娘から性的虐待を告発された父が拘置所で病死、夫の無実を信じる妻の独白

週刊女性PRIME / 2019年5月29日 5時0分

遺骨は今も自宅の居間にある祭壇に置かれたままで……

 改元をはさむ10連休で世間がにぎわう最中の5月2日、49歳で急死した父親の告別式に、娘は祖母と児童相談所の職員に付き添われ参列した。滞在時間は約10分だった。

 棺の中の父をじっと見る娘は当初呆然としていたが、やがて号泣。1年以上、2人は顔を合わすことがなかった。昨年4月10日、娘の美樹さん(当時14=仮名)が学校で「お父さんに触られて嫌だ」と性的虐待を教員に訴え即日児相に保護されたからだ。

「ありえない」と口をそろえる家族

 喪主で妻の良子さん(44=仮名)は、仲睦まじかった父娘の関係が脳裏をよぎる中、

「5月2日は、主人が起訴された日でした。娘は今朝、父親に会いに来ましたが、生きているうちに会わせてあげたかった……」

 と涙ながらにあいさつした。

 2019年4月27日早朝、静岡県浜松拘置支所で、40代の男性未決囚が死亡しているのが発見された。

 男性は吉田康介被告(享年49=仮名)。昨年5月2日に監護者わいせつ、5月30日に児童福祉法違反、7月6日に監護者性交の疑いで起訴され、今年3月29日、静岡地裁浜松支部で懲役9年の実刑判決を受けていた。控訴審に向け準備をしている最中の突然死。死因は急性心疾患の疑い。病死だった。

 判決文は、娘の証言に信用性があるとし、父親の性的虐待行為があったと認定した。

 その内容は、2017年7月1日、娘と2人で風呂に入った際に胸や尻を触り、陰部を舐めたこと。2018年1月に風呂に入った際に性交したこと。同4月6日に、就寝している娘の乳房をもみ、陰部に指を入れたというもの。

 娘の告発以来、良子さんが抱いたのは「私が今まで見ていた日常はなんだったのだろう……」という思いだ。長男・広司さん(仮名)も「(性的虐待は)ありえないです。妹は日常的にお父さんにベタベタしていた」という父娘のスキンシップ。良子さんにも、仲のいい父と娘にしか映らなかったそうで、

「家に夫が帰宅すれば、2階から下りてきて“おかえり、パパチュー”って。小学6年生から中学1年生はそんな感じでした。

 お風呂も夫が“入ろう”と誘うときもあれば、娘から“パパ一緒に入ろうよ”と言うときもありました。私もお風呂を覗いて呼びかけたことだってあるんです。ありえないですよ。娘から身体を洗ってほしいと頼まれたこともあると聞いていましたから。

 ただ、学校で娘が虐待を訴えたときは、“入浴剤を買ってもらった、お父さんと一緒に入るんだって言ってたじゃない”と言うと“そんなことはない、私はずっと嫌だったんだから”と泣きじゃくって……話ができない状態でした」

長期にわたる勾留生活で別人に

 美樹さんは、おととし、友人関係のトラブルから自殺未遂を起こしていた。そのため、夫婦は娘の情緒不安定な部分が“告発”につながっていると考えた。当初、児相できちんと説明すれば誤解が解けると受け止めていたが、美樹さんが保護された翌日に康介さんは逮捕されてしまった。

「昨年4月24日には検察で中学1年の次男が聴取を受けました。次男は“質問がお父さんを犯人にしようとするものばかりだった”と話した。かなりショックを受け、学校に行けなくなってしまいました。当初“大丈夫だよ”と言っていた長男も、同6月中旬から学校に通えない状態に陥ってしまって……」

 裁判は同6月に始まったが、夫の接見禁止は解けない。家族は手紙を書くことも許されなかった。

「息子たちは昨年8月に1度だけ、私は同10月の保釈直前に夫と面会できました。夫は留置場で精神的に相当参っていました。健康診断でも一切問題がなかった人なのに、血圧がすごく高くなり、同9月には“うつ病”と診断されています。同10月22日に保釈されましたが、自宅に戻っても動悸や手の震えがでたり、眠れず本当に苦しそうでした。

 娘のことも毎日“心配だ、心配だ”と。“俺に何かあっても美樹だけは頼む”と口癖のように言っていました。自宅ではボーッとして、夕暮れ時になるとイスに座ってひとりで涙を流すことも。多趣味で活動的な人だったのに……

 長期にわたる勾留生活で、すっかり別人のようになってしまった康介さん。

 それでも父親が戻ってきたことから、息子たちも学校へ通えるようになり一家は少しずつ落ち着きを取り戻していた。しかし、地裁で実刑判決が下り一家を打ちのめした。即日控訴し、保釈請求もしたが、棄却された。

「最後に面会したのは、亡くなる前日の午前中でした。“また明日来るからね”と言ってお互いに手を振って別れました。それが最後です」

 今年の4月27日の午前10時28分、拘置所からの電話で、“ご主人が亡くなりました”と告げられたという。

無実を主張する弁護士

電話を受けたときは頭が真っ白になって……電話を切った後にはリビングにいた長男に“パパが亡くなっちゃった……”と話し、2人で泣きはらしました。その後に、部活に行っていた次男を迎えに行き拘置所へ向かったんです。次男は“ねえ、どこに行くの?”としきりに聞くのですが、話せば運転できなくなると思い何も言えなくて……」

 拘置所に着き父親の死を告げると、次男は呆然とし、抜け殻のようになってしまった。1時間ほど車から降りることができなかったという。

「息子たちは霊安室のドアから中に入ることもできなくて……言葉もなかったです」

 父親の死後、次男は再び心身のバランスを崩して不登校に。長男の広司さんは現状について「逃げ出したいです……」と言葉少なに語り、妹の美樹さんについては、

「事件のことには触れず、会えなかった1年間、元気だった? という話をしたい」

 裁判では有罪判決が下されたが、康介さんの弁護人である浜松中央法律事務所の松尾健太郎弁護士は、「康介さんは無実です」と力強く話す。

 そして今回の判決について、「美樹さんの証言しか証拠がない事件であり、その証言の信用性が裁判の争点でした」と話し、不自然な点を指摘する。

ひとつは処女膜裂傷がないという診断です。事件発覚の3日後に医師が診察して、処女膜裂傷なしと明確な診断を出しています。法廷での娘さんの証言によれば約1年間に5~10分以上の性行為が10回以上あったとされます。それだけ激しい性行為があったとすれば処女膜裂傷が起こったとしてもおかしくない。

 また粘膜なので当然、治癒しますが、仮に裂傷が起こったのならば、傷痕が残るのではないかということです。この点については、控訴審で医学的な鑑定を出す予定でした」

 また、さらに美樹さんは証言で“コンドームを見たことがない”“口止めをされたことはない”とも証言したという。

「バレたら大変なことになるのに、避妊をしないとは考えにくい。家庭内の性犯罪の多くは口止めをすることが多いのですが、それもない。酔った勢いなどではなく、10回以上も犯罪行為を行う人間がする行動としては不合理です」

 裁判は被告人死亡により公訴棄却。控訴審は開かれない。

 良子さんは、こう願う。

「娘の虚言や妄想のワケを調べたところ『境界性パーソナリティー障害』にたどり着きました。患者の家族会で話を聞いたところ、これだと。私としては病が招いたことだと思っています。娘にはきちんと治療を受けてほしい。それが娘のためでもあるんです」

 美樹を恨むな。最後までそう言い続けた康介さんの思いを受け止め、家族で再出発したいと願っている。

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