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DaiGoに差別されたホームレスの壮絶な日々「知人は頭を踏み割られて死んだ」

週刊女性PRIME / 2021年8月23日 5時0分

ホームレスが建てた小屋にはいろいろな物が置かれ、まるで秘密基地のよう

「ホームレスの命はどうでもいい」「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思う」メンタリストDaiGoによる差別的発言が物議を醸している。20年以上にわたってホームレスの取材を続けてきたライターの村田らむさんによる寄稿をお届けする。

 僕はDaiGo氏の発言以上に彼の意見に賛同し、褒めそやすコメントが多数投稿されているのを見て、ゾクリとした。カルト教団の信者たちを思い出したからだ。

 かつて、オウム真理教の後継団体に潜入取材をしていたことがあるのだが、潜入中にひとりの信者が病気で亡くなった。すると、指導者が、

「彼が病気になったのは彼が修行を真面目にしなかったからだ。ああいう人は死んでも仕方がない。教団に入っただけでは救われないよ。もう2度と人間には生まれ変われない。よくて動物だね」

 と話し、亡くなった信者を蔑むように笑ったのだ。そして他の信者たちもそれに同調して、ゲラゲラと笑った。

DaiGo氏を擁護する声も

 指導者の言葉に同調し、仲間の死すら差別し笑う姿は痛切に恐ろしかった。DaiGo氏の言葉にただ乗っかり、ホームレスを同じ人間として見ていない“彼ら”の言葉に同じ空気を感じた。

 しかし、一般社会においてDaiGo氏が発言した内容はさほど珍しいものではない。例えば飲み屋でサラリーマンと話をすれば、

「ホームレスとか一箇所に集めて無理やり労働させればいいんだよ」

「生活保護受給者のほとんどは働く気のないクズ。そういうヤツの子どももクズ。排除したほうがいいよ」

 などなど、ホームレスを人とも思わない差別発言をする人はいくらでもいる。

『2ちゃんねる』創設者のひろゆきこと西村博之氏も、

「日本国内で人権軽視されていることがすごく多くあるのに、そのことに関して何もしていない人がDaiGoさんだけ責めてて。DaiGoさん何もしていないじゃないですか、口で言っただけで」

 とDaiGo氏を擁護する発言をしている。

 確かにサラリーマンが酒を飲み、ホームレス不要論を説いたとしても、現実にホームレスに危害が及ぶわけではない。だが、何万人という人に影響を与えるインフルエンサーの発言が、

「何もしていない」

 と言えるのか?

 カルト教団の信者たちように、人を人とも思わない価値観を増殖させることに繋がってくるのではないだろうか。

 そもそも、彼らだって生きている人間であり、生計を立てる必要があるのだ。

 野宿生活をする人の多くは廃品回収で日銭を稼いで生活している。アルミ缶を集めて、業者に買い取ってもらうのだが、実はこれ過酷な肉体労働なのだ。

 何十キロもあるアルミ缶を抱えて10時間以上も動き回る。それでも稼ぎは3000円いくか、いかないか。でも、稼いだお金はすぐ食費に消えるし、毎日のように稼げるわけではない。

暴力を受け続けるホームレス

 炎天下では熱中症になるし、風が強い日は缶が飛ばされて仕事にならない。空き缶を集めていると「泥棒!!」とどやされ、警察を呼ばれることもある。

 DaiGo氏は、

「自分はホームレスを愛さない」

 動画の中でそのような言葉を繰り返し発言していたが、わざわざ宣言する意味はあるのだろうか? 

 だって、ホームレスが愛されていないことは、一目瞭然なのだから。

 高速道路の下にはホームレスが寝られないように突起状の石が敷かれ、ベンチの真ん中には横たわれないようにする肘かけが設置されている。これは建造物が本来の用途以外で使用されることを防ぐための『排除アート』と呼ばれるものだ。

 ホームレスを排除するのが主目的の『排除アート』も多く、今では街中のいたるところで見ることができる。テントを張ったり小屋を建てたりするのも難しい。警察などに強制的に撤去させられてしまうからだ。

