芸能人の引き際の美学、もっとも美しかった山口百恵から“逃亡引退”まで

週刊女性PRIME / 2020年8月28日 17時0分

(左上から時計回りで)押尾学、山口百恵、吉澤ひとみ、山口達也、森且行、安室奈美恵、木下優樹菜、島田紳助

 上半期だけで多くの有名人が引退を発表した2020年。元AKB48の渡辺麻友など、まだ人気のさなかにいるアイドルが突然引退を発表する一方で、木下優樹菜のように、雲隠れ同然の去り方をする人も。週刊女性連載陣の芸能ウォッチャー宝泉薫がこれまで引退したあの人たちの去り際をプレーバック!

最も美しい芸能界引退とは

 芸能史上、最も美しい引退をしたのは誰か。そんなアンケートをしたらいまだに1位は山口百恵だろうか。歌手としても女優としても脂ののりきっていた21歳のとき、

愛する人が最も安らぎを感じる場所になりたかった》(自叙伝『蒼い時』より)

 として、結婚とともに家庭に入ることを決断。引退コンサートでは最後にマイクを置いて去るというけじめのパフォーマンスを行い、それ以降、復帰はしないというスタンスを継続している。こうして自らの引退を美しい「作品」にしたのだ。

 そんな彼女の成功は、一種の流行を生んだ。都はるみ森昌子も寿引退(都は事実婚)で続こうとしたし、それを夢見て泥沼にハマったのが中森明菜だ。また、統一教会の合同結婚式で「神の花嫁」となって以降、引退状態となっている桜田淳子のような人もいる。

 ただ、百恵以降、彼女を超える美しい引退はなかなか見当たらない。それ以前には、原節子がいるのだが、これはまた別格だ。映画の黄金時代に小津安二郎監督作品のヒロインとして活躍したこの美人女優は、小津の死とともに43歳で銀幕を去った。そのまま独身を貫き「永遠の処女」と呼ばれながら、95歳で亡くなるまで神秘的な存在であり続けたのである。

 そんな美しい引退と、そうでもない引退を比べると、その違いがはっきりと見えてくる。惜しまれ続けること、そしてスキャンダラスでないことが重要だ。

 その点、今年5月に引退した元AKB48渡辺麻友はこの先、美しく語り継がれていく可能性がある。恋愛禁止というルールに苦しむアイドルも多いなか、ノースキャンダルを貫き、

健康上の理由で芸能活動を続けていくことが難しい

 という同情するしかない事情からの決断。同じAKB系のアイドルでも、総選挙の際に結婚宣言をして、ひんしゅくを買った須藤凜々花とは対照的だ。こちらは翌年、結婚して、そこから9か月後に引退したが、ほとんど話題にならなかった。

 また、今年3月にはタレントのブルゾンちえみが引退。ただし、やめるのは芸人で、今後は本名の「藤原史織」として環境問題などについての発信をしていくという。一発屋枠で生き延びようとする芸人が多いなか、斬新かつ思い切りのいい選択だ。

 これにひきかえ、ちょっと痛かったのが俳優・高岡蒼佑の引退だ。《すべて出し尽くし、演りきりました》と語ったものの、テレビ局批判やケンカによる逮捕など、度重なるスキャンダルで追い込まれたようにも見えた。しかも、

本日(8月3日)を境に、俳優業をやる事は永遠に御座いません

 とまで断言。山本裕典のように、同じくスキャンダルの蓄積で1度引退しながら復帰して、コロナ禍のクラスター問題で悪目立ちしてしまった人もいるだけに、高岡の今後も心配だ。

 とまあ、引退といってもさまざま。ここからはジャンル別に、その悲喜こもごもを見ていくとしよう。

アイドルや子役、引退の明暗

 まずは、アイドル・子役編。若くして世に出たぶん、若くして引退する人もいる。

 例えば、森且行のケースだ。子どものころからの夢だったオートレーサーに、22歳で転向。折りしも『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)が始まった翌月のことで、SMAPは国民的グループへと飛躍しつつあった。その後はオートレースひと筋に活動してきたが、2017年には新しい地図の3人とネットテレビでの共演が実現している

