朝ドラ『おむすび』50代俳優2人の「亡き父」は昭和の名優。父子で不思議に共鳴するシーンを発見
女子SPA! / 2024年12月7日 8時46分
『おむすび』©︎NHK
橋本環奈主演の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)で共演する北村有起哉と緒形直人が、ほんと滋味深い。
出演場面が不思議と映画的に感じられる。不意に思い出すのは、それぞれ昭和の名優だった彼らの父たちによる共演映画である。
イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、時代を超えて類似し、共鳴する俳優父子の共演を読み解く。
◆なんだかやけに映画的な場面
『おむすび』第8週第37回、福岡の糸島から神戸に移り住んだ米田一家が、昔なじみの行きつけだという中華料理屋で夕食をとる。懐かしの味を大いに堪能した帰り道場面。
商店街のある店の前で、主人公・米田結(橋本環奈)の父である米田聖人(北村有起哉)がふと足をとめる。震災を機に神戸を離れた米田一家が、因縁を残してきた渡辺孝雄(緒形直人)が営む靴店である。
店前で立ちどまる聖人をカメラは薄暗い店内から捉える。扉のガラス枠に足をとめるタイミングといい、枠内にすっぽりおさまる感じといい、なんだかやけに映画的な場面だなと思った。
◆北村有起哉と緒形直人の共演
聖人は、少しの間、店内をじっと見つめる。店奥では孝雄がぽつんとひとりいて、電気を消す。結の姉・米田歩(仲里依紗)の中学生時代の親友であった娘を震災で失って以来、彼は商店街の面々とも付き合おうとせず、心を閉ざしている。
結の祖父・米田永吉(松平健)に連れられ、糸島へ越した米田一家のことを裏切り者だとさえ思っている。商店街で理容店を営んでいた聖人は、ぎりぎりまで復興を手伝っていたが、糸島で家業の農作業に集中するようになっても気持ちは常に神戸に向いていた。
「なべさん」と親しく呼んでいた孝雄との関係性をずっと気にしている。神戸に再度移住して、靴店の前を通りかかるこの神戸編の聖人は、過去を解きほぐす決意でいる。そのあたりの因縁のやり取りは、北村有起哉と緒形直人の共演だからこそ、慎ましく、豊かに演じられる。
◆父親は昭和の名優同士
ここで確認しておきたいのは、『おむすび』で北村有起哉と緒形直人が共演する41年前、それぞれの父たちが映画の世界で共演していた事実だ。北村有起哉の父・北村和夫は、杉村春子の相手役として舞台『欲望という名の電車』でスタンレー役を演じ、1955年に文学座の座員になった。映画界では、今村昌平監督作品の常連でもあった昭和の名優。
一方、緒形直人の父は、野村芳太郎監督の『鬼畜』(1978年)やカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した今村監督の『楢山節考』(1983年)など、骨太でありながらどこか表層的にもつやっぽい演技を魅力とした緒形拳。昭和の名優同士の共演は、それだけで映画が豊かだった時代を今に伝えてくれる。
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