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『セクシー田中さん』“未完”の最終巻、驚きの「編集後記」に大興奮! 哀しみと悔しさは消えないけれど

女子SPA! / 2024年10月16日 8時46分

◆優しい視点が心に“ぶっささる”最終巻の「名ゼリフ」

ひとりでも多くの人に本編を読んでほしいのでネタバレは避けますが、田中さんの会社の同僚・百瀬や、三好の友人たちとの会話から、“不倫”に対する多様な価値観が浮き彫りになったことが、筆者には印象的でした。

なかでも、次のセリフは、決して“不倫”に関してだけでなく、自分自身の在り方として大切にしたいと思うものでした。

「…不安になると 世間の「常識」で

 つい 相手を 裁こうと してしまう

 今 目の前に いてくれる相手を

 しっかり 知るほうが先なのに」

芦原先生がどれだけ優しく世界を観ていたのかを象徴しているようなセリフ。取り繕われた正論ではない、強くて優しくて美しい言葉が、心にぶっささりました。

◆「編集後記」に綴られた“この先の物語”に驚きと興奮

15幕は「えっ?! どういうこと?」というラスト。連載漫画で次回への“引き”が最後にくるのは必然なので、こればかりは仕方ありません。

が、芦原先生が先々まで練られていた構想の一部――物語の“この先”が、編集後記として文章で綴られています。

芦原先生のご家族のご了承を得て掲載されたというその貴重な文章には、「なるほど、そうくるのか!」「まさか、そんな展開に?!」「やっぱり朱里のキャラ最高じゃん!」「田中さん、がんばれ~!!!」などなど、何話分も読んだような驚きと興奮を覚えました。

もちろん「芦原先生の絵で、構成で、セリフで、物語の続きが読みたかった」。その想いはどこまでもぬぐい切れないけれど、芦原先生のご家族と編集部の方々が届けてくれた“この先”は、希望に満ち溢れているように感じました。

◆同時収録の短編も、どこまでも芦原作品らしくて涙

2016年に『月刊flowers11月号』(小学館刊)に掲載された読み切り作品『winter fool』も収録されています。

年末に故郷へと帰ってきた主人公・あづさが、とある不思議な男に出会う物語。雪に囲まれた故郷で繰り広げられるストーリーにも、芦原先生らしいハッとさせられるセリフと、いい意味で王道ではない展開が用意されています。

心にポッと灯りがともるようなラストの光景には、芦原先生のことを想わずにはいられない美しさと切なさがあり、涙を止めることができませんでした。

◆ファンとして、哀しみと悔しさはなくならないけれど

『セクシー田中さん』の続きが、もう二度と読めないこと。いつか生まれるはずだった芦原先生の新たな作品に出会えないこと。ファンとして、その哀しみと悔しさは決してなくならないでしょう。それでも、芦原先生が紡がれてきた言葉は、物語は、私たちの心に残っています。

曲がった背筋を、何度も、何度でも伸ばして今日を生きていこう。改めて、そう思わされる『セクシー田中さん』8巻でした。芦原妃名子先生。素敵な作品を、ありがとうございました。

<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>

【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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