80代ひとり身女性の「孤独死」を見送って感じた“ひとりで死ぬ”という幸せ

週刊女性PRIME / 2020年7月19日 21時0分

ひとりで老後を生きるのが普通になるのは時間の問題だが、そこで頭をよぎるのが「孤独死」だ(写真はイメージ)

 1986年『女が家を買うとき』(文藝春秋)での作家デビューから、70代に至る現在まで、一貫して「ひとりの生き方」を書き続けてきた松原惇子さんが、これから来る“老後ひとりぼっち時代”の生き方を問う不定期連載です。

第19回
孤独死はそんなに悲惨ですか

 高齢化社会の波の中で、ひとり暮らしの高齢者が増えている。

 内閣府の「令和元年版高齢社会白書(全体版)」によると、2017年は65歳以上の者がいる世帯数は全世帯数の47.2%で、そのうちひとり暮らしの割合は26.4%、夫婦のみの世帯は32.5%だという。65歳以上のひとり暮らしは男女ともに増加傾向で、2015年は65歳以上のひとり暮らしの男性は約192万人、女性は約400万人にのぼる。

 今後、ひとりで老後を生き、ひとりで亡くなるのが普通になるのは、時間の問題だろう。この統計から最後はひとりになる可能性が誰にでもありうることがわかる。

 昭和の時代までは、長男は親と同居するのが当たり前だった。なので、親は家族の中で亡くなることができた。しかし、現代は、そういうわけにはいかない。親も子も同居は望まず、伴侶が死んだら、限りなくひとり暮らしにならざるをえない。

 そこで、頭をよぎるのが、「孤独死」ではないだろうか。何か月も発見されずに腐敗した遺体や汚れた部屋の状況など、メディアが好んで悲惨な孤独死を多く取り上げることも起因しているが、孤独死のニュースを聞いて、気持ちのいい人はいないはずだ。

 先の「令和元年版高齢社会白書」では、60歳以上の人に、万一、治る見込みがない病気になった場合、最期を迎えたい場所はどこかを聞いた結果、51.0%の人が「自宅」と回答している。また、60歳以上の人に「孤立死(孤独死)」を身近に感じるかどうかを聞いたところ、34.1%の人が身近に感じると答えたという。

 遺体の腐敗による臭いなどで、隣人や周りの人に迷惑がかかる孤独死だけは避けたいと恐れる人は多い。孤独死は“みじめ”だと決めつける人もたくさんいる。

 実は、わたしも以前は、孤独死を嫌うひとりだったが、今は違う。なぜなら、ひとり暮らしの私にとり、孤独死は自分の将来の姿でもあるからだ。

望まぬ延命治療をされ、苦しむケースは多い

 孤独死の現場の後片づけを行う特殊清掃業者の方を呼んで、孤独死がどういうものなのか勉強会も開いた。そこで知ったのは、孤独死するのは女性より男性のほうが多いこと。理由は、男性は近所付き合いをしない人が多く、引きこもりがちなので、発見されるのが遅くなるということだった。

 また、想像したらますます孤独死が怖くなるが、孤独死でも夏と冬とでは遺体の腐敗具合が違うという。人間も果物と同じで夏は腐り方が早く、冬はゆっくりと腐ると話してくれた。発見が夏の場合、うじが湧いていることもあるそうだ。

「うじ」と聞くだけで、さらに、孤独死の印象が悪くなるが、孤独死は、ほんとうに悲惨で恐ろしい死に方なのだろうか。

 おひとりさまをつなぐわたしたちの会(NPO法人 SSSネットワーク)では、2000年に会員のための共同墓を造った。会の歴史とともに、会員も年をとり、今では70歳前後が大半だ。そして、亡くなる人も増えてきた。これまでに亡くなった会員の方は約40名。昨年は、7名の会員を送り、今年もすでに2名の孤独死の方を見送っている。

 誤解を恐れずに言うなら、ひとり暮らし(ひとり身)で、自分の部屋で誰にも見つけられずに、ひとりで息を引き取ることを「孤独死」と言うなら、わたしは言いたい。高齢ひとり身にとっては、こんなにいい死に方はないと。

 もし、ひとり身の人に、神様が特権を与えたとしたら、それは家族に邪魔されずに、最期を迎えられることだと思う。なぜなら高齢者の場合、家族に救急車を呼ばれ、よかれと思って行った延命治療によって、逆に本人が苦しんだ話をたくさん見聞きしてきたからだ。

家族がいようがいまいが、死ぬときはひとり

 わたしが体験した2つの孤独死を紹介したい。

 1人目の方は、ずっと戸建ての自宅でひとり暮らしをしていたAさん83歳だ。足が悪く杖を手放せない生活をしていたが、昨年、手首を骨折し、ひとり暮らしに自信がなくなり、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に移転した。安心を求めて移転したわけだが、入居から1週間たったある日、お風呂場で亡くなっているのが発見される。

 訃報を聞いたときはショックでわが耳を疑ったが、よく考えてみると直前まで普段どおり過ごし、あまり苦しまずにスーッと逝けた幸せな死に方だったのではないかと、会のスタッフと顔を見合わせ、うなずきあった。

 サ高住とはいえ、同居人がいない限り、倒れてすぐに発見されるのが難しいことを彼女の死から教わった。

 2人目は、先月、孤独死したBさん85歳だ。都内のマンションにひとり暮らし。わたしたちの共同墓を契約していたことから、彼女の姪が連絡してきたのだ。その姪の話によると、同じマンションの住人が、新聞がたまっていることに不審を抱き、警察に連絡。警察が鍵をこじ開け室内に入るとBさんが亡くなっていたという。事故、事件性はなく、死後10日ほど経っていたらしい。

 孤独死による臭いを気にする人がいたら、新聞をとることをお勧めしたい。まず、1か月放置されることはないだろう。

 70代になったひとり身のわたしは、最近、つらつら思うことがある。最期の時をどのように迎えたいかは、もちろん人それぞれだと思う。しかし世間で嫌われている孤独死は、ある意味、高齢ひとり身の人にとったら、理想的な死に方ではないかと。

 お二人とも、見事な死。家族がいようがいまいが、死ぬときはひとりだ。死の状況だけを見て、死んだ人の幸・不幸を判断するのは、失礼ではないだろうか。

 それから、とても残念だったのは、Bさんは、生前に共同墓に入る契約をしていたにもかかわらず、実際には、親族により先祖代々のお墓に入れられてしまったことだ。


<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『老後ひとりぼっち』、『長生き地獄』、『孤独こそ最高の老後』(以上、SBクリエイティブ)、『母の老い方観察記録』(海竜社)など。最新刊は『老後はひとりがいちばん』(海竜社)。

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