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NHK『朝ドラ』『大河ドラマ』なりふり構わぬ“週7日”イケメンシフトの背景

週刊女性PRIME / 2021年7月5日 6時0分

左から吉沢亮、永瀬廉、坂口健太郎、西島秀俊、ディーン・フジオカ

 「顔面最強大河」「イケメン大渋滞」。これらは現在放送中の朝ドラ『おかえりモネ』と大河ドラマ『青天を衝け』に関する記事で用いられたフレーズだ。

 実際、ここまで発表・出演している顔ぶれを年齢順で挙げていくと、『おかえりモネ』には、高田彪我(19歳)、永瀬廉(22歳)、清水尋也(22歳)、坂口健太郎(29歳)、玉置玲央(36歳)、浅野忠信(47歳)、西島秀俊(50歳)、内野聖陽(52歳)。

 『青天を衝け』には、主演の吉沢亮(27歳)を筆頭に、板垣李光人(19歳)、岡田健史(22歳)、志尊淳(26歳)、犬飼貴丈(27歳)、磯村勇斗(28歳)、町田啓太(31歳)、満島真之介(32歳)、高良健吾(33歳)、小池徹平(35歳)、山崎育三郎(35歳)、福士誠治(38歳)、大谷亮平(40歳)、要潤(40歳)、ディーン・フジオカ(40歳)、玉木宏(41歳)、草なぎ剛(46歳)、田辺誠一(52歳)、堤真一(56歳)。

 10代から50代までの各年代から、ハンサム、王子様、ワイルド、ダンディなど、さまざまなタイプのイケメンがそろっている。朝ドラは月~土曜、大河ドラマは日曜に放送されているため、「“週7日イケメンシフト”を敷いている」と言ってもいいのではないか。

 ただ、朝ドラも大河ドラマも、制作局は公共放送のNHKであり、なぜこれほどイケメンを大量起用しているのか、疑問の声が挙がっているのも確かだ。いつからNHKドラマのイケメン化が進みはじめ、現在のような過去最大級のレベルに至ったのか。

きっかけは『八重の桜』の西島秀俊

 キャスティングは、「物語や役柄にフィットするか」だけでなく、視聴者層や好感度などを踏まえて戦略的に行われるもの。ここまでイケメンを重層的にそろえていることから、マーケティングに基づいたものであることは明らかだ。

 もともと2007年の『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(フジテレビ系)のように、若手のイケメン俳優をそろえた作品は学園ドラマの定番だった。しかし、2010年代に入ると10代、20代だけでなく、30代、40代、50代の俳優も「イケメン」として扱い、組み合わせてキャスティングするのが当然のようになっていく。

 そのきっかけになったと業界内で言われているのは、2013年の大河ドラマ『八重の桜』。主人公の兄役で出演した西島秀俊が鍛え上げられた上半身を見せる勇ましいシーンが女性視聴者の間で大きな話題となり、さらに1か月後にも西島と長谷川博己の入浴シーンがあり、反響だけでなく視聴率も上がった。

 その流れを受けて民放でも、『家族ゲーム』(フジテレビ系)で櫻井翔がサウナに入るシーンがお約束となるなど、“イケメン+裸”の演出が一時多用されたが、次第に落ち着き、イケメン大量投入の流れに変わっていく。

 ここに来てイケメン大量投入の流れが急加速しているのは、昨春に行われた視聴率調査のリニューアルが大きい。年齢層や性別ごとの個人視聴率が可視化されたことによって、NHKは主要視聴者層の高年層だけでなく、若年層からの支持も得なければいけなくなった。

毎朝報じられる朝ドラと大河の視聴率

 さらに近年は、受信料契約に関するNHKへの風当たりが強くなり、それは制作費が高いと見られている朝ドラと大河ドラマにも及んでいる。そもそも公共放送のNHKは基本的に視聴率を無視していい立場だが、朝ドラと大河ドラマだけは例外。月曜から金曜までの毎朝ネットメディアに視聴率を報じられ、「下がった」と叩かれやすい上に、視聴率が悪ければ「受信料を返せ」という声が挙がってしまうからだ。

 NHKがこれらの視聴率対策として、イケメンを大量投入しているのは間違いないだろう。民放だけでなくNHKも、「各世代の個人視聴率を確保するために、イケメンたちで各世代の女性層をつかむ」という手堅い方法を採用しているのだ。

 わかりやすいのは、今春にNHKが放送した朝ドラと大河ドラマ以外の作品。『きれいのくに』は吉田羊、蓮佛美沙子、加藤ローサら美人女優をそろえる一方、イケメンは稲垣吾郎のみ。『半径5メートル』も芳根京子、永作博美を全面に押し出しつつ、イケメンは毎熊克哉のみ。『今ここにある危機とぼくの好感度について』は主演の松坂桃李以外、高年層の俳優ばかり。『ひきこもり先生』も佐藤二朗主演のドラマでイケメンは少ない。

 視聴率が報じられる朝ドラと大河ドラマ以外イケメンは極めて少なく、演技力と役柄との相性重視でキャスティングしているのだ。もちろん朝ドラと大河ドラマも「イケメンだから」という理由だけでキャスティングされることは考えづらく、演技力あってのものだが、「純粋なクオリティーファーストではない」ということだろう。

ヒロインへの共感が集まりづらい

 ただ、「物語に集中しづらい」などの理由から、イケメンの大量投入を快く思っていない視聴者がいるのも確かだ。

 たとえば『おかえりモネ』は、ヒロインの百音(清原果耶)の故郷の気仙沼、就職先の登米、気象予報士として修行を積む東京と、すべての場所でイケメンとふれ合って暮らすことになる。リアリティに欠けるほか、男性視聴者の中には「またイケメンかよ」とボヤきたくなる人は少なくないだろう。

 また、百音が山で遭難したとき、気象予報士役の西島秀俊、医師役の坂口健太郎、父役の内野聖陽の助けで救助されるシーンがあった。このようなシーンが続くことで視聴者に「あまりに恵まれていないか」と思われ、ヒロインへの共感度が上がらないリスクがある。実際、『なつぞら』('19年)のヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)は、イケメンに囲まれ、助けられる展開が続いたことで、なかなか視聴者からの共感を集められなかった。

 出演するイケメン俳優たちから見ても、大量起用によって役のリアリティを感じてもらいづらくなるほか、当コラムのように「イケメン」でひとくくりにされやすく、目立つことが難しくなる。

 やはり朝ドラと大河ドラマのイケメン大量起用には、メリットだけではなく問題点もあるだけに、制作サイドには総合的な判断力が問われている。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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