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救いようのない最低夫がしっくりきてしまう40歳俳優の圧倒的“ふり幅”。フジ新ドラマが示したのは

女子SPA! / 2024年11月13日 15時45分

 だって田中圭は少し前のクールでは、彼の代名詞ともなった、はるたんこと、春田創一を演じていた人である。はるたん旋風を巻き起こした大ヒットドラマシリーズ『おっさんずラブ』(テレビ朝日、2016年)の主人公・春田創一の愛されキャラったらもうね。国民的に愛でるというか、宇宙的な次元ですらある。

 もちろん俳優はひとつの作品のひとつの役だけを演じるわけではない。作品ごとに前作とは180度異なる役柄をやることはよくある。あのはるたん役の快活なイメージから、こんなふり幅の最低夫を演じてしまえる。いったい、どうやったら次の役へ気持ちをもっていけるのか。俳優とは実に不可思議な存在である。

◆はるたん役との共通点

 他作品での役柄自体を安易にもちこむべきではないけれど、それでも宏樹役にもほんの一瞬、はるたん的な快活さが弾む場面がある。宏樹が寝たあと、ひとりソファに座って図鑑のページをめくる美羽による回想。

 結婚して5年。初めの頃は和やかな夫婦関係だった。帰宅した美羽がわっと泣きだしたのを見た宏樹も声をあげて一緒になって明るく泣く。顔をくしゃくしゃにするその表情や感情のアウトプットには、はるたん的なものが感じられる。昔は快活で人懐っこい人だったのである。

 さらに細かい共通点をひとつあげるなら、陰湿な夫に変貌してからの宏樹の肩に注目してみる。美羽が会社まで封筒を届けた場面で、宏樹が着るスーツの右肩の端っこあたりがくぼんでいる。田中圭がスーツを着るとこうして右肩がなぜだかくぼむ(スーツのフィット感の問題でしかないのだが)。『おっさんずラブ』の春田はあえてくぼみを作っているのかというくらいくぼんでいた。

 宏樹と春田はまったくベクトルが逆方向のキャラクターではあるのだが、このくぼみが同一人物(田中圭)が演じていることを証明するスポットみたいな役割になっていると思う。

◆「明日があるさ」的な俳優

 作品間の垣根をこえて、ぼくらが田中圭を語るとき、こうした微細な類似がたくさん見つかる。ある種、隠れミッキー的な側面がある。その類似の読解は人それぞれではあるけど、物語レベルをこえて類似を見つける豊かな楽しみを与えてくれる人なのである。

 今まで一番驚いた類似のキーワードは、「Tomorrow」。2018年公開、ジョン・ウー監督の『マンハント』に出演した田中は、苦悩する研究者・北川正樹役を少ない回想場面の中で演じた。ラストに「A Better Tomorrow」という重要なセリフが用意されている(これはウー監督の代表作である『男たちの挽歌』(1986年)の英語タイトルへのセルフオマージュ)。

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