《障害者を襲うコロナ禍》視覚障害者は同行支援を断られ、聴覚障害者はマスクが壁に

週刊女性PRIME / 2020年5月23日 11時30分

白杖を使って歩行訓練を行う視覚障害者。こうした動作は訓練を重ねないと習得できないが、コロナ禍ではままならない(ひかりの森提供)

 新型コロナの感染拡大が続く中、より厳しい生活を余儀なくされている障害者。当事者や介助者がその不安な胸の内を明かした。

 タレントの江頭2:50らが所属する芸能事務所『大川興業』の代表取締役総裁でタレントの大川豊(58)が今月4日、フリーランス記者として安倍晋三首相の会見に出席。同伴者なしでは外出できない知的障害者の子どもたちに対する行動指針などをただした。政治記者以外の視点による質問が安倍首相を慌てさせ、ネットで喝采を浴びた。

職員が感染すれば「介護崩壊」も

 新型コロナ対策を政府に具申する諮問委員会の尾身茂会長は、従来の「フィジカルディスタンス・マスク・手洗い」の3原則を繰り返したが、介護の現場は常に命の危険と直結する緊張感が張り巡らされている。

「自分で身体が動かせない方は排泄しかり、飲み物を飲むことしかり、第三者が介入しないと生きることができません。人工呼吸器の人たちは痰吸引の必要もあります」

 筋ジストロフィーなどの難病患者や身体障害者を24時間体制で介助する『ぴあ・ぱれっと』の管理者はそう訴える。当事者と介助者の関係は接触なしでは成立しない。そのジレンマと不安に職員は苦しんでいる。

「食事の介助も換気をしながら行う、長時間の介助のときは2メートル以上、間を空けるなどのルールも決めています。何よりも徹底させていることは職員自身が感染しないこと」

 在宅で支援を受けながら生活する当事者のもとには介助、医療など複数の関係者の出入りがある。そのため、ウイルスが持ち込まれれば当事者はもちろん、当事者を介してほかの支援者に感染が拡大するおそれがある。

「公共交通機関で移動せざるをえない職員もおり、自分が感染させてしまったらという不安は常にあります。職員が感染し、自宅待機になれば現場は回らなくなり、利用者は生きていけない。介護崩壊が起こります」

同行支援を断られ、窮地に立たされる視覚障害者

 フィジカルディスタンスを優先できない介護現場。視覚障害者たちも、同様の課題に直面している。

 視覚障害者を支援する『視覚障害者支援協会・ひかりの森』理事長の松田和子さんによると、当事者は糖尿病などの合併症や緑内障など目の病気の進行により、中途で視覚障害を負ったケースがほとんどだという。そのため、生活訓練や通院は欠かせないのだが、

「慣れない場所へ同行支援してくれるヘルパーさんと一緒だと安心できるんですが、感染防止のために2メートル離れるというのは不可能なことです。

 同行支援やヘルパー事業所に断られ窮地に立たされている方もいます」

 当事者の日常生活で、目にかわるのが、手、である。

「視覚障害者は、触って手から情報を得ます。外出先でも、いろいろ触らなければなりませんが、みんなが触っている場所は感染リスクが非常に高く、不安もあるので、こまめに手は消毒をしています」(松田さん)

 しかし、不便も生じていて、

「多くの人が消毒液を十分に用意することができていません。マスクもそうですが、並んで購入するにしても何時間待つのか、いつ販売するのかがはっきりせず、情報がまったくつかめない。購入する列や入荷の有無を知らせる貼り紙も視覚障害者にはわかりません。白杖の人が困っていたら“お手伝いしましょうか”と声をかけていただけると非常にありがたいです」

 と社会的支援を期待する。

当事者目線でないと気づかない不便

 道行く人のほとんどが着用するマスク。飛沫感染から人々を守るマスクが、聴覚障害者たちにとっては障壁になっているという。その理由を、『全日本ろうあ連盟』の事務局が、書面で寄せた。

「マスクをつけるとコミュニケーションのひとつである口話(口のかたち)を見ることができず困ります。透明マスクの増産や開発に協力していただける企業などが出てきてくれるとありがたいです」

 透明マスクの開発・販売を手がける『旭創業』の森浩幸常務執行役員は説明する。

「もともとは飲食関係で表情を見せながら食品に唾が飛ばないよう開発されました。聴覚障害のある方々にも役立つということは、最初は考えていませんでした」

 最近は需要も多く、供給が追いつかない状況だという。

「食品販売の方々や宿泊施設などで導入していただくことが多かったのですが、手話サークル、ろう学校などにも広がりを見せています。笑顔が見えて誰にとっても優しい、バリアフリーマスク、と言えるのではないでしょうか」

 コロナ関連の情報に限らず、聴覚障害者が困る現実は、意外に多い。テレビのテロップで相談窓口の電話番号が記されていても当事者は電話ができない。防災無線など命や生活に関わる情報も音声のみで発信されることも多い。その不便さは当事者目線でないと気づかない。

「病院受診のとき、医師とのやりとりの際には手話言語通訳が必要ですが、手話言語通訳者の二次感染を防ぐために派遣を断られることがあります。遠隔手話言語通訳システムの導入が必要だと思います」(全日本ろうあ連盟)

 学校教育現場で導入が進められているオンライン授業も当事者の前に立ちはだかる。

「聞こえない学生や児童たち、オンライン授業では先生や講師の話がわからず、行き詰まってしまいます。教育を受ける権利を守るためにも、オンライン授業における手話言語通訳や文字通訳付与が必要と考えています。そのためには教育におけるバリアフリーのために予算が伴う緊急措置が必要です」

障害者の再就職はとても難しい

 民間には、コロナ禍を乗り越えようと闘う障害者に寄り添う企業もある。

『LORANS.』の代表、福寿満希さんは、経営するフラワーショップとカフェで、45人の障害当事者、難病当事者を雇用。大切にしているのは、不安を払拭するためのコミュニケーションだ。

「難病の方は免疫が弱く感染症にかかりやすい。精神障害がある方の中には不安が強く、過呼吸やパニックなどの症状が出て体調を崩すこともあります。私たちの会社では本人の希望を聞いて相談し、いち早く休業や在宅に切り替えました。自宅にいる当事者には平日は毎日電話をかけ、話をするようにしています」

 そんなときに不安の声を聞くことがあるという。

「感染だけでなく、いつ出勤できるのか、会社が存続できるのか、心配している当事者は少なくありません。当事者は仕事にやりがいを持っていますし、また、障害者の再就職はとても難しいんです」

 そのため福寿さんらは当事者を支えながら、経済低迷の中、会社を存続させるためにも奔走する。同社は4月から、障害当事者の在宅ワークを中心にアレンジメントやマスク作成に取り組み、オンライン販売にも販路を広げる。

 コロナ禍の不安に負けず、助け合いの花は各地で力強く咲いている。

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