林修先生の番組に米津玄師、初のバラエティ出演。歌詞の「作者の意図」追求ばかりに違和感
女子SPA! / 2024年9月5日 8時46分
けれども、それはあくまでも音楽を構成するパーツのひとつとしての話です。メロディ、リズム、ハーモニー、サウンドと相互に機能し合って、言葉が発する音やもともとの語義が多面的な味わいを持つようになる。それが曲の中で歌詞を楽しむことであるはずなのですね。
こういうことを言うと、“『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系 旧『関ジャム 完全燃SHOW』)のような番組を知らないのか”と言われるかもしれません。確かに現役のミュージシャンによる名曲の構造分析は大変勉強になります。けれども、あれも技術を必要とする専門的な分解の作業であって、現代文的な読解のテクニックで歌詞の意味を考察する作業と大差なくなってしまいます。
つまり、言葉と音楽が分離した状態でしか曲に接することができなくなっている。これが、いまの日本の音楽受容のおける大きな問題なのではないかと思うのです。
◆“分かる”“理解できる”を追求しすぎの世情
では、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?
そこには、“分かる”、“理解できる”という成果を過度に追求する世情が影響しているように感じます。
異質なもの、自分の理解を超えたものへの興味、関心、許容度が大幅に低下している。何にでも解答や解決法がなければ心配になってしまうので、とりあえず着地点を作って、自分の中で処理できたことにしなければならないという強迫観念ですね。
簡単に言えば、難しいことに耐えられなくなっているのです。
だから、歌詞には必ず隠された作者の意図があり、感動的なメロディやコード進行には計算された工夫があるということになってしまう。
「Lemon」の歌詞で“米津の言いたいこと”にクローズアップした林先生も、この病から逃れられなかったと言えるでしょう。
それを改めて浮き彫りにしたことこそが、今回の対談の大きな価値なのです。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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