光は当たる。生来の光の男は病身でもすごいパワーではある。そのあと、確認する限り、明らかに日が差さないのは、御簾が下ろされた室内で中宮・定子(高畑充希)に迫る場面のみ。

 たっぷりの日差しの中で表舞台を生きた道隆が、わずかに見出した陰の世界……。

『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』でノーベル文学賞候補者として名前があがった谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』。同著で語られる陰翳の花鳥風月をはからずも実践する、藤原道隆役は井浦新にしか演じられない大役だった。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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