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「おまえは醜い」「消えろ」…薬物依存の母に否定され続けた私が、自己肯定感を取り戻すまで/おおたわ史絵

女子SPA! / 2024年9月12日 8時45分

これを言うと驚かれますが、医師免許を取ってからも「頭が悪い」という劣等感は消えていません。50歳を過ぎてから総合内科専門医の試験に挑戦したのも、そんな劣等感を少しでも払拭したかったからかもしれません。

◆うつ病で半年寝たきりに。でも人は回復できる

――最近、「自己肯定感を上げる方法」的な本が多く出版されています。一方で、肯定感は子供のときに育まれるもので、大人になってから上げるのは難しいという意見もありますよね。

おおたわ:私は、肯定感は上げられると思います。人間にはレジリエンス(回復力)があると思うんです。

精神科の先生が言っていたのですが、うつ病になってから回復した人は、以前より人格がワンランクアップすることが多いと。これもレジリエンスの例ですよね。

私も、研修医の頃に、うつ状態で半年ぐらい寝たきりになった経験があります。当時、研修医の働く環境は劣悪で、休みも寝る時間もろくにありませんでした。必死に研修期間を乗り切った結果、体も精神も疲れきってしまって、決まっていた就職を辞退せざるを得なくなりました。

「死のうかな」くらいしか考えられなかった状態から半年ぐらい経って、また社会に戻って生きていかなくてはと思い始めたときに、このまま医師の世界に戻ったら、また自分を追い込んで破綻するのではないかという恐怖がありました。医師としての自分とは別に、もうひとつ何か自分を吐露できる場所が必要だと思って、自分の気持ちを文章に書き始めたんです。

自分がダメになってしまうという焦りが異様なパワーを生んだんでしょうね。書いた文章を見てもらえないかと、いろんな雑誌に載っている編集部の電話番号に電話をかけまくりました。担当の方が会ってくださって、面白いねと、「週刊朝日」にショートコラムが掲載されることになったんですよ。それが、本を書いたりメディアに出るようになったすべての始まりです。

布団をかぶって寝ていることしかできない最悪な半年間だったけれど、あれがあったから今があると思っています。うつ状態を経験してからのほうが、できることが増えたし、アプローチ方法が変わったし、自分に対する感覚が変わりましたね。

◆結局、人との関わりが肯定感を上げてくれる

おおたわ:わたしにとっては結婚も、肯定感を上げてくれた出来事のひとつです。この世の中でたった1人でも自分を認めてくれる人がいる、そんな風に思えた。

今でも覚えていますが、中学生の頃、友達と「ねえ、もしも神様がいて、たったひとつだけ願いを叶えてくれるって言ったら何を願う?」という話をしてたんですね。私は一瞬で、こう答えました。「心から安心できる場所がひとつ欲しい」って。

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