 久々の共演といえば、この年、別の元ジャニーズも話題になった。’90年代後半のJr.黄金期を滝沢秀明らとともに担った小原裕貴だ。こちらの引退はタッキーよりもはるかに早い。人気実力とも申し分なく、世代的には嵐のメンバーになっていてもおかしくなかったが、正式デビューしないまま、2000年にJr.を卒業。3年後に大手広告代理店に就職した。が、かつて出演した『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系)の続編が作られるにあたって、この作品のみで復帰。二宮和也は自身のラジオで、

「すごくない? 一般の人がドラマに出る。現場も裕貴くんに合わせてスケジュールが組まれてる。有休、ほとんど使ったらしいよ」

 と、興奮していたものだ。

 男性アイドルではほかに、西尾拓美のようなパターンも。CHA-CHAで活躍後の’96年に引退。その翌年、西村知美と結婚し、現在は飲食店のオーナーだ。

 また、今年5月にはw-inds.の緒方龍一が「心身症」を理由に活動を休止した。

 女性アイドルでは、橋本奈々未の引退がいまどき珍しいものだった。乃木坂46に入った目的が自身と家族の経済的苦境からの脱出だったため、そのメドがついたことで卒業。

 引退の事情で明暗が激しく分かれているのが、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)系である。吉澤ひとみのように不祥事(飲酒運転と轢き逃げ)で芸能界を去った人もいれば、松浦亜弥のように結婚で活動休止した人もいる。ただし、あややはこのとき、

《今年の冬で12年の付き合いになりますが、私の青春には、すべて彼がいます。悲しいこと、辛いこと、嬉しいこと、楽しいこと全部です》

 と、デビュー数か月後から交際していたことまで明かしてしまった。彼女に青春を捧げた男性ファンには、泣きたくなった人もいたことだろう。

 最近は、尾形春水がモーニング娘。時代のダイエット経験をユーチューブで告白。その流れでワイドショーに取り上げられたりしている。ただ、ハロプロファンのなかには、引退した人が昔の看板を利用しているとして快く思わない人もいるようだ。

 その点、意外と潔かったのが、幼児教育の道に進むため、3年前に引退した、ももちこと嗣永桃子。アイドル活動をしながら、大学で教員免許も取得していたという

 ところで、ももちと同じ道を今、目指しているかもしれないのが、大橋のぞみだ。ジブリ映画『崖の上のポニョ』の主題歌でブレイク。NHK紅白にも2年連続で登場した国民的子役だが、小学校卒業を機に引退してしまった。

 そこには、自他ともに認める恥ずかしがり屋な性格に加え、同じく子役をやっていたという祖父の《あまり長くいちゃ駄目。ボロボロになってから辞めても、普通の社会の常識とか身についてないからその後の人生が大変》(『週刊文春』)という助言が影響していたようだ。

 そんな彼女は9歳のとき「保育園の先生になりたい!」と語っていた。とはいえ、まだ21歳。人生はこれからだ。

理由が笑えない人も芸人・タレント編

 続いて、芸人・タレント編。面白さが売りといっても、引退理由が笑えるとは限らない。

 2011年に数々の人気番組を抱えながら、突如引退した島田紳助の場合、暴力団との交際報道がきっかけだ。ただ、それまでにも女性マネージャーへのパワハラや後輩芸人・東京03への恫喝といった騒動を起こしており、自ら潮時を察しての決断にも思えた。

 とはいえ、この引退で困ったのは本人よりもmisonoや野久保直樹、山田親太朗といった『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ系)に出演していたおバカ系タレントだろう。後ろ盾を失って、軒並み失速するハメに。一方、紳助はそれまでに稼いだお金で悠々自適の生活だし、復帰待望論もある。

