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朝ドラ『虎に翼』39歳俳優の“一瞬の手の動き”がスゴい。駆け足な展開でも決してブレない演技

女子SPA! / 2024年9月14日 8時46分

 寅子がその位置から「共亜事件のあと、私桂場さんに法とは何かというお話をしたんです」と言い、等一郎が「あぁ、君が法律は綺麗な水。水源のようなものと言っていたな」と返す。

 すると寅子が「嬉しい。覚えていてくださったんですね」と嬉しそうに近づいた瞬間、等一郎が右斜上へむにゅっと唇を変形させる。ヘの字でもハの字でもない、この新たなバリエーションの変形が寅子との再会で引き出されたことの感動たるや。

 本題に入り、寅子への異動を命じた等一郎が、右手の甲を付き出して、しっしとジェスチャーする。このしっしが、しっし(1、2)、続いてしっしっし(1、2、3)と拍を打つ。何ともリズミカルで音楽的な一面をのぞかせる。

 そのあと、カメラはふたりをサイドから捉え、退出する寅子を下手から上手にフォローする。このフォローするカメラワークが、等一郎のしっしの動きの延長みたいな滑らかさなのだが、本作でもっとも美しいカメラワークだなと感じた。

◆そろりと動かす手の運び方

 同じような室内構図の名場面が他にもある。第22週第108回。後輩裁判官・秋山真理子(渡邉美穂)から妊娠したことを相談された寅子が、女性法曹の労働環境についての意見書を等一郎に提出する。それを読んだ等一郎は「君はいつになったら学ぶんだ」と一喝。でもそんなことで引き下がる寅子じゃない。

「では、別の道を探します」と毅然と答える寅子に対して「ん?」と声をもらした等一郎が、意見書を持った右手を少しの間静止する。ここでの構図もふたりはサイドから捉えられている。等一郎はその手をどうしたか。

 そろりと動かすのだ。退室する寅子の方へそろり。そこからまた元の位置へそろり。何だこれ、もはや能楽師の舞の一部みたいな動きというか、運び方じゃないか。もしかして等一郎の無表情は、能面として機能していたのか? 松山のこのそろりには、さすがに恐れ入った(!)。

◆テレビの中の等一郎

 誰よりも頑なで、動かない岩のような存在感を保っている。しかもそれが演技レベルで硬直することはなく、どこまでも映像的な柔軟さを伴う。こんな手品みたいな不思議ができてしまう。

 するとどうだろう。第24週第116回、ついに最高裁判所長官にのぼり詰めた等一郎が、テレビカメラに囲まれる。向けられたマイクに「裁判官は激流の中に毅然と立つ巌のような姿勢で」と就任後の意志も変わらずに固い等一郎。

 その映像を星家の食卓からテレビ越しに見つめる寅子は「よっ!」と誇らしげに拍手する。所長室で少し距離を置いて向かい合っていた寅子が、今度はテレビの中の等一郎を見つめる。

 見る、見られるの距離の描き方が物理的に拡大される面白い場面だが、この物理的な距離が寅子との心の距離になってしまうのか。

 本作はクライマックスへ向けて、戦後の課題に対して現代史の授業みたいなスピード感で速度を早めている。どこまでも映像的な松山が演じる桂場等一郎がテレビの中の人となった今、桂場長官の肩に戦後の課題が重くのしかかるかもしれない。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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