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想像しただけでどうにかなりそう…34歳LDH俳優の「男と男の官能のダンス」が大期待なワケ

女子SPA! / 2024年12月19日 8時46分

 優美とか官能とか、とにかく抽象的な形容でどんどん彩られていく本作だが、レハールのオペラ曲に合わせて踊る町田が画面上で躍動することで、それらが具体化されなければ始まらない。

 町田が演じる杉木信也には、「至高のダンサー」や「帝王」など、いくつか異名がある。とっておきが「ワルツ王」。ワルツを得意とする世界的競技ダンサーに対するこの上ない称号を意味している。

 クラシック音楽の世界にもかつて「ワルツ王」がいた。レハールより前の時代に活躍したヨハン・シュトラウス2世である。「美しく青きドナウ」など、誰もが知るワルツ曲を書いた作曲家である。

 シュトラウス2世のすごいところは、それまでの踊るためのワルツ曲をコンサートなどの上演でも耳にたえうるものにしたこと。本家「ワルツ王」の偉業にならうなら、杉木役の町田啓太には、単に華麗なだけでなく、「ワルツ王」として見る者の心をとろかすだけの求心力と説得力が絶対条件になる。

◆手だけで全身の美麗を伝えてしまう才能

 我らが町田啓太ならば、まったく問題ない。彼の存在自体がすでに「ワルツ王」の条件を満たしている。その上であとはどう杉木役の優美さを細部にまでとろかして行き渡らせるかである。

 上述したように、冒頭でワルツを踊る場面が本作の優美さの起点になると思われるのだが、ワルツを踊る町田啓太の寄りと引きの絵が交互に切り替わるたびに、彼の首すじ、指先、腰元、あらゆるところからあふれる色っぽさが、つややかに可視化されるんじゃないか。想像しただけでとろける。

 優美を具現化したような町田は、身体のパーツごとに神経をはりめぐらせて演じられる人である。筆者の中では特に忘れがたい『スミカスミレ』で町田が演じた真白勇征役が、第1話で最初に印象づけたのは手だった。バス車内の場面で、顔や全身が写らずとも、手だけで全身の美麗を伝えてしまう才能。『10DANCE』ではこうした細部をさらに練磨して丁寧に重ねることが重要になるはずだ。

◆新たな町田啓太スタンダード

 今年の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)では、才色兼備の平安貴族・藤原公任を演じている。中期を代表する歌人である公任は、今でたとえるならベストヒット歌謡アルバムみたいな『和漢朗詠集』を編纂したことで知られ、音楽的感性に秀でていた。同作でも竜笛を吹く場面がある。

 構えやたたずまいはもちろん、ここでも細部まで心を配り、笛を操る指先に平安の才人の豊かな情感を宿らせていた。漢詩、和歌、管弦に優れた才能(三船の才)をもつ公任をミュージカルに体現している意味では、「ワルツ王」の称号をもつ世界的競技ダンサーと役作りのアプローチは似ているかもしれない。

 赤楚衛二との共演ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京、2020年)でBLドラマの金字塔を打ち立てているから、BLマナーはばっちりだろうけれど、原作に描かれた杉木の「にこ」という笑顔をどうアウトプットするのかも気になる。

 町田は、これまでのほぼ全作で署名的な爽やかスマイルを見せてきた。この署名性が本作ではどう複雑に表現されるのか。その意味でこれは新たな町田啓太スタンダード作品になるんだろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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