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朝ドラ『虎に翼』栄養失調死した花岡の“やけに胸に刺さる表情”…絵画のような美しい名場面も振り返る

女子SPA! / 2024年6月21日 8時46分

「進めばどんどん 増えていく」や「“ありがとう”の言葉で 伝え切れないよね だからいつか届くまで」という歌詞には感謝を口にすることの重みと言葉だけでは済ませない態度が示されている。

 それだけに岩田が花岡役を通じて言う「ありがとう」もやっぱり特別な響きをともなってくる。寅子への感謝を口にしたのは、第49回だけではない。第7週第32回で、裁判官の試験に合格した花岡とそれを祝福する寅子がレストランで食事をする場面。

 合格の報告を電話で伝える直前の場面でもとにかく花岡は嬉しそうだった(受話器を耳にあてる表情が息を呑む素晴らしさ!)。地元・佐賀まで伴侶として寅子に連れ添ってもらいたい。そう思いながら、寅子のキャリアを邪魔できないというジレンマ。結局レストランでの花岡は煮えきらず、寅子に愛を伝えられない。

◆ビタースイートに尾を引く場面

 帰り道、花岡は「駅まで送って行こうか?」とさりげなく聞くが、寅子は事務所に寄っていくと言う。もし駅まで送っていけたら、花岡と寅子は結婚しただろうか? そんなたらればを持ち出すまでもなく、何も言い出せなかった花岡の心境がただただビタースイートに尾を引く。

 何となく気にしているのか、していないのか、寅子が「お互い頑張りましょうね」と手を差し出す。花岡はためらいがちに右手で握り、「ありがとな、猪爪」と返す。そして歩き去る。その背中に向かって寅子が「またね、身体に気をつけてね」と言う。

 花岡は何も言わず、さっきまで寅子の手を握っていた右手をあげてあばよという感じ。ふたりを写す引きの画面(構図)が完璧だ。中景には街頭と噴水。花岡の右手。その振りを見て、イタリアルネサンスの画家ボッティチェリが振り付けたかのような美しさを感じた。静かなようでその実ドラマティックな西洋絵画的な物語がそこにはあったからだ。

◆画面を絵画に変えてしまう人

 あぁ、そうだ岩ちゃんが『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ、2023年)で不倫夫・新名誠を演じたとき、不倫相手の主人公・吉野みち(奈緒)に砂時計をプレゼントする場面(第4話)があったが、あの砂時計もやたら絵画的な小道具に写っていた。

 岩田剛典とはテレビドラマのワンショットを絵画に変えてしまう人でもある。『虎に翼』の場面をさらにさかのぼってみる。第6週第30回、女性初の弁護士になった寅子に花束を渡す場面。

 後ろ手に持った花束をパッと差し出す。第32回と時間帯は違い昼。でも噴水を背景にするふたりのツーショットは同じ。次のカットで花岡のアップが抜かれる。その瞬間の岩田の素晴らしい表情ったらない。

『プロミス・シンデレラ』(TBS、2021年)や『あなたがしてくれなくても』など、常に見送る側の人を演じてきた岩田が、『虎に翼』で見送られ、追想される側に初めてなったことを考えると、ところどころ青みがかった晴れやかな曇天の下、寅子を心から祝福するあの表情が、本作の物語を底から支えていたんだと思いたくなる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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