 悠々自適の生活といえば、紳助が師と仰ぐ上岡龍太郎もそうだ。ただし、こちらは不祥事が原因ではなく、自らの公約を実行しただけだった。それは、芸能生活40年、2000年の春になったら隠居するというもの。以来、表舞台に姿を見せたことはない。

 しかし、最近『おかべろ』(フジテレビ系)でその近況が明かされた。実は兄弟漫才師のミキは上岡の甥にあたり、法事の際のあいさつをミキの母(上岡の妹)がこっそり録音したのだという。それを聞かされたミキのふたりいわく、

昴生「まんまでした。パペポ(『鶴瓶上岡パペポTV』日本テレビ系)のときの」亜生「もう、すらすらすらすらーっと。読んでるみたい、何かを」

 立て板に水のようなよどみのないしゃべりは、78歳の今も健在のようだ。

 が、上岡のようなキレイな去り方は珍しい。なかには、大橋巨泉のように「セミリタイア」という言葉を使ってテレビにちょくちょく出続け、閉店セールを年中やっていると揶揄された人もいる。

 目立つのはやはり不祥事で引退というパターンだ。そのひとりが、山口達也。MCを務める『Rの法則』(NHK Eテレ)に出演していた未成年タレントへの強制わいせつ事件で引退した。この番組には10代後半の少年少女が多数出演しており、そこには後輩ジャニーズもいたが、これが原因で打ち切り。この件がなければ、田中樹やジェシーももっと早くブレイクしていたかもしれない。

 ほかにも、羽賀研二(未公開株詐欺と恐喝)やキングオブコメディの高橋健一(女子高生の制服の窃盗など)が不祥事で消えた。

 また、今年7月には、ユッキーナこと木下優樹菜が引退。原因は昨年、姉が勤務していたタピオカ店の店長を恫喝したことと不倫報道だ。謹慎を経て、活動再開を発表した5日後に決断という迷走ぶりも不可解だった。

 3年前には、江角マキコ不倫報道に対応するなかで引退。彼女は今年も、別の不倫で騒がれている。しかし、不祥事はそれ以前にもあった。長嶋一茂との「落書き」トラブルだ。

 これは2012年、長嶋家の壁に「バカ息子」という落書きがされたことについて、2年後、江角のマネージャーが自分の仕業だと告白したというもの。これが打撃となり、引退時には仕事は激減していた。

 皮肉なのは、長嶋が売れ続けているため、この落書き騒動がよくネタになり、これで引退したかのようなイメージが存在することだ。もっとも「不倫で引退」「バカ息子」で引退、どちらが江角にとって好印象かは不明だが!?

ドラマチックな引き際?役者編

 では、役者の引退はどうか。国民的ヒロインとまで呼ばれる「朝ドラ女優」にも意外とあっさりやめた人がいる。

 例えば『梅ちゃん先生』の堀北真希。これはまぁ、寿引退という、最近では珍しい百恵パターンだが、謎めいていたのが『おんなは度胸』の桜井幸子だ。それ以降も『高校教師』(TBS系)など野島ドラマの常連として活躍したあと、結婚、離婚を経て、2009年にこんなコメントを発表した。

十数回海外の仕事を頂き、また、数回の海外留学の経験をさせて頂きました。これらの経験が契機となり、数年間考えた末に今回の決断に到りました

 今後は《より一層社会的見聞を広め、社会に貢献できる個人を目指していく》という。

 その2年前には朝ドラ『オードリー』の岡本綾が引退。事務所によれば、本人から、

「女優として内から引き出すものがなくなり、表現者としての限界を感じている。1度、自分自身を見つめ直す時間がほしい」

 という申し出があったという。ただ、スキャンダルとの関連も取りざたされた。これは前年、中村獅童が飲酒運転で検挙された際、元・交際相手の岡本が同乗していたというもの。獅童はその約1年前に竹内結子とできちゃった結婚しており、メディアは三角関係か、という見方もした。ちなみに、竹内は岡本の2作前の朝ドラ『あすか』のヒロインでもある。

