「笑ってる出演者にも引く」批判殺到の『水ダウ』悪質いじめ企画…“コンプラ以前の問題”に広がる嫌悪感
女子SPA! / 2024年11月6日 8時47分
水責めは、こうした文脈で語られるものなのです。
こんな企画を面白おかしく見ている風景は、海外から見たらとんでもなく異様に映るでしょう。それは演出のクオリティ云々ではなく、そもそも人を笑わせる手段として思い浮かぶはずのものではないからです。
そうした国際的な理解や前提について、あまりにも無知なことが問題なのです。
◆坂本龍一氏が指摘したダウンタウン的な笑いの問題
次に、倫理的な面。
ベストセラー小説『永遠の仔』で知られる作家の天童荒太と坂本龍一の対談本『少年とアフリカ』(文藝春秋 2001)の中で、ダウンタウン的な笑いが映し出す社会の問題を、坂本氏はこう指摘しています。
<ここ二、三年のダウンタウンの芸って、年下の芸人をいたぶってるだけで、一言で言うと、「どんくさいやつをいじめてなにが悪いの」ってことでしょ?>(p.118)
と、開き直りを正当化する芸風の危うさを論じ、さらなる過激化を懸念します。
<「いじめてなにが悪い」から「人を殺してなにが悪い」に行き着くのは早い。>(p.120)
なぜなら、ひとたび「いじめてなにが悪い」という刺激に慣れてしまい笑えなくなれば、人はそれ以上のものを求めるようになるからです。
いじめから殺人への移行は、決して論理の飛躍などではなく、必然的にやってくる破局である。パンドラの箱をダウンタウンは開けてしまったのではないかと、坂本氏は言っているのです。
◆“いじめ”でスタジオが笑う水責め企画
水責め企画も、この延長にあることは明らかでしょう。対談から20年以上経った今も、同じ様な“いじめ”でスタジオが笑う。何も変わっていないのですね。
議論を呼ぶ企画で話題の『水曜日のダウンタウン』ですが、今回ばかりはとうとう一線を越えてしまったように思います。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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