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朝ドラ『虎に翼』は“恋愛関係にならない男女”の描き方が絶妙。35歳俳優が見せた「最高の別れぎわ」

女子SPA! / 2024年5月15日 8時45分

 その時の花岡の表情や言い方からは「もう二度と会うことはないけど」というメッセージを感じるもので、鈍感な寅子もそのことを察してか、どこか切なさを含んだ顔を浮かべた。

◆花岡は佐賀に帰ったら他の誰かと結婚するはず

 恐らく花江の予想通り、花岡は今回寅子にプロポーズして「佐賀に一緒に来てほしい」と提案する予定だったのだろう。だが寅子に結婚願望が無いことを知り、「佐賀地裁に行く」という事実だけを伝えたのかもしれない。また、花岡は顔も良く、裁判官という立派な仕事に就いており、なにより“いい年齢”であるため父親のもとには縁談の話が無数に寄せられているように思う。そのため、花岡は親からかなりのプレッシャーを受けていたはずだ。

「1人で佐賀に帰る」ということは、寅子ではない誰かと自動的に結婚することを意味する。寅子と結婚するための“ラストチャンス”だったため、噴水広場の前で“粘り”を見せようと思ったものの、寅子の意思の強さを考えて何も言葉が思いつかなかったのではないか。だからこその花岡の沈黙だったように感じた。

◆恋愛関係にならない男女の描き方が絶妙

 正直第32話を見ている最中、2人の関係性がグチャグチャになってしまわないか怖かった。というのも、花岡がレストランや噴水広場の前でプロポーズして寅子が断った時、「俺は裁判官になる男だ! 何が不服なんだ!」とヒステリーを起こさないか心配だったからだ。もしそのような展開になれば2人の友情や思い出は木端微塵(こっぱみじん)に吹き飛んでしまう。とはいえ、寅子達と一緒に学び舎で過ごしていたからこそ、そういった“男らしさ”を発揮せずに寅子の思いを尊重できたのかもしれない。花岡の気持ちを思えば切なさを覚えるが、花岡の成長を感じられる絶妙な別れ方だった。

『虎に翼』の脚本家を務める吉田恵里香氏は、2022年に放送されたドラマ『恋せぬふたり』(NHK総合)を完全書き下ろしで手がけた過去がある。恋愛感情や性欲を持たないセクシャリティ“アロマンティック・アセクシュアル”の登場人物の葛藤を描いた作品だ。『恋せぬふたり』では“恋愛関係にならない男女”という難しい関係性が巧みに描かれていたが、その時見せた剛腕が第32話でも遺憾なく発揮されていた。

 しばらく花岡の出番は無くなりそうに思えたが、意外と早く再会するのかもしれない。次に登場した時にどのように姿になっているのか楽しみだ。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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