「毒親の面倒をみたくない」「PTA参加を強制」弁護士に聞く主婦トラブル対処法

週刊女性PRIME / 2020年9月3日 11時0分

イラスト/シライカズアキ

 夫婦問題に子どもとの関係、老いていく親──心配が尽きない主婦世代。こんなとき、何をどうすればいい? どこで誰に相談すればいいの? トラブル別に役立つ法律、寄り添う制度を辣腕弁護士に聞きました!

家庭のトラブル編

夫に性病をうつされた! 慰謝料、請求できますか?

「性病をうつすのは傷害にあたり、治療費や慰謝料を請求できる可能性があります。額はケースバイケースですが、数十万円程度だと思います」

 そう教えてくれたのは、インテグラル法律事務所の小沢一仁弁護士。夫に性病をうつした女性にも、慰謝料を払わせたいんですけど?

「妻に性病を直接うつしたのは(夫と性交渉をした)女性ではないので、うつしたことを理由に慰謝料請求をするのは困難と思われます」

 ただし、性病をきっかけに不倫が発覚、離婚に……ということになれば話は別。

「不倫は、不倫をした夫と相手による共同不法行為なので、両方に慰謝料を請求できます。結婚期間や子どもの有無などによって変わりますが、夫と不倫相手、合わせて200万円前後が目安ですね」

養育費を払わない元夫を「逃げ得」させない方法は?

「子どもを元妻が引き取ったとしても、元夫にも親として子どもの生活を支える義務があります。当然、養育費を払わなくてはなりません」(小沢弁護士)

 それなのに、厚生労働省の'16年調査によれば、養育費を受け取っているシングルマザーは、たったの24%という世知辛い現実……。がっちり養育費を受け取るには、どうすれば!?

「離婚の話し合いで養育費について決めて、公正証書に残しておくのがおすすめです」

 公正証書とは公証人に作ってもらう公文書で、法的な拘束力があるので心強い。

「公正証書には、養育費の金額や支払い日、期間などのほか“強制執行認諾文言”(支払いが滞ったら、給与を差し押さえられてもかまわないという手続き)や、転職・転居したら連絡するといった項目も入れることをお忘れなく」

 養育費は子どもの権利。1度は断った場合でも請求可能なケースがあるので、まずは弁護士に相談してみて。

跡取りだけ優遇「孫差別」をやめさせるには?

 跡取りの孫だけを大事にするジジババ。小遣いや入学祝いなどで、ほかの孫と露骨に差をつけるのは不公平! やめさせたい!

「跡取りがいちばんというのは高齢者に多い価値観ですが、無理やり変えさせることはできないもの。小遣いに差をつけられるくらいなら、我慢するしかないのが現実です」

 そう話すのはシニアをめぐる問題に詳しい、法律事務所おかげさまの外岡潤弁護士。教育費の援助で大きな差をつけられたら?

「孫の教育は祖父母の義務ではないため、平等な扱いを強いることはできないんです。例えば長男優遇など、きょうだい間で金銭面のひいきがあれば、相続の際に差額を精算するよう主張できるのですが」

 もちろん、法的にNGな「孫差別」もある。

「跡取り以外の孫にご飯を食べさせない、叩く、暴言を吐くといった行為は、児童福祉法や虐待防止法の違反に。許されるものではありません」

親が老人ホームを追い出され、途方に暮れてます(涙)

 老人ホームで暴力をふるうなどの問題を起こして、親が退去を命じられた……。実は珍しくないというこんなケースには、外岡弁護士、どうすればいい!?

「退所を求められても、無条件に応じる必要はありません。まずは入居契約書を確認して、親の行動が契約解除の理由にあたるのかどうかチェック。契約解除されてもしかたのない行動があったとしても、問題行動を抑える方法を提案して、様子を見てほしいなどと交渉する余地はあります。施設にとって何が問題なのか、それを解消するほかの方法はないのか話し合って」

 最終的に出ていくことになったとしても、次の施設が見つかるまで待ってもらうことはできるそう。

「無理やり追い出すと、施設側が保護責任者遺棄罪に問われる可能性があります」

 逆に、ケアマネやヘルパーに不満があったり、介護のやり方に納得いかないときは?

