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朝ドラ『虎に翼』仲野太賀の“忘れがたい一瞬の表情”。優三亡き今だから振り返りたい名場面

女子SPA! / 2024年6月15日 8時46分

 どうしてこの人はいつもこうなんだ。緊張を持ち前のゆるみで解いてしまう稀有な才能。それを演じる仲野太賀は基本的には二枚目俳優だというのに、あえて三枚目キャラを率先して引き受けて、細やかにおどける。

 自分が試験に合格できないときにはさすがに落胆の表情を隠さないけれど、でも彼は場所を選ばず、どんな苦いシチュエーションでも人々を和ませる。単なる道化師のような三枚目なんかじゃない。内面化された二枚目的な誠実キャラなのだ。

◆仲野太賀が作る表情

 彼の誠実さが最高点に達してにじむ、忘れがたい瞬間がある。1938年、高等試験に合格した寅子が日本初の女性弁護士になった朝の場面だ。合格者一覧に自分の名前はない。もう何度目の挑戦だっただろう。ここまでにして、弁護士になる夢は諦めよう……。

 晴れやかな顔をした優三はそう心に決める。一覧からさっと目を離して、じっと間を置く。気持ちに整理をつけ、隣にいる寅子の合格への祝福に切り替える。なんていい表情をするんだ、仲野太賀。

 いい表情ばかりが、演技の華ではないけれど、仲野が作る表情はちゃんとキャラクターの感情の上に成り立っている。奥行きのある、立体的な表情が、優三という人の心の動きをひとつひとつ丁寧に可視化してくれている。

◆チャップリンさながらのペーソス

 寅子との間に第一子が誕生する。戦時下だけれど、夫婦だけでこっそり美味しいものを食べて心の平穏を共有する日々。そこへ赤紙が。いざ届くと、「おめでとうございます」なんてすぐに出てこない。

 第8週第40回。優三の出征を寅子は変顔で見送る。優三も変顔で返す。それぞれ、思い思いの表情。でもこらえきれない優三が顔をくしゃくしゃにして、こみあげるものを必死でおさえる。でもダメで、やっぱりこみあげてくる。この場面でのこらえ涙もまた仲野による繰り返しの演技。

 そして一本道を歩いていくエモーショナルな背中は、チャーリー・チャップリンさながらのペーソスを漂わせる。優三が出征する1944年、チャップリンが同年齢の独裁者アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツを痛烈に批判する『独裁者』(1940年)がアメリカではすでに封切られている。

 二枚目の素顔をあえて白塗りで隠していたのが、チャップリンでもある。

◆ネット上で命名された“イマジナリー優三”

 そんな優三が戦病死と記された紙切れ1枚で片付けられていいはずがない。大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合、2019年)でも妻子を残して戦死する出陣学徒を演じている仲野太賀。

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