「慰謝料を払え!」バツイチ彼氏の元妻が凶暴化、その結末は──薫の場合《後編》

週刊女性PRIME / 2020年3月11日 16時30分

※写真はイメージ

 行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回は、交際中の男性の元妻から嫌がらせを受けたトラブル事例を紹介します。(後編)

 相談者の平良(たいら)薫さんは同じ会社に勤める比嘉幹介氏と交際中。薫さんは幹介氏の離婚後に交際を始めたので問題はないはずだが、元妻は二人の関係を不倫だと言い、「主人と別れろ」という嫌がらせのLINEが昼夜問わず送られてきて悩んでいる。幹介氏と元妻の間には16歳の息子がいるが、その息子の高校中退も薫さんのせいだと言わんばかり。さらに、幹介氏と薫さんが上半身裸で寄り添う写真を見つけた元妻は、薫さんが幹介氏と別れないなら、会社の部長に写真を送りつけ、ネットにバラまくと騒ぎだし……。

(前編はこちら)

<登場人物、属性(すべて仮名)>
平良薫(39歳。幹介の彼女)会社員 ☆相談者
比嘉幹介(46歳。恵の元夫)会社員
新垣恵(44歳。幹介の元妻)無職
新垣洋介(16歳。幹介と恵の長男)フリーター

元妻の4つの行動は明らかに法律違反

「あんたのせいで家庭を壊されたんだから、どんな報いも受けるべきでしょ? 慰謝料……そうね、500万円くらい払えるでしょ? バラされたくないんだったらね!!」

 元妻は復讐をやめる条件として幹介氏との関係解消だけでなく、慰謝料の支払いも求めてきたのです。二人が正式な形で交際を始めたのは「離婚後」です。薫さんが夫婦の結婚生活を壊したわけでもなければ、彼との関係は不倫ではありません。それなのに薫さんは元妻に弱みを握られており、交渉の主導権は元妻が持っています。上半身裸の二人の写真を会社の部長をはじめ、ネット上にまで流出させられるのを防ぐためには、元妻の言うとおり、彼と別れたうえで多額の慰謝料を支払うしかないのでしょうか?

 筆者はこのような状況に陥った薫さんから相談を受けましたが、それまで元妻が行ってきた行為は単なる嫌がらせや迷惑、「私刑」という域を超えており、法律に違反していることは明らかだと伝えました。具体的に元妻の行動の何がどの法律に違反するのかは以下の4つです。

 1つ目は「夫婦の離婚が成立しているにもかかわらず、元妻が元夫の交際相手に対して関係解消を強要する行為」です。未婚者には交際の自由が認められています。離婚を経験しているとはいえ幹介氏は現在、独身なので薫さんと交際することに何ら問題はありません。さらに、薫さんが幹介氏と離婚前から交際していたと元妻に決めつけられ、交際の自由を否定される筋合いはないのです。

 つまり、元妻は薫さんに対して元夫と関係を解消するよう求めることができる立場ではありません。具体的には「とにかく主人と別れなさいよ!」というLINEのメッセージですが、これを正当化する根拠はありません。このように根拠のない請求を繰り返すことで相手方に精神的苦痛を与えた場合、法律上は脅迫罪(刑法222条、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)に抵触する可能性があります。

 2つ目は「性的関係が記録されている写真を公開する行為」です。元妻は薫さんと彼の性的関係が記録された写真を持っていること、そして会社の部長に写真を送りつけるとLINEのメッセージを送ってきました。このようなわいせつな写真を第三者に閲覧させた場合、わいせつ物頒布等罪(刑法175条、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料)に抵触する可能性があります。

証拠がないのに「不倫」と口外することも違法

 3つ目は「第三者への口外によって社会的な信用を貶(おとし)める行為」です。先の写真だけでなく、第三者に対して、離婚前に幹介氏と薫さんが肉体関係を結んだ証拠がないのに「不倫」だと口外することも違法なのです。なぜなら、本人の承諾なく個人情報を第三者に口外し、損害を与えることは名誉棄損に該当するからです。このように元妻は薫さんについて知り得た情報のうち、薫さんの社会的な信用を損なう内容について第三者へ口外した場合、名誉棄損罪(刑法230条、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金)に抵触する可能性があります。

