大相撲・横綱審議委員こそ制度改革が必要、ファンの怒りを買った「時代遅れな発言」

週刊女性PRIME / 2020年10月2日 18時0分

横綱・鶴竜と横綱・白鵬

 正代(しょうだい)の初優勝に大関昇進という喜びが重なって終了した大相撲9月場所だが、終わった直後の28日に開かれた横綱審議委員会(横審)での矢野弘典委員長の発言に、相撲ファンから抗議の声がツイッターにあふれている。

もう、この組織はなくすべき

 横審の発言はこれまでも度々、物議をかもしているが、今回、代表取材に応じた矢野委員長が言った、

「横審の内規に基づいた処分をするかどうかまで踏み込んだ、たいへん厳しい意見も出たが、そこまで今場所は踏み込まないことにした。(白鵬と鶴竜の)両横綱が自覚を持つことに注視していく。両横綱は場所を全うする回数も多くなく、過去1~2年を振り返っても断続的に休場が続いている。第一人者としての自覚をもっと徹底してほしいと、たいへん厳しい意見がでました

 という発言に、ファンたちが怒っているのだ。

「横審にも内規を作ったらどうだ? 『本場所並びに稽古を見ないものは即刻除名』とかね」

「いやいや怪我なんだから、仕方ないやん。じゃ、あんたら35歳で横綱として土俵上がってみろよと。貴乃花は7場所連続休場でも処分されてないよ!? 横綱は神とか言うくせに、その神を咎めるなんてとんでもない連中だわ。横審はずっと中止で良かったわ」(千朝石豊さん)

「白鵬→三月優勝 鶴竜→三月次点  稀勢の里自身に非は全くない事を予め言っておきますが、稀勢の里の時の長い目で見守りましょうと扱いが違い過ぎるだろ、、、。国際問題起こす気か? 両横綱は今年いっぱい休んでOKで何だかんだ言うのは初場所後で良くないかい?」(茶臼さん)

「生きてるだけで大変な毎日なのに、なんとか誤魔化しながら呼吸し続けているのに、その生きるよすがにしている横綱を、生きる希望を与えてくれている横綱を、よくわかってない横審のオッサンたちにボロくそ言われたら、そりゃ怒りますよ」

 さらにジャーナリストの江川紹子さんは、「横審こそが、横綱の地位を貶め、人々の横綱への敬意を失わしめているのではないかと、何年も苦々しい思いをしながら見ていた。もう、この組織はなくして、協会への意見は別の形で吸い上げるようにすればよい。制度改革が必要」とツイートした。

 横審の内規では、成績不振や休場が続く横綱に対して横審の2/3以上の決議があれば「激励」「注意」「引退勧告」が出来る。最近では8場所連続休場した稀勢の里に「激励」を出したことがある。

 しかし、ファンは納得していない。なんせ無観客で開催された苦しい3月場所は白鵬が優勝、鶴竜が準優勝。先場所は初日のケガで鶴竜は休場したものの、白鵬は10日目までぶっちぎりの相撲でトップを走っていた。

 ずっと休場しているわけでもないし、ケガが理由で休んでいて、横審の内規には「休場の多い場合。ただし、休場が連続するときであっても、そのけが・病気の内容によっては、審議の上、再起の可能を認めて治療に専念させることがある」とされる。

 今回はそれを鑑みたのだろうか? 審議委員会であるなら、そうした審議過程のことも、もっと丁寧(ていねい)に説明するべきではないか。

横審が誕生したのは1950年

 また「日刊スポーツ」が報じたところでは矢野委員長は、「問題意識は(委員の)共通したもので横綱は立派であってほしい。休場しても地位が守られているのは国技の象徴であるから。横綱は特別な地位であり、権利だけでなく義務も伴う。ほかの力士より一段と高い自己規制の基準を持つべき」と言ってるようだが、そもそも国技ではないということを、そろそろ横審もきちんと本など読んで調べ、理解してから委員会に出席してほしい。

 八角理事長も、千秋楽の協会ごあいさつで「日本古来よりの伝統文化である大相撲」と言っていて、国技なんて言ってない。丁寧な説明義務、また委員としての地位にあるなら勉強してほしいのですが? と、いち相撲ファンとして心から願う。

 そもそも横審という制度、江川さんのおっしゃるとおり、すでに時代遅れなのではないだろうか? 