 女優ではほかに、宝生舞が10年前に引退。

これからの人生、『宝生舞』としてではなく、 また『役』としてでもなく自分自身をしっかりと確立させるため、この度の決断に至りました

 というのが理由だった。桜井や岡本にも通じる「自分探し」引退である。

 一方、男性の役者では不祥事、それも犯罪絡みの引退が目立つ。加勢大周は覚せい剤取締法で逮捕されたことから、成宮寛貴は薬物疑惑を報じられたことから、芸能界を去った。

 成宮はゲイ疑惑が報じられたことにもショックを受けたようで、

この仕事をする上で人には絶対知られたくないセクシャリティな部分もクローズアップされてしまい、このまま間違った情報が拡がり続ける事に言葉では言い表せないような不安と恐怖と絶望感に押しつぶされそうです

 と、表明。現在は自らデザインした商品のプロデュースなどを行っている。

 また、11年前に合成麻薬を一緒に服用したホステスが死亡した事件で引退した押尾学は、今年、再注目された。コロナ禍による再放送ブームで『やまとなでしこ』(フジテレビ系)が放送され、彼の出演シーンも映ったのだ。

 ただ、本人は芸能界復帰をあきらめ、定職についているらしい。

名曲を残していった歌手編

 最後は、歌手編。おバカタレントとして再ブレイクしたために、演歌歌手としてのアイデンティティーが揺らぎ、引退したのが香田晋だ。

精神科にも通っていましたから。バラエティー番組では明るく振る舞っていたけど、僕の心の中はズタズタで」(『週刊女性』)

 その後、飲食店経営を経て、現在は僧侶になっている。

 また、バンドなど音楽グループの場合、解散によって全員もしくは一部メンバーが引退することになりがちだ。女の子バンド・ZONEは2005年に解散。その後、再結成されたこともあったが、活動中なのはMAIKO(現・MAI)のみである。今年6月、妊娠したことがニュースになった。

 そして、ここ数年、最もインパクトのある引退をしたのが安室奈美恵だろう。2017年9月、40歳の誕生日に1年後の引退を発表。『NHK紅白』での歌唱で瞬間最高視聴率を記録するなど数々の伝説を作り、芸能生活の有終の美を飾った。

 が、彼女の心に引退の2文字がよぎったのはこのときが初めてではない。1999年に実母が義弟(母の再婚相手の弟)にあたる男性に殺害された際《もう歌うことも『安室奈美恵』でいることもやめたいと思った》と振り返っている。

 彼女は一時期、母の命日や息子の名前をタトゥーにしていた。無残なかたちで死別した母と、シングルマザーとして育てる息子のことは何より大事なのだろう、それが2年前の引退にも影響を与えたのではないか。

 というのも、彼女の決断は、もうひとりの伝説的歌姫の引退を思い出させるからだ。その歌姫とはちあきなおみ。『喝采』で日本レコード大賞にも輝いた名歌手だが、1992年、夫が病死したことを機に、芸能活動を停止し、表舞台にもいっさい登場しなくなった。

 ちなみに『喝采』は恋人を亡くした歌手の哀しみを描いた曲。ちあき自身にもその時点で似た経験があり、歌うことに抵抗を示したという。そこに、最愛の夫の死まで加わったことで、彼女は人生を切り売りするような歌手という仕事に、耐えられなくなったのかもしれない。

 安室の場合も、母が殺された12日後に生の歌番組に出演。そんな歌手としての生き方に疲れ、本当の幸せについて自問自答を繰り返してきたのではないか。その結果、たどりついたのが40歳を区切りに公人としての歌手をやめ、私人として生きるという選択だったとも考えられる。

 そんな安室やちあきの引退は、哀しくも美しい。冒頭で、美しい引退の条件に「惜しまれ続けること」と「スキャンダラスでないこと」を挙げたが、もうひとつ加えてもよさそうだ。それは、「本当の幸せのための決断であること」である。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。

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