“運命の恋” だと錯覚して女性につきまとい、「本物のストーカー加害者」の告白

週刊女性PRIME / 2021年2月4日 5時0分

※写真はイメージです

「男性は60代。彼と奥さんの関係は冷え切っていました。そんなときに、仕事先で出会った女性に恋をし、ストーカーになってしまいました」

 あるストーカーのケースを明かすのは『ストーカーリカバリーサポート』の守屋秀勝代表(55)。加害者たちが更生するための支援を続ける。

 冒頭の男性は相手の女性を運命の恋の相手だとでも思ったのだろうか……。

「警察によると加害者の比率は男性が81・2%。女性が12・1%。つまり男性がストーカー化するケースが圧倒的に多い」(前出の守屋さん)

 年齢は20代が34・5%で最多。ついで30代、40代と続くが、中には50代以上の「ストーカーおじさん」の姿も。分別があるはずの大人たちがストーカーに走っている。

 叶わぬ恋に燃え、純愛のように錯覚。相手の気持ちを無視したイビツな形でアプローチを続ける──。

暴力と恐怖で支配、加害者に怯える女性

 会社員の東美奈子さん(仮名・40代)は交際もしていない男性のA(46)からストーカー被害を受けている。

 出会いはインターネットの趣味の掲示板だった。

「オフ会で出会い、メールアドレスを交換しました。数か月に数回ほどメールや電話で趣味の話をするくらいでした」

 社交的で明るく、友達も多い美奈子さん。同じ趣味の友人としてAとも2人で会うようになった。すると彼は好意を寄せるようになり、「好きになった」と告白してきた。

「彼氏もいたし、“無理だ”と何度も断っていました」

 些細な口論がきっかけでAの好意は暴力を伴うものに変わる。まず24時間鳴りやまない電話攻撃が始まった。

「私の職場にもひっきりなしに電話をかけてくるんです」

 煩わしくて無視すると、今度は美奈子さんの実家や友人らの電話番号まで調べて何度も電話をかけた。さらには「彼氏と別れろ」「殺すぞ」などと脅してきた。

 次に美奈子さんの行動が監視されるようになる。行く先々で「今、どこ?」と連絡がきて、行き先を教えるよう迫ってきたという。

「Aは近所のスーパーなど片っ端から電話して、私が立ち寄っていないかを調べていました……」

 さらには「さっき〇〇にいただろ」などと居場所までも特定されるようになる。

「これから死ぬ」と自殺未遂をしたことも

 気味悪く思っていた美奈子さんだったが、自宅にスマホを忘れたときに「今、家にいるだろ」と連絡が入っていたことからスマホに細工がされていたことに気づいた。

「Aは私のスマホに勝手にGPSアプリを入れ、私の居場所がわかるように設定していました」

 美奈子さんは何度も縁を断ち切ろうとした。するとAは時間かまわず美奈子さんの自宅や職場、友人のもとにまで押しかけた。「これから死ぬ」とメールを送り、自殺未遂をしたことも。心配して会ってしまうと殴る蹴るなどの暴力、刃物をチラつかせたり、タバコの火を押しつけられた。

 何をされるかわからない、周囲にも危険が及ぶのではないかとパニック状態になり、眠れない日が続いた。

「警察に何度被害を訴えてもAは“付き合ってます。ケンカしただけです。迷惑かけてすみません”と謝罪して、警察もそれを信じてしまいました。Aとは交際なんてしていません! いくら言ってもダメだった……。そんなストレスで食事も満足にとれず10kg近くやせました」

 警察は「すぐ逃げなさい」とはいうものの「被害届は受け取るけどすぐには捜査できない」との一点張り。

「私が殺されない限り、この恐怖は永遠に終わらないと思いました……」

 絶望の淵にいた美奈子さんに光が見えたのは、重い腰を上げた警察がようやくAに“接近禁止”を命じたことだ。

「私に接近すればAは逮捕されます。それを恐れて手を出してこなくなったので、そのすきに逃げました」

 現在、地元から離れた地で穏やかな生活を送っている。

「いまでも、Aと似たような背格好の人を見ると、あいつが連れ戻しに来たのでは、と身体がこわばります。できるなら……死んでほしい」

 美奈子さんは傷害などの疑いでAを告訴したが、警察による捜査は始まっていない。

 美奈子さんによると、Aは妻子と離別し友達もいない天涯孤独の身。彼女の親切心を恋心と勘違いし人生をめちゃめちゃにした身勝手さ。とうてい許されるものではない。

追いかけるのは忘れられない元カノ

「理由もなく、人と離れることが僕は悪いと思っているんです。考え方が違っても、すり合わせの機会ぐらいないと世の中、成り立たない」

 そう持論を展開するのは会社員の北澤サトシさん(仮名・40代)。彼は交際相手に執着する傾向がある、元ストーカー加害者だ。

 きっかけは高校時代の彼女Bさんとの交際だった。

 サトシさんはBさんにだけ打ち明けた秘密があった。小学校から高校まで、性暴力を伴ういじめを受けていたことだ。彼女なら「受け止めてくれる」と期待していたが、「私には重すぎる」と言われ、関係がギクシャクした。