 横審が誕生したのは1950年。当時の3横綱が途中休場、その直前にはもう一人の横綱が引責引退していた。そこで生まれたのが横審だが、当時、相撲界に多大な影響力を誇ったジャーナリストの彦山光三氏は自著『横綱伝』の中で「大相撲協会は東京相撲記者クラブ員を招いて、横綱審議会の設置に関する懇親会を催した。むしろクラブ側の強い要望をこばみきれなかったためでもあったかもしれない」と、記者クラブからの要望で誕生したことを臭わせている。また、規約の基礎案はその彦山氏が考えて協会へ提出したことも記されていて、70年前にいちジャーナリストが出した規約に基づく組織に、今の横綱が縛られないといけないのだろうか?

 だいたい横綱は負け越したら引退となる。そんな、今どきの若者たちが果たしてその地位に就きたいだろうか?と、ときどきいぶかしく感じる。重責を背負う横綱である人を、さらに追い込むような審議委員会。そろそろ廃止してもいいんじゃないか? と感じる。稀勢の里だって、横審がなかったら、もしかしたら何か違ったんじゃないかと、今さらながら考える。

 また今の横審には女性がひとりもいない。昔の横審といえば作家が多かったが、横審制度を今後も継続するなら、作家の女性委員を望みたい。たとえば能町みね子さんや乃南アサさん、北大路公子さん、それにツイートを紹介した江川紹子さんなど、どうだろうか? 委員の半数は女性であるべきだ。

 

 今場所もコロナ禍に於ける特別な場所だった。7月場所と変わらず厳しい観客数制限が設けられ、ソーシャル・ディスタンスに気をつけること、常にマスク着用、声援は禁止で、拍手と力士の名前の入ったタオルを持つのみで、携帯アルコール消毒薬が配布され、cocoaのダウンロードが推奨されていた。私も7月場所よりはゆっくり見たが、それでも何度も手を消毒したり、友人と話をするのもいちいち廊下に出てからだった。

横審は理事長の言葉を聞いてないのか

 そんな中で横綱だけでなく、力士たちの休場も相次いだ。

 新型コロナウイルスの集団感染が場所前にわかった玉ノ井部屋が部屋全員で休場したほか、感染予防のために稽古環境が整わず、また7月場所から1か月半での開催で調整期間が短かったこともあってケガも多く、場所の最終盤には休場者が70人以上に登った。

 そうした特別な場所開催に際して、千秋楽での「協会ごあいさつ」で八角理事長はまず、新型コロナウイルス感染者とその家族へのお見舞い、さらに医療従事者たちへの感謝を述べてから、

「本日、無事に千秋楽を迎えることができましたのも、ひとえにみなさまの温かいご支援と、観戦対策にご対応いただきましたお客さまのご協力の賜物と厚く御礼を申し上げます。力士たちは先場所に引き続き、みなさまの心のこもった拍手をじかに感じて立派に土俵を務めてくれました」

 と、観客と力士双方への感謝と尊敬を表した。

 横審のみなさまは、理事長のこの言葉を聞いていたのだろうか? 聞いていたとしたら、そんな発言になるなんて、私にはとても思えないのだが。

 前述した相撲ファンの、生きてるだけで大変な毎日の中で、生きるよすがが横綱だというツイートを、審委員のみなさまにも知ってもらいたい。そういう相撲ファンは大勢いるし、私もそのひとりだ。

 コロナ禍にあって、8月には自殺者が急増した。これからどうなっていくか全く見えない。仕事や家がなくなり、「住居確保給付金」の拡充と改善を、支援団体が求めているような状態だ。

 そもそも11月場所が開けるのか? それだって、まだ誰にもわからない。そんなときに労いの言葉ではなく、次は引退勧告するかもよと臭わせるなんて。そりゃ真剣勝負のプロ・スポーツに厳しさが求められるが、横審の意見には一貫性が見られず、丁寧に内規を踏まえているようにも思えない。それに興行でもある大相撲を支えるファンの気持ちを想像してほしい。

 安定した仕事があり、明日のお金に困らない名誉職の方々、もう少し庶民の気持ちを考えてください、とお願いしたい。


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。

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