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えっ嘘だ…37歳俳優が「地上波連ドラ単独初主演」という事実に驚き。ここにきての“キャラ変”に注目

女子SPA! / 2024年11月27日 15時45分

『9ボーダー』でもギターを背負ってなぞめいた雰囲気を醸す松下が、どこからか歩いてくるだけで、その足跡の分だけ物語が生まれた。同作で松下が演じたコウタロウの歩調が、物語自体のストーリーとは別次元で、物語る意志みたいなものを感じさせた。

 その意志によって、ただ歩くという動作を反復させ、次の作品へ、うまくシームレスにつなげているところがある。松下洸平は作品間を軽々と超える。ぼくら視聴者も松下の過去作を振り返っては、その足跡がどんどん一本線で続く松下洸平その人の物語を、その都度加筆することになる。

◆松下洸平の“愛の物語”

 毎年時間をかけて出演作を重ねる。作品間で連綿とつむがれる松下洸平物語をぼくらはリアルタイムで体験してきた。そして今、単独初主演作が新たな物語を語り始めている。今さら過去作を振り返ってみて気づく。あぁ、意外と単独初主演だったんだなと。

 まるでひとつの長編作品のように結ばれる松下の作品歴からは、出演作品だけでなく、歌い手としてのソロ楽曲にも物語性を感じずにはいられない。2021年にリリースしたミニアルバム『あなた』のリード曲「あなた」のサビに傾聴してみる。

「あなたが好きで 好きで 好きで 好きで 好きで」と「好き」が実に5度も繰り返されている。この歌詞のリフレインは、サビ終わりの「Lで始まる 終わらない物語」へと見事にフレーズが連動している。「あなた」を歌う松下洸平の“愛の物語”がやさしげにぼくらをつつみこむ。

◆地肌そのもののような演技

 アサヒ生ビールのコマーシャル「出張とおつかれ生です。」篇でも、居酒屋のカウンター席に座った松下が、一杯目のビールを口にして「はぁぁぁ~」とやさしい息を吐く。こんなさりげない音の響きにも、ビールCMの宣伝を超えて物語性を放出できる人。シンガーソングライターでもある松下洸平その人が、ひとつのリリックになっている。

 では、「子どもだからなんだ」と子どもたちに高圧的な態度をとってばかりいる『放課後カルテ』の牧野峻役に、これまで同様にやさしい物語性を読み取ることはできるのだろうか。ビールCMのようにさりげない音に注目するなら、「おはよう」など日常的な言葉を発するときの峻は、なぜかゴニョッと早口で語尾までちゃんと発音しない。

 その代わり彼は猫背の後ろ姿を印象付けながら、前のめりですたすた歩く。歩くだけで物語を生みだす俳優である松下の語尾に豊かなあいまいさを感じながら、この猫背から静かな語りをキャッチできる。

 これまでの目に見えて上質な天然素材を一枚一枚丁寧に脱ぎながら、よりシルキーな地肌そのもののような演技が徐々に見えてくるのだ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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