在宅介護なら、事業所に言えばわりと簡単にケアマネやスタッフを変えてもらえるはず。施設の場合は、介護の契約内容によります。スタッフのチェンジが難しい場合は、施設に改善をお願いしましょう。場合によっては虐待防止法に基づいて市区町村に調査を求めるという手もあります。ただ、法的責任を追及して親の居心地が悪くなる可能性も。できるだけ話し合いでの解決を目指して」

「毒親」の面倒、子どもがみないといけませんか?

 暴言・暴力や過干渉で支配する毒親。それでも老後は、子どもが面倒をみなきゃダメですか?

「自分の生活を犠牲にしてまで面倒をみる必要はありません」(外岡弁護士、以下同)

 “家族は、お互いの面倒をみる義務がある”と民法で定められてはいるけれど、「面倒をみる義務を扶養義務と言いますが、これには2つの段階があります。まず、自分と同じ生活レベルで面倒をみなくてはならない『生活保持義務』。2つ目が、自分の生活に余力があればサポートするという『生活扶助義務』です。

 未成年の子ども、夫婦間については生活保持義務があります。一方、自分の親に関しては生活扶助義務にとどまるため、余力がないのに無理をする必要はありません

暮らしのトラブル編

主婦が暗躍するネットの「特定班」法的に許される?

 世間を騒がせた人物の身元を探り出し、ネットにさらす「特定班」。「迷惑なやつなんだから当然の報いでしょ!」と考えたくなるけど……。

「警察や報道機関がすでに公表している以外のことを調べ、公表することは“プライバシー権の侵害”や“名誉毀損”にあたる可能性があります」

 そう小沢弁護士は警告する。悪いやつにおしおきするつもりが、自分が違法行為をしていた──なんてことに!

 そればかりか、相手から損害賠償や慰謝料を求められる可能性だってある。

「デマはもちろん、たとえ真実でも、公表されていない情報は拡散しないことです」

 公表ずみの内容に関する書き込みでも、こんな注意点が。

「事実をもとに人をけなす行為も名誉毀損や侮辱になることがあります。“この行動はおかしい”といった事実への感想なら大丈夫ですが、“あんな行動をするなんて気が狂ってる”などと人格を非難する書き込みはNG。ネットの書き込みに対しては最近、複数の事業で問題点が浮き彫りにされており、司法の判断が厳しくなる可能性もあるので、いっそうの注意を」

 自分が書き込んでいなくても、他人が書き込んだ悪口や未公開情報を「リツイート」などで拡散するのもNG。軽い気持ちや善意で拡散したとしても、「結果として悪口のビラをコピーしてばらまくのと同じです」(小沢弁護士)

「自粛警察」に脅されたらどうすればいい?

 コロナの終息が見えない中、店や自宅に「自粛しろ」などと貼り紙をされる、苦情の電話が何度もかかってくるといった被害があとを絶たない。こうした「自粛警察」に、どう対抗すればいい?

「議論しても、相手の行動がエスカレートする可能性が大。基本的には相手の主張を聞いて、“参考にさせていただきます”と受け流すことです」(小沢弁護士)

 ただし、自粛警察の内容次第では罪に問えることも。

「罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせると侮辱罪に、“店を閉めないと、どうなるかわかっているんだろうな”などと脅した場合は脅迫罪になる可能性があります。また、ガラスを割ったりすれば器物損壊罪に、クレーム電話も回数や内容によっては威力業務妨害に問われる可能性が。実際に被害が生じた場合は警察に相談してください」

 その際に重要なのが、防犯カメラなどを使って、いつ、誰に、何をされたか記録し、証拠を残しておくこと。

「相手に損害賠償を求めたりする際も、証拠が必要です」

子どものトラブル編

子どものスマホをこっそりチェック、親なら許される?

「わが子のスマホの中身を見ることは、マナーや良心の問題は別にして、法律面でいうと基本的にはセーフです」

 とは、子どもを取り巻く問題に詳しい、レイ法律事務所の高橋知典弁護士。プライバシーの侵害にならないの?