 最後、4つ目は「性的関係が記録されている写真を公開すると脅す行為」です。元妻は写真の非公開と引き換えに薫さんに慰謝料を払わせようとしましたが、例の写真を交渉材料として使うことは許されません。相手を脅すことで目的を実現しようとする行為は恐喝罪(刑法249条、10年以下の懲役)に該当する可能性があります。

 このように元妻の行為には罰金が伴う可能性がありますが、もし元妻が薫さんの忠告を無視し、これらの行為を本当に行った場合、薫さんには損害が発生します。そのため、元妻は罰金以外に損害賠償金を支払わなければなりません。

「不倫をするような女は何をされても文句を言えないはず」と元妻は本気で思っているかもしれませんが、それは元妻の個人的な意見にすぎません。それよりも法律の公式的な見解のほうが優先されるのは当然ですし、「家庭を壊された」「別れようとしない」「慰謝料を払わない」という理由での違法行為は許されません。

薫さんが元妻に注意喚起すると…

 薫さんは元妻を罰することを望んでいるわけではなく、上記の4点を含め、違法な行為を行わなければ、それで十分だと思っていました。これらのことを踏まえたうえで、「もうやめてください。そうすれば、こちらも何もしませんから」と元妻に釘を刺したのです。「何もしない」というのは過去のことを警察に相談したり、被害届を提出したり、損害賠償を請求したりしないという意味です。

 正直なところ、薫さんは今回の注意喚起によって元妻の嫌がらせがおさまるどころか、むしろエスカレートするのではないか、そうなった場合は本当に警察へ通報したり、弁護士に依頼したりしなければならない──と腹を括(くく)っていたようです。それから1年が経過しましたが、元妻から音沙汰はなく、嫌がらせの類は完全におさまったそうです。薫さんの心配は杞憂(きゆう)に終わり、胸をなでおろしたのです。

 もし元妻が違法だと知らず、その場の思いつきであのLINEのメッセージを送っていたのなら、薫さんの忠告を無視し、嫌がらせを続けたかもしれません。しかし、元妻は薫さんに指摘されなくても違法だとわかったうえで彼と別れさせ、慰謝料を取ろうとした確信犯だったのです。なぜなら、脅しめいたLINEのメッセージについては薫さんが既読にしたことを確認し次第、削除していたのだから。

 薫さんは元妻が削除する前にメッセージの画面を保存していたので、元妻が「そんなメッセージを送った覚えはない」と言いだしても通用しません。しかし元妻は、どこまでが許され、どこまでが許されないのか、最低限の分別はついていたはず。だからこそ、これ以上、嫌がらせを続けた場合、薫さんが「出るところに出る」ことを察して、嫌がらせだけでなく慰謝料の請求もあきらめたのでしょう。

離婚しても元夫は息子の父親であることに変わりない

 このように薫さんが毅然(きぜん)とした態度をとることができたのは、元妻が赤の他人だからです。ただでさえ幹介氏から元妻の悪口や不安、愚痴を聞かされていたので元妻の印象は悪いし、彼に捨てられた元妻の気持ちを慮るつもりもなく、むしろ自業自得だと思っているくらいでした。そのため、元妻をなるべく傷つけないよう配慮する必要はありませんでしたが、幹介氏は違います。離婚したら夫婦は他人ですが、息子さんの父親、母親であることに変わりはありません。

 今回の場合、心配なのは元妻と一緒に暮らす息子さんです。息子さんは性格形成に大事な思春期に高校を辞め、フリーターになりました。元妻は薫さんへの復讐がかなわなかったので、怒りの矛先を息子さんに向けることが予想されます。例えば、元妻が「女と結託して慰謝料を踏み倒した最低な父親」だと息子さんに吹き込んだ場合、息子さんは精神的に不安定になり、自室に引きこもり、アルバイトすら辞めてしまう可能性もあるからです。

 離婚成立から半年後、ようやく自宅を売却することができたので、幹介氏と薫さんは晴れて一緒に暮らし始めたのですが、突然、彼の顔が青ざめる瞬間を何度か目撃したよう。元妻は薫さんへの嫌がらせはやめましたが、彼に対して続けているのではないかと心配せざるをえませんでした。薫さんは気になるものの、彼の機嫌を損ねたくないので聞けずにいるそうです。

 元妻が薫さんに“やり返された”と根に持たず、きちんと反省し、何の罪もない息子さんに悪影響を与えないように暮らすことを願うばかりです。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/

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