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朝ドラ『虎に翼』68歳女優が初登場から漂わせていた“異物感”の正体。徐々に水を得た魚のように

女子SPA! / 2024年9月8日 8時44分

 寅子と優未が加わったことで星家の食卓が活気づくが、それによってこの家族の静かな不和が逆に浮き上がる。主に朋一のちょっとした視線の微動などで食卓の気まずい雰囲気が表現されるが、食卓の端の席で優しく微笑んでいる百合が実は一番エキセントリックな存在である可能性は否定しきれないだろう。

「おばあちゃん」と呼んですぐに懐いた優未から褒め言葉をいろいろもらって嬉しそうな百合だけど、ただ優しげな老女ではないと思う。どうも百合の存在の微妙な不安定さみたいなもののすれすれ、ぎりぎりを狙う余が意識的に演技してる気がするんだよなぁ。

◆異質さを煎じた異物感

 余のようなベテラン俳優が配置されることで星家の物語は家族ドラマとしてぐっと滋味深さを持っている。本作全体で考えるとこれまでには法学者・穂高重親役の小林薫が似たような役回りを担っていた。

 今でこそ人々の尊敬を集める判事となった寅子だが、そもそも彼女を法曹界に導いたのが穂高だった。社会のあちこちに散見される不条理に対して「はて?」の疑問符を投じ続け、精神的にも社会的にもたくましくなっていく寅子の成長を見守った恩師だ。

 その一方、戦後の混乱期の中でくじけそうになった寅子を変にかばおうとして、逆に彼女の憤激を買い続けた人でもある。穂高と再開して顔を合わせては寅子が怒り、異議申し立て。

 次は挽回しようと努力するのにまた怒りを買ってしまい空回り。老齢の穂高がだんだんいたたまれなくなったものだが、なんだかいつまでたってもレギュラー化せずに小林がふわふわしていて、素晴らしく軽妙な名演だった。

 寅子とは唯一といっていいくらい意見が一致しない異質なイレギュラー的存在として位置づけられたともいえる。小林薫の均質な演技が穂高のそうした異質さを際立たせたのだが、余の場合はこの異質さをもっと煎じた異物感になっている。

◆“シチュー廃棄事件”が勃発

 常に優しげに微笑む百合の表情が初めて劇的に変化する場面がある。第21週第102回、再び寅子と優未を交えての昼食。航一からのプロポーズを受けて佐田姓から星姓に変わることを悩んでいる寅子をおもんぱかった航一が、食事の手をとめて改まる。

 彼は百合と子どもたちの方を向いて「結婚したら、僕が佐田姓になるって」と言うのだが、途端に表情を強ばらせた百合が目をむく。「わたくしは絶対に認めませんよ」と高ぶる百合の変化を見て、余がうっすら漂わせていた異物感ある狙いがここで瞬間的に開示される。

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