「日本の家族関係で、プライバシー権を理由に慰謝料の請求が認められた例はほとんどありません。ただ、メールサービスなどのIDやパスワードを入手して中を見ようとすると、不正アクセス禁止法の違反になるおそれが」

 ただ見るだけならOKでも、スマホのロック画面にパスワードを入力して解除する行為は、法的にグレーだとか。

「子どもにスマホを与えるときに“親がチェックするからね”と、前もって了承させておけば問題ないでしょう」

しつけのためなら叩いてでも言うことを聞かせるべき?

 ときには親が叩いて教えることぐらい、アリですよね?

「いいえ。今年4月から児童福祉法等の改正で保護者による体罰そのものが禁止になりました。叩く、蹴るはもちろんダメ。厚生労働省は正座や食事抜きも体罰としています」

と、高橋弁護士。親には子どもの教育のために叱る『懲戒権』が認められていて、ある程度の体罰は黙認されてきた。しかし、千葉県野田市の女児虐待死など相次ぐ親からの虐待事件を受けて、法律が変えられたというわけだ。

 虐待は確かに問題だけど、デコピンの罰なら許される?

「ちょっとわかりません(笑)。今後の裁判の積み重ねによって、OKとNGの線引きが明らかになっていくのでは?」

クジ引きでPTA役員に……そもそも入らなきゃダメ?

「本来、PTAは任意加入団体で、入退会は自由です。入らなくてはいけない空気になっているのがおかしい」

 そう高橋弁護士はキッパリ。でも、PTAに入らないと「子どもを登校班に入れてやらない」「運動会の記念品を渡さない」などと言われることも……。

「PTA会費で賄っている記念品を渡さない行為は、会員と非会員の負担の差を考えて許容されることも。ただ、登校班に入れないというような、安全を阻害する判断は不適切。そもそも登下校の安全の確保は学校側の責任です。PTAに加入しない保護者の悪口や個人情報をベラベラしゃべるのも違法行為になりえます」

子どものいじめに被害者の親は何ができる?

「まずは学校に相談を。どんな状況か調査し、加害側の子どもへの指導をしてもらうのです。学校より先に、いじめた側の親に直談判するのはおすすめしません。話が通じる相手とは限りませんし、逆ギレされるだけのことも。それに親同士がもめると、学校は介入したがりません」

 と、高橋弁護士はアドバイス。相談した先生が、まったくアテにならないときは?

「学年主任やスクールカウンセラー、校長にも相談しましょう。その際、父親など男性についてきてもらうことも効果的。学校は男性の保護者に慣れていなくて、緊張感を持って対応してもらえる可能性が高い。それでだめなら、警察や弁護士に連絡を。頼れる人に当たるまで相談相手を増やしていくことが大事です」

 14歳未満の場合、刑事罰の対象にはならないけれど、加害者の親に損害賠償を請求できる。ケガをさせられたときは病院で診断書をもらうなど証拠を残しておこう。

仕事のトラブル編

派遣社員の私も「退職金」ってもらえるの?

 給料アップも望めないのに、ましてや退職金なんて……と思っていたら、「法改正で派遣社員も退職金をもらえるように」という朗報が!

「いま、正社員と非正規の不合理な待遇格差をなくす『同一労働同一賃金』を目指して、さまざまな法律が整備されていることは確かです。でも、法の抜け道が多く、格差は解消しそうにありません」

 と、労働問題に詳しい旬報法律事務所の佐々木弁護士は渋い顔。残念ながら、派遣元企業と派遣社員の過半数が合意すれば、退職金は派遣元の決めた水準にできてしまうのだ。それに不満でも立場の弱い派遣社員は抵抗しづらい。

「ただ、近ごろはパートで働く女性たちが格差解消を求めて裁判を起こすなど、さまざまな動きが展開されています。非正規でも簡単に会社からの要求をのまず、労組などと協力しながら待遇改善を求めていきたいところです

パートのシフトが激減! コロナだからしかたない?

