遠野なぎこ、井上真央、これまでの朝ドラ女優から見る「国民的ヒロイン」の苦闘

週刊女性PRIME / 2020年7月6日 12時0分

離婚会見時の遠野なぎこ('14年)

 遠野なぎこ(40)が自身のブログを休止した。'13年6月の開設から7年間、摂食障害や希死念慮(きしねんりょ)といった心身の葛藤を告白し、同じ苦悩を抱える人たちとの交流を重ねてきたが、休止を決意した理由はこういうものだ。

私の“いのち”でもある、“悠&蓮”を失った現在。もう何も言葉が見つからないのです。言葉に、力を注ぐ事が出来なくなってしまいました。全てのエネルギーを失いました》

 愛猫2匹が病気で亡くなり、ブログを続ける力が尽きてしまったという。

遠野なぎこのこれまでと“振り幅”

 彼女は11歳のとき、本名の「青木秋美」で子役デビュー。その後「遠野凪子」に改名して、'95年にはドラマ『未成年』(TBS系)でいしだ壱成や香取慎吾、反町隆史、歌手デビュー前の浜崎あゆみらと共演した。

 ただ、母親による虐待を受けていたことから、過食嘔吐やオーバードーズ(薬の過剰摂取)に走るようになり、3年間休養。それでも、復帰して最初に受けたオーディションで大役を射止めてしまう。NHKの朝ドラ『すずらん』('99年前期)のヒロインだ。

 そう、彼女は朝ドラ女優のひとり。ただ、彼女ほどそのイメージや立ち位置が変わった人もなかなかいない。最後にドラマで見たのは昨年8月『ルパンの娘』(フジテレビ系)でのゲスト出演だが、同じ日の直後に放送された『アウト×デラックス』(フジテレビ系)の「放送ギリギリ禁断の未公開映像を蔵出し!!」では、コオロギの素揚げをバリバリと食べていた。

よく見るとグロテスク。何匹くらいいけばいいですか? うわ、おいしい! おいしい! おつまみみたい。ビール欲しい。これ、おいしいよ

 と、感想を語り、ブログでも「この差こそ、私の一番好きな“仕事の在り方”だ」とその振り幅を自慢した。とはいえ『すずらん』での透明感あふれる清純なヒロインぶりを覚えている者としては、痛々しさを感じなくもない。遠野凪子と遠野なぎこ('10年に改名)とでは別人にすら思えるほどだ。

 ちなみに、朝ドラ女優に選ばれた人はほぼ自動的に「国民的ヒロイン」と呼ばれる。が、その肩書のまま生きていけるほど芸能界は甘くない。高すぎるブランドが、かえってアダになることもあるからだ。

朝ドラ女優の芸能スキャンダル

 たとえば、のん(当時は能年玲奈)の独立トラブルも、“朝ドラ”ブランドによる副産物だった。『あまちゃん』('13年前期)で一躍、人気者になったものの、事務所を辞めたいと言い出し、女流演出家と個人事務所を設立。「能年玲奈」を芸名として使用できなくなり、全国区の地上波で姿を見る機会が減ってしまった。

 おそらく『あまちゃん』での成功がなければ、本人も独立は考えなかっただろう。昨年の大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』には、脚本が同じ宮藤官九郎ということで出演を待望するファンもいたが、叶わなかった。

 そんなのんと同じ事務所だった清水富美加は『まれ』('15年前期)に出演。ヒロイン役のオーディションでは土屋太鳳に負け、友人役に甘んじた。「最初はヒロインしかやりたくないくらいの気持ち」「わかりやすく売れるじゃないですか」などと『しゃべくり007』(日本テレビ系)で語っていたが、準・朝ドラ女優としてそれなりのブレイクは果たしたわけだ。

 にもかかわらず、2年後、信仰する幸福の科学に出家して「千眼美子」に改名。その後は、教団が製作する映画でヒロインを務めたりしている。

 なかには、引退した人もいて『オードリー』('00年後期)の岡本綾がそうだ。事務所によれば、

女優として内から引き出すものがなくなり、表現者としての限界を感じている。一度、自分自身を見つめ直す時間がほしい

 という申し出があった、とのこと。しかし、彼女は前年、あるスキャンダルにも巻き込まれていた。中村獅童が信号無視と酒気帯び運転で交通事故を起こした際、同乗していたことが発覚。獅童はその1年前に竹内結子と結婚し、子供も生まれたばかりだったが、結婚前には岡本との交際を報じられてもいた。

 ちなみに、竹内は『あすか』('99年後期)のヒロイン。つまり、朝ドラ女優と結婚した男が別の朝ドラ女優と焼けぼっくいに火となりかけ、交通事故まで起こすという、およそ朝ドラのイメージとはかけ離れたスキャンダルだった。この件も彼女の引退になんらかの影響をもたらしたのだろう。

元・朝ドラ女優たちの現在地

 また、かつてより露出が減り、一時は引退説もささやかれたのが井上真央だ。オーディションなしで『おひさま』('11年前期)に主演。これは実績重視でヒロインを選ぶようになった近年、増えてきたパターンで、ほかに有村架純吉高由里子堀北真希らがいる。

 しかも、井上の場合、その後、大河ドラマの『花燃ゆ』('15年)にも主演。大河との二冠達成は、やはりオーディションなしで『純情きらり』('06年前期)に主演した宮崎あおいと彼女、あとは松嶋菜々子(ただし、大河は唐沢寿明とのダブル主演)しかいない。

 ただ、V6・岡田准一と再婚して、子供も授かった宮崎に比べ、こちらは嵐・松本潤との「永い春」が続いている。露出が減ったのも、事務所の移籍など事情がいろいろ絡んでいるのだろう。

 久々の民放連ドラとなるはずの『二月の勝者-絶対合格の教室―』(日本テレビ系)もコロナ禍により、放送のメドが立っていない。子役時代にも少女期にもヒット作を持つ人だけに、さびしくも感じられるここ数年だ。

 さらに、朝ドラ女優には『あぐり』('97年前期)の田中美里のように、主演の3年後、パニック障害を患って療養生活を送った人もいる。かと思えば『純と愛』('12年下半期)の夏菜のように、視聴率や評判がパッとしなかったこともあって、撮影期間中、酒びたりだったことをのちに告白した人も。朝ドラが黒歴史になり、それがバラエティーでの持ちネタになるというレアなケースだ。

 何はともあれ、朝ドラ主演の重責は大変なものに違いない。その重責を果たしながら、ともすればそのイメージに呪縛され、苦闘していかなくてはならない彼女たち。そんな元・国民的ヒロインたちにエールを送りたい。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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