生田斗真「無痛おねだり」発言炎上にみる日本の芸能界の悪習。ぼくらが待つべきは“当人の言葉”
女子SPA! / 2024年5月19日 8時45分
橋本の場合もやはり発火点は、Instagramのストーリーズ上だった。2023年3月5日、トランスジェンダー女性の公共施設利用について、「そういった場所では体の性に合わせて区分する方がベターかなと思っています」と私見を述べたことが議論を呼んだ。
同年6月には国会で可決された「LGBT理解増進法」が施行されている。当事者や支援団体からの批判の声が上がっている同法は、皮肉にも「理解増進」という名ばかりの“理解不足”を露呈している。
その上で橋本の「区分」は、「身体が男性の方」と入浴施設で会えば「警戒してしまう」という女性の立場からの素直な反応だと理解できる。過去には「ハリー・ポッター」シリーズの著者であるJ・K・ローリングがトランスジェンダー女性を装った性犯罪を懸念する発言で大バッシングを受けている。
生田同様に再度謝意を込めた文を投稿したが、それだけでは済ませなかったのが橋本の意識的な態度を表している。炎上発言を彼女なりに咀嚼し、思考を整理したコラムを『週刊文春』での連載「私の読書日記」に寄稿したのだ。
「私がこれから記述する、極めて短期間で学んだ知識、表現、言葉には、依然として理解の足りていない内容が含まれる恐れが十分ある」と前置きした文頭は、丁寧な対応と配慮である以上に対話を呼びかける意味合いが強い。誤読の余地がないように言葉を紡ぐ橋本の姿勢は、自分の過ちから押し広げた問題提起を意識的に力強く生み出す契機となったのだ。
◆然るべき言葉を待ちたい
コタツ記事ライターが恰好の獲物を求めて目を光らせ、なんだか空恐ろしい時代だ。問題発言を含んだ投稿を削除してもなんの対応にもならないことは歴然としている。それは一時的な火消しの対処にもならない。
SNSユーザーがスクショして手元に証拠を保存することも簡単だ。結果的に火に油を注ぎ、炎上する。だったら、言ってしまったことは潔く残す。そして削除後に一度きりの謝罪で済ませるのではなく、必要なら何度でも言葉を尽くすこと。
橋本にはそれができて、生田にできないはずがない。橋本は、炎上をきっかけに広い対話を促した。そのための正確かつ誠実な言葉を紡ぐにはそりゃ時間がかかる。
「寛容な社会を!」なんて単純な標語に帰結するのでも、相手の間違いを攻撃的に正すのでもなく、非を認めた相手の次なる言葉をただ待ってみるのはどうだろう(もちろん炎上きっかけでの気づきが前提だが)。
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