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『おちょやん』にも続々出演、タカラジェンヌが朝ドラに“求められる”理由

週刊女性PRIME / 2021年4月5日 11時0分

写真左から小柳ルミ子(劇団での芸名は夏川るみ)、紺野まひる、純名里沙、野々すみ花

 現在放送中の朝ドラ『おちょやん』。上方女優の浪花千栄子の生涯をモチーフに描いている。このドラマ、朝ドラファン以外、宝塚歌劇団のファンからも注目を集めている。映美くらら、明日海りお、木月あかり、星蘭ひとみ、湖条千秋。これまでの朝ドラに比べ、歌劇団のOGが多数出演しているのだ。

大阪制作はタカラジェンヌを
起用することが多い

「今回はNHKの大阪放送局が制作しているということが、理由のひとつにあると思います」

 と、ドラマについてのコラムなどを多数執筆している田幸和歌子さんは話す。

「もともと大阪制作の朝ドラだと、元宝塚の女優さんを起用することが多い傾向にあります。関西という地元でのつながりがありますから。

 また俳優さんだけでなく、『わろてんか』では高橋一生さんが演じた伊能栞のモデルが、宝塚歌劇団の創設者、小林一三さん。朝ドラと宝塚の親和性は強く感じますね」

 ほかにも『おちょやん』では、演劇の世界が描かれていることも理由に挙げられるという。

「舞台女優さんが演じているから、作中の舞台シーンの芝居が自然に見えますよね。みなさん発声がしっかりしているので、ながら見をしていても登場した瞬間にふとテレビに視線を戻してしまいます」(田幸さん)

 振り返れば、朝ドラには数多くのタカラジェンヌたちが出演している。'80年に放送された『虹を織る』は、紺野美沙子演じるヒロインが宝塚歌劇団に入団する物語だけあって、現役からも多くのジェンヌが出演した。

「ドラマの世界が宝塚なので、登場人物たちが舞台という夢に向かって、本当にキラキラしていて。でもそこには舞台に立つための地道な努力とかも描かれていて……。宝塚音楽学校の先生役で新珠三千代さんが出演されているんですけど、ヒロインが入学した初日の登場シーンが印象的でした。彼女の立ち姿は華やかでいて、その中に優しさがあって。憧れの世界を表現するにはぴったりだなと感じましたね」(田幸さん)

 '03年の『てるてる家族』でも歌劇団がストーリーに絡んでくる。

「4人姉妹の長女を演じたのが、雪組でトップ娘役を務めた紺野まひるさん。ヒロインは石原さとみさんが演じた4女で、彼女が宝塚音楽学校に入学します。紺野さんはフィギュアスケートでオリンピックに出場しますが、設定が逆だったらもっと話題になったかも。この作品では登場人物が歌って踊る、ミュージカルのようなパートもありました。これが狙いで紺野さんをキャスティングしたのでしょう」(田幸さん)

現役ジェンヌが公演を休んでヒロインに

 朝ドラの歴史の中では現役ジェンヌが、劇団の公演を休んでヒロインを演じたことも。

「『ぴあの』のヒロイン、純名里沙さんですね。実は、私の中で“宝塚の方”を意識した初めての女優さんが彼女なんです。発声の仕方、カメラへの視線などが明らかに映像の人ではなかった(笑)」(田幸さん)

 歌劇団に入って3年目、劇団のすすめで朝ドラヒロインのオーディションを受け、主演の座を射止めた純名。週刊女性の取材でも当時のことを、

《カメラテストでは、何か特技をやってみてと言われ、ミュージカル『ウエスト・サイド物語』の『トゥナイト』をアカペラで熱唱しました》

 ミュージカルの歌を歌った自分は珍しかったかもと、振り返っている。

「ほかの俳優さんとの演技の中で、浮いている感じがすごくて。そのときに“この人は宝塚のホープでエリート”ということを聞きまして、だからなのかと。すごく可愛いし、歌も演技もうまいけど、彼女にはすごく違和感を感じました」(田幸さん)

 それまでも宝塚出身の女優の演技を見てきたが、純名に感じた“違和感”の理由について田幸さんはこう続ける。

「映像作品に対して慣れてなかったからでしょう。例えば'83年から'84年に放送された『おしん』では、乙羽信子さんがヒロインの晩年を演じました。彼女は『肝っ玉かあさん』『ありがとう』といった“平岩弓枝シリーズ”で活躍してからの『おしん』でした。なので、違和感などはなくすごくナチュラルでした」(田幸さん)

 舞台と映像では演技が違うとはよく言われるが、それが映像の世界に飛び込んだジェンヌたちが初めてぶつかる“壁”。現在、ドラマなどでも活躍している、ある宝塚OGは、

「まず初めに声の出し方を直せ、とプロデューサーに言われました。あと、演技が大げさすぎると(笑)。舞台は遠くのお客さまにも伝わるようにと演技しますが、映像だとカメラが寄ってくれます。それがわかるまで、時間がかかりました」

 こういった“壁”を知らずに退団後、すぐに朝ドラに出演したOGもいる。

「'70年『虹』に出演された小柳ルミ子さん。歌劇団に入った目的は、芸能界デビューがしたいから(笑)。芸能事務所に入る条件が、音楽学校を首席で卒業することでしたが、見事その条件をクリア。2か月で退団し、朝ドラに出演しました」(田幸さん)

朝ドラのキーパーソンを担うジェンヌたち

 ジェンヌたちは歌劇団に入団する前に音楽学校で2年間、演技はもちろん歌や所作などを学ぶ。映像とは表現方法が違えど、根本にある演技についてはベースがしっかりしているのだ。

「出演シーンそのものが多くなくても、インパクトのある役、重要なポジションを担う役を演じることが多いです。

 例えば'19年から'20年にかけて放送された『スカーレット』での紺野まひるさん。彼女は『てるてる家族』にも出演していますが、『スカーレット』では戸田恵梨香さん演じるヒロインの作った器を、大量発注する職業夫人を演じました。ヒロインの才能を見いだして、陶芸家になるきっかけを作る大切な役でした」(田幸さん)

 同じようにヒロインの人生の転機になる役を、野々すみ花が演じたのは'15年の『あさが来た』。

「波瑠さん演じるあさの夫で、玉木宏さんが演じた、新次郎の三味線の先生。色っぽくて初めは浮気相手と思われていたけど、実は時代の先端をいく職業夫人。彼女の経営するレストランに勤めている女性を見て、あさが女性銀行員の採用を思いつくきっかけになりました」(田幸さん)

 今回の『おちょやん』でも明日海りおの、カメラ目線での演技が話題になった。

「あれはインパクトがありました(笑)。でも、そういう演技がちっとも下品にならない。品があって威厳があって、美しいのに笑えるんです。こういった力は“清く正しく美しく”というモットーで舞台に向き合っている、タカラジェンヌならではですよね」(田幸さん)


たこう・わかこ ドラマコラムの執筆や、ジャニーズウォッチャーとして活動。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など

《取材・文/蒔田稔》

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