 排除されるだけではない。多くのホームレスは理不尽な暴力を受けている。僕は20年以上ホームレスの取材をしているが、暴力を受けた話はなくならない。

「河川敷で寝ていたら、子どもたちに花火を打ち込まれて大やけどを負った」
「駅で寝ていたら卵をぶつけられた」
「地下街に続く階段で寝ていたら、上から自転車を投げつけられて大怪我した」

 などの話を彼らから聞いた。

 大阪では、

「知り合いのホームレスが、商店の前で寝ていたら頭を踏み割られて死んだ」

 と悲しそうに語るホームレスと会ったこともある。

『蜘蛛の糸』を思い出す謝罪動画

 暴力を受けた後、警察に相談しても無視されたという話も非常によく聞く。先の花火を打ち込まれた人は、多摩川の河川敷に住むホームレスだった。

「結構なやけどをしたから川崎警察署に行ったんだ。そうしたら警察に“警察はホームレスに関わっている時間はないんだ、帰れ!!”って怒鳴られた。もう何があっても行くものかって思ったよ」

 と悔しさを滲ませた。実際、ホームレスへの暴力は、よっぽどな重症を負うか死亡しないと、ニュースにならない。

 たとえ命は助かっても、彼らには病院に行く金銭的余裕はない。エアコンもなく、熱がこもる小屋の中でひとり、うずくまって痛みに耐え、傷を癒やすしかないのだ。

「はやく死にたい」

 そう話すホームレスも少なくない。彼らは社会からだけでなく、自分自身からも愛されてない。孤独でみじめだ。

 DaiGo氏は謝罪動画で自身のイジメられた経験を盾のように話したが、ホームレスが社会から排除され、理不尽に暴力を受けている現実があることを想像することはできなかったのだろうか? 

 彼の想像力の欠如は、謝罪動画にも表れている。

「“自分の責任でもないのに生活保護を受けることになった人”“必死に立ち直ろうとしている人”は救われてしかるべきなのに、そういう人を傷つける発言をしてしまった」

 この発言を聞いて、僕は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を思い出した。

 “悪事に手を染めていない”善なる人間にだけ生活保護という“蜘蛛の糸”を垂らしてやる。だが、行いが悪ければ、糸を切って地獄へ叩き返す。と言っているように聞こえるのだ。

 自分はお釈迦様として居心地のいい極楽で蓮池を眺めながら人の生死を決めるということなのか……。そんな“神様目線の差別発言”に、僕はこれまで会話をしてきた何百人ものホームレスのことを思い出した。

誰もがホームレスになる可能性がある

「俺は昔、人殺したことある」と自慢する人もいれば、

「スーパーの万引で食べている」

「稼いだ金は全部、酒」

「元暴力団員だった。今も覚せい剤をやっている」

 という言語道断な発言もよく聞いたし、包丁を振り回されたことや、無理やりキスされたこともあった。

 だが公的な福祉は、そういう人にも差別せず行わなければならない。中には、どう見ても“精神疾患”や“知的な障がい”を抱えていると思われる人もいる。そういう人は、本人の努力で解決できる状態ではない。

 福祉の網の目からこぼれ落ちてしまった人であり、積極的に保護する必要があるだろう。罪を犯して刑務所に入っている人間だって、食事は摂り、布団で寝ている。

 今の日本において、貧窮者が犯罪者と同じレベルの生活を、享受することすら許さないと言うのだろうか?

「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしい」

 そんなDaiGo氏の呼びかけに応えてみながそう望んだら、生活保護制度が打ち切られ、野宿生活をすると逮捕される時代がくるかもしれない。

 餓死者が増え、自殺者が増え、犯罪が増えて世の中が地獄になっても、別に自分は成功しているから関係ないと本当に言えるのだろうか。

 ほとんどのホームレスは、なりたくてホームレスになったわけではないのだ。誰もが同じ立場になる可能性があるのだから――。


取材・文/村田らむ 
1972年、愛知県名古屋市生まれ。ライター兼イラストレーター、漫画家、カメラマン。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海など、「いったらそこにいる・ある」をテーマとし、ホームレス取材は20年を超える。潜入・体験取材が得意で、著書に『ホームレス消滅』(幻冬舎)、『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『樹海考』(晶文社)、丸山ゴンザレスとの共著に『危険地帯潜入調査報告書』(竹書房)がある。
 

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