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75歳の女性が恋愛沙汰で自殺未遂。熟年が身を焦がす恋と性の狭間とは

女子SPA! / 2025年2月7日 15時47分

やがてお相手の奥様に関係がバレてしまい、別れがおとずれます。そこでサヨ子さんは自殺を図るのですが、これがなんと狂言自殺。とはいえ、動機はお相手への激しい恋情とくれば、同情の余地はあまりあるほど。滑稽(こっけい)ながらも純粋な生きざま、と感じ入るのですが…。

◆性愛に投影する命のきらめき

ところが、サヨ子さんが求めていたのは、恋愛よりも性愛、もっといえば己の欲する快楽でした。サヨ子さんの姉がサヨ子さんの部屋で発見したのは、派手で卑猥な下着の数々。通常のショップでは販売していない、マニア向けの下着です。

恋愛も性愛も、セックスへの探求も、人それぞれで、法にふれないかぎり誰にも咎(とが)める資格はないでしょう。70代だろうが80代だろうが、「そんな風に見えなかった」という外野の声などなんのその、自己責任で堪能していいはずです。

が、狂言とはいえ自殺未遂にまで発展、となると脅威です。

同時に、そこまで貪欲になれるサヨ子さんに感動すら覚えます。お相手との相性が最高によかったのか、セックスへの可能性をもっと深めてみたかったのか、疑問ではありますが、サヨ子さんもまさに、いつ死んでもいい、と性と生命をまっとうしたかったのではないでしょうか。

◆羞恥とはいったい何なのか

本書を読むと、前述した固定観念がばかばかしくなってきます。人生においての羞恥とは、過激で赤裸々なセックスではなく、自分に嘘をつき続けて生きること、あるいは嘘をついたまま死ぬことかもしれません。

一般的に、閉経後の女性は濡れにくくなる、挿入時に痛みを生じる、など性行為がスムーズにいかなくなる傾向があります。

しかし男性と異なり、体の構造上は生涯“現役”OKです。ホルモン補充療法やゼリーを用いれば、十分にクリアできます。そのせいか、70代、80代の女性が、かなりの年下男性と付き合う例も後を絶たないのでしょう。

亡くなった夫の戦友と月2回ほど睦(むつ)み合う92歳の女性、旦那さんの介護をしながらふたりのボーイフレンドと逢瀬を重ねる68歳の女性。

悩み相談という名の自慢なのか、マウント合戦なのか、工藤さんでなくとも、一読者としても頭を抱えてしまいます。ただ、本書に登場する女性達はみんな、自分に与えられた命を精一杯輝かせようと、懸命に生きているのです。

◆したたかな“女”という底力

この世に存在する「私」を見つめるためには、合わせ鏡になる誰かが必要になってきます。男性を愛するというよりは、自己愛のために男性を利用している、当人が意識しているのか無意識なのか、“女”という底力を感じます。そんなしたたかさも、私には美しく映りました。

子育て、結婚、家族。さまざまなしがらみから解放され、自由な時間を手に入れた女性達。熟れた翼を広げて飛び立つ姿は、私達に生きる気力を揺り起こしてくれるのです。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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