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祝30歳!山﨑賢人がラブコメ映画を救う“実写化王子”から唯一無二のスタイルを確立するまで

女子SPA! / 2024年9月7日 8時45分

 熱を出して寝込んだソファ上の黒王子こと佐田恭也(山﨑賢人)にやわらかに当たる照明の絶妙な加減は、当代随一のスター俳優を照らす証明みたいになっていた。

◆黒王子役が演技のフォーマットを規定

『ストロボ・エッジ』(2015年)が前年に公開されている廣木隆一監督が演出した『オオカミ少女と黒王子』は、ラブコメ漫画を原作とした、いわゆる“きらきら映画”の金字塔的名作であるばかりか、黒王子役の山崎以降、日本映画界の演技フォーマットが規定されたといっても過言ではない。

 それ以前の出演作品としては、剛力彩芽と共演した『L・DK』(2014年)で寝床の間に仕切りをもうける『或る夜の出来事』(1934年)へのオマージュ場面があり、同作のクラーク・ゲーブルの佇まいを無意識のうちに取り込んだ山﨑が色っぽさを放っていた。

 きらきら映画ではまだ主演クラスではなかった二番手時代の『今日、恋をはじめます』(2012年)でさえ、圧倒的若々しさの中にすでにスター俳優の才能にめぐまれた気概を感じさせた。

 2010年のデビュー以来、一貫した山﨑賢人のスタイルは現在でも変わっていない。大ヒットシリーズ『キングダム 大将軍の帰還』(2024年)の番宣で出演した『日曜日の初耳学』(TBS、4月15日放送)では、MCの林修から「日本のトム・クルーズ」と言われたが、これは冗談ではなくて、山﨑賢人イズム、その唯一無二のスタイルが、世界的スターであり続けるトム・クルーズと同系統の不変的スタイルと比較されるまでになった事実を物語っていた。

◆アンナチュラルな俳優

 そうした山﨑賢人フォーマットの演技に対して、これまでメディアは口を揃えて「ナチュラル」だと形容してきた。うん、確かに山﨑の演技は自然体そのもので、ナチュラルだなと感じる。日本一のナチュラル俳優だと新たな異名を付与することもできるかもしれない。

 でも、演技がナチュラルというのは実はとても矛盾した言い方なのである。だって演技というのはごっこ遊びの延長みたいなもので、日常レベルで考えると、ナチュラルどころか不自然極まりない行為だから。

 だから本来不自然なはずの演技をナチュラルに見せてしまうアンナチュラルな俳優と形容したほうがずっと正しい。このあたりをきちんと精査しておかないと、山﨑賢人の真価は問えない。

◆舞台挨拶前の山﨑賢人と遭遇

 彼のことを同時代人としてリアルタイムで追ってきた者としては、こうした不確かな評言をどうしても見過ごせない。2024年は、30歳の節目であり、デビュー15周年というタイミングなのだから。

 実は今年の年明け早々、『ゴールデンカムイ』(2024年)の完成披露舞台の会場で、舞台挨拶前の山﨑とまさかの遭遇を果たした。偶然のミラクルだったが、山﨑賢人本人は誰とでも気さくに会話を楽しもうとする人懐こい人物だと感じた。

 人懐こいばかりか、やり取りがほんとナチュラルなのだ。同時にあの黒目勝ちな美しい瞳に見つめられると、自然と吸い込まれそうになる。二言かもう少しくらい交わしているだけで誰でも惚れるより他ない。30歳の誕生日を迎えた山﨑賢人は、そういう魔力をさらにどうやって使いこなすのだろう?

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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