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なぜそうなる? 茨城ダッシュ、松本走り、岡山ルール、危険な“ご当地運転ルール”を検証

週刊女性PRIME / 2021年10月9日 12時0分

※写真はイメージです

《茨城ダッシュは交通違反です》

 茨城県警が公式ツイッターでそう呼びかけ、話題をさらっている。

「茨城ダッシュ」とは、交差点を右折する際、信号が赤から青に切り替わった瞬間に急発進し、対向車線を直進する車よりも先に猛ダッシュで右折すること。だが本来、交差点では直進車や左折車の優先がルールだ。県警がツイッターで指摘したとおり、「茨城ダッシュ」は反則金6000円(普通自動車の場合)が科せられる、道路交通法に違反した行為なのである。

 重大な事故につながるとして、これまでにも県や県警が注意喚起をしてきたが、地元ではまかり通ってしまっているのが現状だ。

 このように、地域の名前がついて「ご当地ルール」と化している危険運転は、実は茨城県に限ったものではない。対向車が左折する隙を見て、ほぼ同時に右折する「松本走り」は、長野県松本市の菅谷昭・前市長が、2019年の在任時に「根づいているなら残念。直していかなければならない」と記者会見で語り、注目を集めたこともある。

 そのほか山梨県の「山梨ルール」、愛媛県の「伊予の早曲がり」もまた右折時の危険運転として有名だ。

親から子どもや孫へ

「『茨城ダッシュ』のような名前こそついてはいませんが、同様の危険運転は、首都圏以外の地域では日常的に行われています。公共交通機関が充実していないエリアに多く、とりわけ茨城のように、大都会の周辺に位置している地方都市では、頻繁に見かける行為ですね」

 そう語るのは、自動車生活ジャーナリストの加藤久美子さんだ。

 加藤さんによれば、地方都市は車道が広く、渋滞も少ない。見通しがよく、交差点では右折しやすい。さらには車社会で頻繁に車に乗るため、運転時の緊張感が損なわれがちになるという。

 そうしたことから交通マナーへの意識がおろそかになりやすく、たとえ交通違反とわかっていても「茨城ダッシュ」が容認されてしまったのではないかと指摘する。

「交通マナーへの意識という点では団塊世代のドライバーに問題のある人が目立ちます。この世代が車に乗り始めた1970年~1980年代は、マイカーを持つようになり車社会が急速に発展し始めた時期。車が好きで運転に自信がある人も少なくない。運転技術を過信したり、自分はすごいんだといきがってみせたりして、交通マナーを軽視しやすい傾向があるのです。

 そうした運転への姿勢は同乗する子どもや孫へと引き継がれてしまう。『茨城ダッシュ』のような危険運転が地域で定着する背景には、こうした原因があるのではないかと思います」(加藤さん)

 一方、高齢社会の影響を指摘するのは、交通ジャーナリストの今井亮一さん。

「地域に高齢ドライバーが多いと、対向直進車が発進するまでに時間がかかることがあります。そのためついイライラして、急発進して右折してしまう。『茨城ダッシュ』の背景には、そうした事情もあるようです」

ベテランのプライドが交通違反を誘発

 ローカルルールと化した危ない運転は、ほかにもある。

岡山では車線変更の際にウインカーを出さない『岡山ルール』が有名。地元の人に話を聞くと、“ウインカーを出すとヘタクソに見える”、“バカにされる”と言いますね。そうした傾向があることから岡山では、車道に“合図”と緑の大きな字で書かれたところがあります。“ここでウインカーを出せ”という意味です。そんなことが書かれた道路って、私はほかに知りません」(加藤さん)

 日本自動車連盟(JAF)のデータがそれを裏づける。

 2016年にインターネット上で行ったアンケート調査で、「ウインカーを出さずに車線変更や右左折する車が多い」との設問に対し、岡山県内居住者の回答は「とても思う」が53・2%と全国でトップ。全国平均の29・4%を大きく上回る結果となった。

 前出・今井さんは、「ウインカーを出さないことが“大人の運転”、“ベテランっぽい運転”、“カッコいい運転”と一部の人が言いふらすことで、運転文化として広まり、定着してしまうことがあります。私見ですが、こうした現象が岡山でも起きてしまったのではないでしょうか」と分析する。

 ウインカーを出さないローカルルールは、岡山県のほかに愛知県でも見られる。通称「名古屋走り」だ。「茨城ダッシュ」と同様に道路交通法違反に当たる危険な行為で、いずれも警察などが対策を講じているものの、改善には至っていない。

「ウインカーを出さずに車線変更をする行為のほか、信号無視、強引な割り込みも『名古屋走り』。重大事故を招くとして問題になっています」(加藤さん)

 トヨタのおひざ元でもある愛知県は全国有数の自動車の登録台数を誇り、人口比で県民の67.9%が運転免許を取得している車社会だ。加えて道幅が広く、車線も多い。そうした理由が複雑に絡んだ結果、『名古屋走り』のような地域独自の運転ルールが編み出されたのではないかといわれている。

「道幅が広くて車線が多く、車線変更する頻度が高い地域では、故意に強引な車線変更をするつもりはなくても、つい、うっかりやってしまうことも多くなります。そうした地域特有の事情から『名古屋走り』なんて言葉が生まれた可能性があります」(今井さん)

 このような状況下では事故も多くなるのが必然。愛知県では2019年まで、16年連続で交通事故死者数が全国ワースト1位だった。2020年こそ1名差で東京にトップの座を譲ったが、こんな不名誉な記録は県民としても願い下げだろう。

ダサい呼び名が危険運転を防ぐ!?

 全国各地で見られる危険運転のご当地ルール。こうした行為をなくし、事故を防ぐためにはどうすればいいのだろうか?

「ご当地ルールは恥ずかしいこと、一生をダメにするかもしれないことだとわかってもらう必要があります」

 と、加藤さん。こんな提案もしてくれた。

近年、暴走族の数が減り続けているんです。少子化の影響も指摘されていますが、実は警察が対策を講じていて、福岡県警が“エッ! 暴走族? いいえ、『珍走団』です”と、暴走族をカッコ悪い呼び方に変えるよう提唱するポスターを作り、話題を集めました。それと同じように、『茨城ダッシュ』なんてカッコいい呼び方ではなく、ダサいことなんだというイメージを広めていくといいかもしれません

 今井さんは「テクノロジーの力を活用すべき」と主張する。

「ドライブレコーダーを必ず装備するようにしましょう。ウインカーなしで右左折した車と接触して事故にあった場合、加害者側はたいてい“ウインカーを出していた!”と言うものです。ドラレコがあれば、どちらの言い分が正しいか一目瞭然です」

 事故に至らない場合でも、証拠を残せるということ自体がプレッシャーを与え、危険運転の抑止につながるかもしれない。

「ご当地ルールの危険運転は各地で事故を誘発しています。法律違反であり、自分や他人の命を脅かす行為であることを何度も伝え続けていかなければなりません。まだ若いうちから、安全意識をもつよう周囲の大人が働きかけることも必要です」(加藤さん)

(取材・文/千羽ひとみ)

※元記事:週刊女性2021年10月19日号/Web版は「fumufumu news」に掲載

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