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野田聖子議員が総裁選に意欲も前途多難? 日本で「女性総理大臣」が生まれない理由

週刊女性PRIME / 2021年5月3日 8時0分

野田さん、居眠りしている場合じゃないですよ!(4月20日、本会議にて)

 菅義偉首相の自民党総裁任期満了(9月末)まで、4月1日で半年を切った。現段階では「本命」の対抗馬が浮上していないなか、野田聖子幹事長代行は早々と、立候補に意欲を示した。それは3月下旬に放送されたテレビ番組での、次のような発言だ。

野田聖子議員が総裁選に意欲

「私が総裁選で推薦人を20人集め、全力で演説すれば、最短で今年の可能性はある」

 これに対して、ツイッターでは、

「絶対に無理」

「総理の器じゃない。性別じゃなく、能力が足りない」

「野田総理誕生なら日本沈没」

 などの投稿が相次ぎ、否定的な意見が圧倒的だった。

 野田氏はこれまで、総裁選に3回出馬する意向を示したが、必要な推薦人を20人集められず、断念した。では仮に集めることができたとして、「最短で今年の可能性」が実現した場合、はたして「野田総理」は日本を率いていけるのか。

 この疑問に対して核心を突いた言葉が、今年2月中旬、二階俊博幹事長の口から漏れた。幹事長室の主要メンバーらが集まって開かれた、二階氏の誕生日を祝う会合で、女性の首相誕生の可能性について、こんな発言をしている。

「男とか女とか、そんなことはあまり関係ない。ただ、女性の首相が誕生したときに、それを支える体制が女性議員の側に整っているかだ」

 そばにいた野田氏にとっては図星だったのか、凍りついたという。推薦人を集める上で、党内の女性議員をまとめられない野田氏の実力を、見透かされたようだ。そもそも、日本で女性首相が誕生しない理由とは一体何だろうか。

国際社会から取り残された
日本政界の“女性活躍”

 まずは国際社会に目を向けてみたい。世界の女性大統領、首相で最年少は、北欧フィンランドで'19年末に生まれたサンナ・マリン首相だ。1児の母にして、同国では歴代3人目となる現在35歳の女性首相である。閣僚19人のうち女性は12人と過半数を占め、男性の7人を圧倒する。

 昨年9月、菅政権が誕生し、自民党執行部のメンバーが固まった際、日本とフィンランドの政治風景を象徴する比較写真がネットで話題になった。

 1枚は菅首相や二階幹事長ら自民党幹部5人が横並びになり、拳を合わせるオジサンだらけの写真。平均年齢は71歳を越える。もう1枚は、自然豊かな緑をバックに、マリン首相と女性閣僚4人がそろった爽やかな写真で、対照的な絵面に、ツイッターで皮肉の声が相次いだ。

「日本は何周遅れなの?」

「日本はあと百年かかるかも」

 周辺国を見てみると、ドイツメルケル首相(66)はあまりにも有名だが、隣国のデンマークにはフレデリクセン首相(43)、さらにその隣のベルギーにはウィルメス首相(46)がいる。ノルウェーソルベルグ首相はこのほど、コロナ禍の中で60歳の誕生会を開いたとして罰金刑を科されたが、欧州にはとにかく女性のトップが多い。

 ニュージーランドアーダーン首相(40)は、現職の首相として初めて産休を取ったことで注目された。米国では副大統領に初めて女性のハリス氏(56)が就任し、耳目を集めた。

 現職でなければ、アジア域内にも、女性が大統領および首相を務めた国は少なくない。まずはフィリピンだ。上院議員の夫が暗殺されたアキノ大統領(在任1986〜'92年)と米国に留学中、クリントン元米大統領のクラスメートだったアロヨ大統領(同'01〜'10年)の2人が誕生し、インドネシアはスカルノ初代大統領の長女、メガワティ大統領(同'01〜'04年)、タイには国外逃亡中のインラック首相(同'11〜'14年)がいる。そしてクーデターで国軍による弾圧が続くミャンマーでは、「民主化の象徴」と称されるアウンサンスーチー氏が、この2月までは事実上の最高指導者だった。一連の不祥事で最終的に大統領弾劾が成立して罷免されはしたが、韓国でも、朴槿恵(パク・クネ)氏が'13年、同国史上初の女性大統領に就任した。

 欧米だけでなく、足もとのアジアでもこれだけ女性のトップが輩出されているのだ。しかしながら日本は「女性活躍」が叫ばれていながら、女性首相が誕生する兆しがまるで見えない。そんな事情を裏付けるかのように、3月末に世界経済フォーラム(WEF)が発表した世界156か国の男女格差を比較した最新の報告書で、日本は120位と前年に引き続き低順位だった。理由は、政治と経済で閣僚や経営者層の女性が少ないためだ。

「男社会」が阻む政界の壁

 日本で女性の首相が誕生しない理由のひとつとして、政治家や専門家がまず口をそろえるのは、女性議員の圧倒的な少なさだ。参議院に占める女性の割合は2割で、衆議院にいたっては1割にとどまる。日本の政界はまさしく、男性議員が中心の「男社会」だ。それは森喜朗元首相の女性蔑視発言にも如実に現れている。戦後、比例代表を除いて女性の衆院議員を選出したことがない都道府県は青森、富山、山口、佐賀など8県、参院議員は岩手、石川、福井、長野など11県に上る。

