《目黒女児虐待死》初公判で明らかに、わが子を見殺しにした母の大罪

週刊女性PRIME / 2019年9月13日 5時0分

愛らしいポーズをとる結愛ちゃんだが、虐待と栄養失調で徐々にやせ衰えていった……

 親の暴力や公的機関の不手際など、いつもの“パターン”で次々と失われていく幼い命。5歳児母親の初公判で明かされた事実をもとに、これ以上の犠牲者を出さないためには──。

母親の初公判、結愛ちゃんのメモに涙

「息子の前妻の裁判が始まったのは、新聞やテレビの報道で知っています。だけど、裁判がどう転ぼうと、わしが可愛がっていた結愛が帰ってこないことは一緒。わしらが決めることじゃないですけん」

 週刊女性の取材にそう言って肩を落とすのは、香川に住む船戸結愛ちゃんの父方の祖父。

 昨年3月、東京・目黒区で起きた両親による結愛ちゃんへの虐待死事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親・優里被告(27)の初公判が9月3日、東京地裁で始まった。

 起訴内容は、昨年1月下旬から結愛ちゃんに十分な食事を与えず、10月から公判が始まる夫・雄大被告(34)の暴行を知っていながら虐待の発覚を恐れて放置。肺炎による敗血症で3月に死亡させたというもの。

「結愛ちゃんが当時、つけていたノートによると、体重は1月には16キロ以上あったようですが、次第に落ちていって、死亡時にはわずか12・2キロにまでなっていました。また、身体には虐待の痕跡と思われる無数の傷があったようです」(社会部記者)

 香川県で、前夫との間にできた結愛ちゃんを連れて雄大被告と再婚した優里被告。

 雄大被告の結愛ちゃんへのしつけと称する暴行が始まったのは、両被告の長男が生まれた'16年11月ごろからだった。

 結愛ちゃんは当時、親から指摘された注意事項や課題、体重、心境などをノートにつけていた。そこには繰り返し行われた雄大被告の体罰に対して、

《もうおねがい ゆるして ゆるしてください》

 と綴られていた。今回の法廷では、

《あしたのあさは ぜったいにやるんだとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ パパとママにみせるってきもちでやるぞ えいえいおー》

 というメモも公開され、被告は涙を流すばかりだった。

「結愛ちゃんは香川にいた'17年3月に2度、児童相談所に一時保護をされていますが、いずれも3~4か月で保護解除し、自宅に戻っています」(同・記者)

 '17年12月には、雄大被告が仕事探しのため東京都目黒区へ単身で転居し、'18年1月には妻子も続いた。

 このとき香川県の児相から、品川の児相に引き継ぎがなされているが児相は、

深刻なものとは受け止めていなかった

 として、結愛ちゃんや両親への面会は1度もできておらず、児相の責任を糾弾する厳しい意見が噴出している。

母親の答弁は弁護士のストーリーか

 公判で母親である優里被告は憔悴しきったか細い声で検察の起訴内容を認めたうえで、

夫の報復が怖くて、警察に通報できなかった

 と夫のDV(家庭内暴力)をにおわせる理由を述べている。

 裁判を傍聴していた虐待事件に詳しいルポライターの杉山春さんは、

「子どもを亡くしてしまうような状態のときは、どの事件でも親たちのメンタルヘルスは最悪です。さらに母親はさまざまな理由でもともと自己肯定感が低いと思われます。

 今回、夫に“叱ってくれて、ありがとう”などと感謝の気持ちを表明している。DVの持つ病理性、夫の妻へのコントロールの強さが、法廷では明らかにされると感じます。

 強度のDVだと感じますが、司法が今後、彼女の加害性と被害性をどのように判断するのか、そこに最も大きな関心を持っています」

 児相で児童心理司として長年勤務した心理学者の山脇由貴子さんは、

優里被告は弁護士が作ったストーリーに乗って、みずからの罪を軽減しようとしている印象を受けます

 本当は夫がいくら怖くても、母親として子どもをその状況から逃がすか、自分が連れて逃げるかしなければいけなかった。子どもの命に関わることですから

 この種の事件にはいつも既視感がある。なぜ、いつも同じような環境の人たちが起こし、同じようなミスが起こり、同じような報道がされるのか──。

 特に虐待に関しては、夫が主、妻が従の関係が多い印象がある。

「とりわけ、妻の連れ子のケースが多いですね。夫のほうが肉体的に強いし、妻には子どもの面倒をみてもらいたいという弱みがあるからだと思います」(山脇さん)

子どもの泣き声は暴力のシグナル

 近隣住民がこうした虐待に気づいたら、即座に児相や警察に通報すべきだと強調する。

トラブルを恐れて見て見ぬふりをしますが、絶対に通報すべきです。匿名でもかまいません。また、しつけと称して虐待をやっている親もいますが、しつけとしての体罰を認めると、すべてが許される。

 現在の日本では、親といえども、子どもを一発叩いただけで虐待になることは常識です。通報はためらわないでほしいです」(同)

 さらに児相の役割の問題がある。結愛ちゃんの祖父も、

いちばん悪いのは当事者の両親やいうことは、わしだって認めとる。だけど、そういうことがあっても、児相がきちんと仕事を果たしたら、こんなことは起こらなかったんや。

 児相のためにわれわれは税金も払っとるんやで。それが役割も果たさんと、こういう事件が起きたら、そこの児相の職員はクビになるんが当然でしょう。民間の会社でも責任はとってるんやから」

 先の山脇さんもこう指摘する。

「まず、香川の児相は2度にわたり保護したのに、2度とも家に戻したというのが、ありえないこと。それから、通常、児相の引き継ぎは、書類でやる。経過報告が長いときは、その書類は数十枚から数百枚にもなります。それをきちんと読んでいたのかどうか。品川の児相が“緊急とは受け止めていなかった”と言っているのがおかしい」

 児相の利権問題の著書もある一橋大学の水岡不二雄名誉教授(経済学)は、次のような児相の特徴を挙げる。

児相と警察の連携が悪いのは、日本が縦割り社会の傾向があり、お互いの縄張り意識があるからです。本質的に、今回は凶悪事件で、暴行、傷害といった刑事事件なので、警察がすぐに介入すればいいはずです。

 しかし、子どもの虐待問題は厚生労働省の児相の分野なので、警察は消極的で、連携も悪い

 秋には雄大被告の公判も始まることになっている。

 ふたりは、結愛ちゃんの死をどう受けとめどうやって罪を償っていくのだろうか。

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