“筋肉博士”石井直方教授「突如がんの宣告。健康に自信のあった自分がなぜ」

週刊女性PRIME / 2017年12月25日 15時5分

東京大学大学院教授の石井直方さん

 これまでさまざまなトレーニングを自ら実践し、情報発信してきた東京大学大学院教授の石井直方さん。「筋肉博士」の異名をとる教授に、“人生後半の健康維持”についてうかがいました。

悪性リンパ腫のステージⅣで「末期がん」と判明

 これまで研究と並行して、40年以上も筋力トレーニングを続けてきました。かつてはボディビルの競技者として、国内外の数々の大会で入賞や優勝。60歳を過ぎても、大きな病気やケガに見舞われることもなく、仕事を中心に日々、生きてきました。

 食事も、食材レベルから気をつけて過ごしてきて、お米や野菜、果物を選ぶときは「無農薬」「有機」などを選んだり、食べ過ぎないようにしたり。

 健康には自信がありましたが、昨年、がんになりました。

「なんだか疲れやすい」「体調が変だ」という違和感はずっとあったんです。でも職場の健康診断も忙しくてなかなか行けず、そうこうするうちに太ってもいないのにお腹がふくらんできました。これはさすがにおかしいと思い、病院に。その時点で腹水が5リットルも溜(た)まっていたことがわかりました。原因を調べたところ、悪性リンパ腫のステージⅣで、「末期がん」と判明。

 これまでの人生、健診を受けても血圧や血糖の値は正常範囲内。ですから、がんのような命にかかわる病気になるとは、私にとっても家族にとっても「青天のへきれき」。そこから2か月半、入院して治療に専念しました。

 最後の1か月間は、再発を防ぐために無菌室に入り、「抗がん剤の超多量投与」という厳しい治療を受けました。

 多量の抗がん剤を打つため、免疫機能が一時的に消失するだけでなく、心不全などの副作用の危険性もありました。無事に終えたとき、新しい命をもらったなと思いました。

若い頃からためてきた体力、という貯金で治療を乗り越えて──

 当時、私は61歳。「体力がもつだろうか」という不安はありましたが、乗り切れました。調子がよいときは、無菌室にパソコンを持ち込んで「仕事をしたい」と思えるほど。体力、気力とも強く持ちこたえられていたのです。その後、骨髄移植を受けて無事に回復し、今は「元気に働くがん患者」です。

 ふりかえると、厳しい治療に耐えられたのは、鍛えてきたからなのかなと。体力があったからこそ気力もついてきて、前向きになれた。無菌室でみずから開発したスロトレをやっている患者も、そういないでしょうね(笑)。

 もちろん、仕事を再開したとはいえ、日常生活は180度変わりましたよ。

 もっとも気をつけるようにしたのは、睡眠時間を増やすことです。リンパ腫とわかるまでは、夜遅くまで仕事をして、帰宅後も夜中の2時、3時までパソコンに向かう……ということがよくありました。平日の睡眠時間は1日平均約5時間で、倦怠感(けんたいかん)とともに目覚めるという日々を繰り返していました。

 今は夜11時前には就寝。7時間は睡眠時間を保つようにしています。ストレスを遠ざけるよう、身体を休ませてリラックスするようにもなったし、まだ身体の抵抗力がついていないので、風邪をひかないように心がけたり。がんになる前よりも、はるかに健康的な生活。良質の睡眠をとっていることで、昔よりも疲れていない気がします。

 これまでの私は、あらゆる面で「過度に頑張りすぎること」が癖になっていたようにも思います。運動の専門家ですから、運動の大切さは十分わかっているのですが、その大前提として、健康的で規則正しい「生活習慣」が大切なんだと、お伝えしたいですね。無理をせず、まずは“足もとの暮らし”を見直し、そのうえで適度な運動を行うのがよいでしょう。

 おすすめは加齢で硬くなりやすい部分(体幹、太もも)のストレッチ。そこにプラスして、スクワットのような筋トレやウォーキングをすれば代謝や筋力がアップしやすくなります。

 年を重ねてからの運動は、とにかく“ゆっくり”動くことを意識してケガを防ぎましょう。水中では身体がラクに動きますから、身体の調子を見ながらプールで歩くのも、ちょうどよい運動となりますよ。

〈profile〉
東京大学大学院教授 石井直方さん
◎1955年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科・新領域創成科学研究科教授、理学博士。専門は、身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」研究の第一人者として知られる。近著に『中高年のスロトレ【決定版】』(日東書院)など。

出典/『充実時間』(http://www.jyujitsu.jp/)
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