 被選挙権は日本国民であれば衆院議員は満25歳以上、参院議員は満30歳以上と定められている。だが、この条件の裏には「見えない壁」が立ちはだかっている。

 選挙を専門に取材をするノンフィクションライターの畠山理仁さん(48)が解説する。

「そもそも議員に立候補することが日本では特殊だと思われがちです。隣近所の目もありますし、ポスターを張ればいたずらされる。さらに選挙への新規参入を阻む理由は、供託金ですね」

 供託金とは、公職選挙立候補者が法務局に寄託しなければならないお金で、日本は300万円と世界で最も高額だ。法定得票数に達しない場合は没収され、まずはこの金額を用意するのが最初の難関だろう。

 社会民主党副党首の福島瑞穂参院議員は、女性の立候補者が現れにくい現状をこう分析する。

「政治は男の世界だと思われているので、人生設計をするうえで議員になろうと思う女性が少ない。仮に立候補したとしても、育児や介護など家庭に責任を持っている女性が選挙戦を戦うとなると、その両立が難しいと思われているのではないか」

 それらの壁を乗り越え、立候補して当選したとしても、待っている舞台は男社会だ。畠山さんが語る。

「政界で注目を浴びている女性の政治家は、力のある男性の政治家に引き立てられ、表舞台に出てくる現状が多分にあります。それが党の存続のためにも必要だからです。もっとストレートに言うと、政治力そのもので評価されず、有力な男性政治家に利用されがちなのです」

 元タレントの森下千里氏(39)が自民党候補として次期衆院選への出馬の可能性が報じられた際、有権者から非難の声が殺到したが、これこそまさしく「利用価値がある」と判断された典型例だろう。五輪担当相に再任された丸川珠代氏(50)も、知名度を買われてのし上がった女性政治家の1人である。

 ところが「日本の顔」を決める総裁選ともなると話は別だ。何しろ派閥の多い党内で推薦人を20人集めないといけない。1955年の自民党結党以来、推薦人を確保して総裁選に立候補できた女性は、2008年に福田赳夫首相の辞任に伴って開かれたときの、小池百合子現都知事ただ1人だ。畠山さんが続ける。

「当選回数が多く、大臣になれない男性議員はたくさんいます。政治家は『俺が、俺が』と前に出てくる人ばかりで、足の引っ張り合いが多い。オジサンたちも嫉妬深いので、そうした男社会の中で、野田氏が推薦人を集めるのは難しい。まだ自分が閣僚にもなれていないのになぜこの人を推薦しなきゃいけないの、と」

 もっともそれは政界だけの問題ではなく、有権者の側にも、適任者を選ぶという目を養う必要があるのだ。

女性に優しい社会の実現を

 第4次安倍内閣で女性活躍担当大臣を歴任した自民党の片山さつき参院議員は、党内の現状をこうきっぱり言う。

「推薦する場合、当然ですが党内でいちばんお世話になった人についていきます。立候補するときに応援をしてもらったとか、役職に推してもらったとか。ところが今の自民党の女性議員の中で、経済的な面も含めて多勢の『子分』を抱え込める実力を兼ね備えた方はいません」

 仮に野田氏が推薦人を確保できたとしても、すでに支持を受けている現職の菅首相に対抗するのは現実的ではない。過去の総裁選でも、現職首相が出馬した場合は、圧倒的な強さを見せた。ゆえに次期総裁選での女性首相誕生という「最短ルート」は望み薄と言わざるをえないだろう。だが、悲観論ばかりでもない。

 片山氏は、欧州にも以前は女性議員が少なく、それでもイギリスサッチャー首相やドイツのメルケル首相が誕生した経緯を踏まえ、こう持論を展開した。

「日本の場合も、国を率いていける判断力や安定性を買われ『この人に任せるしかない』という声が高まれば、女性の首相が誕生すると思います。それが唯一の可能性。女性首相を誕生させようと思ってできる現状ではない。女性議員の数が圧倒的に足りませんから」

 数を増やすためには、一定数を割り振るクオータ制の導入も議論されているが、片山氏は「政治家は実力ありき」と導入には消極的だ。一方の福島議員は、フランスで採用されて男女平等指数が飛躍的に伸びた成功例を挙げ、導入には肯定的だ。福島氏が力説する。

「女性は本来、政治に向いています。例えば教育や保育、ゴミ問題などその地域に根差した活動の延長線上に政治があります。女性がもっと表舞台に出てくれば、これまで優先順位が低かったDVや生理の問題など政治の優先順位が変わり、女性に優しい社会が実現できるのです。一部のためではなく、国民に寄り添う政治をやるには女性リーダーの存在が必要です」

 この理想が現実になる日は訪れるのだろうか。そして誰に白羽の矢が立てられるのだろうか。オジサンたちが政界に跋扈(ばっこ)する限り、潮目が変わるのは当分先になりそうだ。

《取材・文/水谷竹秀》

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