 高校を卒業しサトシさんが専門学校に進学したころBさんから「お互い違う学校へ行くようになった。将来のために勉強に集中したい」という別れの手紙が届いた。しかしサトシさんは復縁を迫った。

「話したかったんです。何度も電話をかけ、家にも行った。駅で待ち伏せもしました。彼女に負担をかけたので、謝ろうとした。別れたくない。話せばわかると思っていました」(サトシさん、以下同)

 だが、数か月後、警察に通報された。当時は「ストーカー行為等の規制に関する法律」がない時代。今では考えにくいが口頭で注意されたのち、警察官立ち会いで、話すことができた。だが、Bさんは黙ったままだった。

「頭では嫌われているとわかっていたんですが、会って、顔を見て、わかりました」

 以後、Bさんに直接アプローチすることはなくなったが、「わかってくれなければ死のう」と自殺未遂をした。

自暴自棄になり、路上で痴漢行為を繰り返す

 さらに自暴自棄で路上で痴漢行為までも繰り返した。

「夜中に若い女性を狙って痴漢を繰り返しました。僕をいじめていた加害者は誰も罰を受けていない。だから自分も捕まるとは思っていませんでした。痴漢をすると、被害者は驚いて悲鳴を上げました。性的興奮がないわけではないですが、いじめを受けた僕の気持ちを思い知らせることができ、目的は達成しました

 自分勝手な理由で女性の尊厳を踏みにじる卑劣な行為。

 その後、痴漢行為について警察が知るところになる。罪の意識はなく、自ら話したことで加害が特定。ケガをした被害者もおり、強制わいせつ致傷で逮捕された。有罪となり、6年の実刑を受けた。

「当時は自分のいじめ被害のことを考えたり、『Bさんがわかってくれさえすれば救われたのに』と思ってました」

 出所後、別の女性と交際したが1年後に突然、「別れたい」。電話は着信拒否され、メールやLINEもブロックされ、音信不通になった。

「彼女と話したい」という思いを残しつつも問題解決ができないことを悟ったため、性依存症者の治療をするクリニックを受診。主治医から行動はしていないが、考え方はストーカーだと言われた。

 カウンセリングや治療を続けても状態は改善されない。友人から「次の恋愛に向けばいい」とアドバイスされた。

 その後、知り合った女性と2年前に結婚、子どもも生まれた。妻はサトシさんがストーカー体質であることを知っている。しかし、最近になって妻から離婚届を突きつけられた。Bさんへの恋心が再燃してしまったからだ。

「妻は生活のパートナーとしてはよい相手です。しかし、恋愛対象はBさん。彼女を忘れるために結婚をしましたが、彼女のことばかりが思い浮かんでしまうんです……」

恋愛のスイッチバグ、誰でもストーカーに

 ストーカー加害者の支援活動を行う守屋さんも実は元ストーカーだった。28歳から48歳までで合計6件の加害行為を経験しているのだ。その間、自身も結婚している。

「ストーカーの心理状態は対象の人物(女性)から見捨てられることをひどく怖がる。だから意中の相手から温かいメールが来るまで、何度もメールを打ち続けてしまう。反応があれば成功体験になり、ストーカー行為はエスカレートします」(以下、守屋さん)

 守屋さん自身もSNSや電話などを1日200〜300回繰り返したことがあった。

 警察に介入されて、ようやく、加害行為が止まった。ストーカー規制法違反で警視庁から書面警告を受けたのだ。

「会えないことが苦しいので入院先を探しました。被害者へのサポートやカウンセリングは多いのですが、加害者の更生サポートは皆無に等しかった。入院中に考えたのは、ストーカー加害者が納得して治療を進められるサポート団体を作ること。自分のような当事者がまずは回復をしなければならないと思いました」

 だが退院後に自暴自棄で「意中の相手を殺して楽になるか、更生を自分の力でするか」と考えていたこともある。

 選んだのは更生の道だ。

 心理学を学ぶと「いつまでも彼女に執着しているのはダメだ」と目の前が明るくなった。定職にもつき、'16年4月から、精神科医らとも連携しながら現在の活動を始めた。

 守屋さんによるとこれまでのケースのストーカーは分類ができるという。

 美奈子さんのケースは'13年10月8日に東京・三鷹市で起きた別れた女性を殺害した事件のような「破綻型」に近い。サトシさんや守屋さんは相思相愛の恋愛感情を期待する「妄想型」にあたる。恋愛のスイッチが歪めば誰でもストーカーになりかねない。だが、社会復帰はできる。

「適切な医療機関などで治療をしましょう。ストーカーは家族に見捨てられることが最大の恐怖なので、夫や家族がストーカー行為をしていたことがわかっても責めてはいけません。話を聞きましょう」

 大切なのは加害者が自らの罪を見つめ、反省すること。

「その身勝手な行為が被害者に一生消えない深い心の傷を負わせたことを自覚。贖罪と回復のための行動を起こさなければストーカーの悲劇は社会からなくなりません」


守屋秀勝さん 任意団体『ストーカーリカバリーサポート』代表。自らも元ストーカー加害者。被害者への贖罪の思いもあり、医療機関などと連携し、加害者の更生に関する業務を担う。メディアなどへの出演も多数

《取材・文/渋井哲也》

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