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幼い娘3人を殺した29歳母親は“責任感が強く真面目”…「子殺しをする親」の多くが陥る心理状態とは|ルポライター・杉山春さんに聞く

女子SPA! / 2024年7月24日 8時45分

「こうした遠矢被告に起こった変化は、過去のケースとも関連性があります。たとえば2010年に起きた大阪二児置き去り死事件の母親は、専業主婦時代は行政の子育て支援プログラムをすべて利用するなど、“良き母親”であろうとしていました。しかし、自らの借金と不倫が原因となり、当時の夫と離婚。その離婚を決める家族会議の際に『借金はしっかり返す』『家族には甘えません』『しっかり働きます』という内容の誓約書を書かされました。これによって彼女は、22歳で幼い2児を抱えるシングルマザーとして、家族から養育費をもらえない状況になったにもかかわらず、児童扶養手当や子ども手当を受給しようとはしませんでした。

人間は追い込まれると、外からの情報や他者の意見を排除し、これまでに持っていた価値観にさらに縋るようになります。今回の愛知の事件も大阪の事件も『母親とはこうあるべき』『妻とはこうあるべき』のような価値観に過剰なまでに身を沿わそうとして、力尽きてしまったように見えます」

◆“自分の子育ての基準”を選びにくい現代

 事件前の遠矢被告については近隣住民の「(子ども)1人手を繋いで、いつも抱っこひもで。本当に両サイドに子ども、抱っこひもにも子どもみたいな状態で。子ども3人を『ワンオペ』ってなると、大変だと思うから」という証言も報道されています(FNNプライムオンラインより)。

 忙しい毎日の中で育児の仕方に思い悩み、家事・育児について連日にわたってインターネット上で調べ続けるなか、被告は「私が母親でいいんだろうか」と自責していたことも明らかになっています。

「これは1970年代の記事ですが、ある子どもの虐待死事件を取り上げた月刊誌に『その家には、野菜を洗うタワシと鍋を洗うタワシと食器を洗うタワシがそれぞれ色違いにぶら下がっていた』ということが書かれていました。それくらいルールに縛られないと怖くて仕方なかった親の状況が、この文章からも伝えられます。

 今は当時と比べると『親だってラクしてもいい』という考え方も広まっていますが、一方でSNS等を通じて『子育てとはこうすべき』というさまざまな内容を親たちが目にするようにもなり、その根拠も示されなくなっています。自分の基準というものを自分の頭で考えて選びにくい時代になってきているような気がします」

◆「自分が何かを感じることは許されない」という意識

 さらに、時代とともに変化する生活様式と、前時代的な価値観のギャップに苦しむ親も多いといいます。

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