『複合災害』が起きやすい日本で、危険が迫っても生き残るための「対策と心構え」

週刊女性PRIME / 2019年3月8日 8時0分

※写真はイメージです

 政府の地震調査委員会は先月26日、今後30年以内に発生する新たな地震確率を発表した。青森県東方沖から房総沖の日本海溝沿いで、マグニチュード(M)8級の大地震が起きる確率は全域で高く、M7~7・5の地震も宮城県沖で90%など、高い数字が並ぶ。

「毎年、大地震が近づいていることは確かです。地震の活動期に入っているとの指摘もあります」

 そう指摘するのは、武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地球物理学)だ。

「海溝近くで起きる地震は、日本列島をのせている大陸プレートに海洋プレートが衝突して発生します。海洋プレートは毎年4~8センチの速さで動いて大陸プレートを押している。年月がたつほど、地震を引き起こすエネルギーがプレート境界に蓄積されていくわけです」(島村教授、以下同)

『複合災害』が起きやすくなっている

 大きな災害に相次いで見舞われた平成は「災害の時代」として人々の記憶に刻まれている。台風や豪雨などの気象災害も多発、各地に大きな被害を出した。

「'14年(平成26年)の広島土砂災害は、数百年に1度といわれる記録的な集中豪雨が原因でした。それでなくても日本中には火山灰を含む土地がいたるところにあって、地滑りを起こしやすい。

 '18年(平成30年)の北海道地震では、札幌市清田区で液状化が発生しましたが、かつて沢を埋め立てたときに火山灰を含む盛り土をした場所でした。地球温暖化の影響で気象が凶暴化して、『複合災害』が起きやすくなっています

 複数の災害が重なる複合災害は被害が大きくなりやすい。'11年(平成23年)の東日本大震災はM9の激震と大津波が起きて、福島第一原発事故につながった。

 このとき、よく言われたのが「想定外」という言葉。災害の予兆をつかむのは難しい。ただ、島村教授は「政治的な狙いや経済的なコスト意識で想定を決めるのは誤り」と、想定外という言葉を恣意的に利用しているのではないかと懸念する。

 実際、国は'02年に地震予測『長期評価』で、福島沖を含む海域での巨大地震発生の可能性を指摘。また、東京電力は'08年に、長期評価に基づき福島第一原発への到達が予想される「最大15・7メートルの津波」を試算している。3・11より前に想定できていたのだ。

'95年(平成7年)の阪神・淡路大震災も想定外とされていました。阪神のあと、国は直下型地震の危険度を示す『全国地震動予測地図』を作るようになりましたが、もっぱら大地震が起きているのは地図上でノーマークの場所。

 '00年(平成12年)の鳥取県西部地震、'04年(平成16年)の新潟県中越地震、'07年(平成19年)の能登半島地震もそう。'16年(平成28年)の熊本地震は30年以内に、ほぼ0%~0・9%の確率でした」

「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまう

 いざ災害に直面すると、「まさか私が」という心理状態に陥りやすい。それが逃げ遅れにつながる、と東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授(災害心理学)は言う。

「危険が迫り、リスクを知らせる情報があったとしても、まだ平気、自分だけは大丈夫と思い込んでしまう。そうして平静さや精神的な安定を保とうとする。この自己防衛のメカニズムを『正常性バイアス』と呼びます。災害時に逃げ遅れてしまう背景には、こうした心理状態があるのです」

 '18年(平成30年)の西日本豪雨では死者の9割近くが土砂災害警戒区域などで亡くなっており、逃げ遅れが被害を拡大したとみられている。多くの犠牲者を出した岡山県・真備町では、亡くなった人の大半が70歳以上の高齢者だった。

「われわれの調査では、本来、避難率が高いのは幼児や乳児を抱えた家族、それから高齢者のいる家族です。ところが、きわめて差し迫った状況のなかで避難指示が出るものだから、現実には逃げられない。災害の原因が発生したけれど、まだ災害が起きていない段階で避難指示や避難勧告を出すべきです。介護や治療の設備があるとか、多言語に対応できるなど、多様なサポートを前提にした災害対策も必要です」(広瀬教授)

 疲弊にあえぐ地方ならではの難しさもある。

「いざ避難指示を出すと職員を動員しなければならないし、避難所の開設や避難ルートの確保が必要。人手も予算も限られた自治体には負担が重く、空振りを避けたがる傾向が強い。災害が地方で多発して被害も大きいということは、ある意味、国の地方軽視を表しているのだろうと思います」

 いざというときに、迅速かつ適切な対策ができるかが生死の分かれ目となるだろう。

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