「パートの時間を減らされそうなとき、まず確認してほしいのが労働の契約内容。“〇曜日の〇時から〇時まで”という契約で働いているなら、それを会社が一方的に変えることはできません」

 と、佐々木弁護士。泣き寝入りは不要。会社から契約分の給料をもらう権利がある!

「ただし、勤務時間が“シフトによる”といったあいまいな内容だと、契約違反とするのは難しいです」

 会社ともめたときは、どうすればいい?

「契約内容を勝手に変えられそうなときは労働基準監督署へ。職場に何らかの指導をしてくれるかもしれません。社内の労働組合に加入できる場合は労組へ。あるいはパートも入れる労組や、労働問題に強い弁護士などに相談してみてください」

気に入らない上司をディスってもパワハラじゃない?

 嫌いな店長の悪口を言いふらしても、パートの私なら大目に見てもらえるよね?

「いいえ、部下から上司に対する暴言もパワハラになりえます」

と、佐々木弁護士はキッパリ。相手が誰であれ、ダメなものはダメなのだ。

「パワハラの定義には“優越的関係を背景に〜”との説明がありますが、人間関係を総合的に見ると必ずしも上司が強い立場とは限りません。部下から上司への嫌がらせはもちろん、暴力もNGです」

 今年6月からパワハラを禁じる法律が施行されたばかり。特に注意したいのが、「昔の体育会系のノリで若手を鍛えると、ハラスメントと感じさせる可能性が高い」こと。

「“結婚しないの?”“子どもはまだ?”といった発言もハラスメントになりえます」

転勤を断った夫が減給! 降格! あげくクビに!

「実は会社には、社員に転勤を命じる権利があります。例外は、採用のときに“勤務地限定”の契約を結んでいたケース。この場合は、転勤を命じることは会社側の契約違反で落ち度に。まずは契約内容の確認を」(佐々木弁護士)

 一般社員が転勤を断ったら給料カットはしかたない?

「“業務命令違反”を理由に減給されるかもしれません。ただ、給与カットには従業員の合意が必要なので、減ったとしても数か月でしょう。一方、降格はありうる話ですね。クビは、会社が何回か警告をすれば可能になります」

 ただし反撃の方法はある。

「例えば報復人事としての転勤なら、命令を無効にするよう争う余地はあります。いったん命令を受け入れ、転勤してから裁判を起こすのです」

意外な違法行為

 うっかりではすまされない、日常生活に潜むNG行為を小沢弁護士が解説します!

■夜のうちにゴミ、出しておこう

 ゴミに関する法律「廃棄物処理法」の違反にはなりますが、収集日の前夜にゴミを出すぐらいだと実際に罪に問うのは難しそう。自治体の条例やマンションの規約で決まりごとがあれば、それをもとに改善を要求することはできます。とはいえ「好き勝手に出しちゃえ!」は、ご近所トラブルのもと。やめておきましょう。

■行列に割り込むぐらい許してよ……

 軽犯罪法では行列への割り込みを禁止しています。ただ、それには「乱暴な言動」などで、ほかの人を怖がらせての割り込みという条件が。そのため、すっと横入りしたくらいで軽犯罪法違反になるのかは疑問です。お店などが行列を管理していて、それに従わない場合は業務妨害が成立する可能性があります。

■自販機の取り忘れドリンク、もらっちゃえ

 落とし物や忘れ物をネコババすると、占有離脱物(遺失物)横領または窃盗にあたる可能性があります。自販機に忘れられたドリンクは、自販機の管理業者に届け出るのが正しい対応。また、過去には忘れ物と見せかけたドリンクに毒が入っていたという事件がありました。悪質ないたずらの可能性もあるので注意!

■病院で出された薬、余ったからあげる!

 薬局でもないのに、他人に薬を渡すと薬機法違反になるおそれが。渡す薬の成分によっては、薬物の取締法に触れる可能性もあります。何より、その薬を飲んで相手が健康を害したら、過失致傷罪、過失致死罪になりかねません。命にかかわりかねないリスクがあることを、くれぐれもお忘れなく。

(取材・文/鷺島鈴香)

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