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40代&50代おひとりさまの「至高のわが家」拝見!古くて狭いカビだらけの団地が大変身

週刊女性PRIME / 2023年12月3日 8時0分

きんのさんのキッチン(DIY後)

「自分の城と思っていた都内の新築マンションから古びた団地へ。思い描いていた理想の生活が一気に崩れ去り、モノクロの世界に放り込まれたような気持ちになりました」

母からの1本の電話で人生が激変

 そう話すのは、築50年を越える団地でおひとりさま生活を送るきんのさん。団地暮らしは今年で5年目。

 その穏やかな暮らしぶりを綴ったブログが人気の彼女だが、実は、引っ越しが決まったときの心境はまったく違っていた。

 それは、都内に住むきんのさんの元にかかってきた母の電話から始まったという。

「80代になった母が、ひとり暮らしが不安で仕方なくて、自分が住んでいる団地に空室が出たから、そこに移り住んでほしいと言うのです。しかも、すでに頭金を払ったと」(きんのさん、以下同)

 通勤に便利な都内の新築のマンションに住み、仕事もプライベートも充実した毎日を送っていた彼女にとって、寝耳に水の話だった。

「37歳で離婚を経験し、そこからなんとか正社員として就職。40歳を機に終の棲家として分譲マンションを購入してから、9年目のことでした。

 住宅ローンの支払いもまだまだ残っていましたし、もし母の希望どおりにすれば、生活がガラリと変わってしまうのは明らか。

 老後は都心で暮らし、趣味の着物を着て美術館巡りをしたいと思い描いていましたが、その夢も諦めなくてはなりません。母に振り回されず、私は私の人生を生きるべきだと思いました」

 一度は、団地への移住を見送ろうと決めたきんのさん。しかし、それでスッキリした気持ちにはならなかった。

 モヤモヤと心の中を渦巻いたのは、母のSOSに応えられない娘としての不甲斐なさ。自分の生活を守るか、母をサポートするか、心が押しつぶされそうになった。

「どうにもならない状況にぶつかった時、人って本当に叫びたくなるものなんですね。気づいたら部屋の片隅で言葉にならない感情を大声で吐き出していました。

 でも、そうやって苦しい気持ちを全部出し切ったら、何をいちばん大切にすべきか、少しずつ冷静に考えられるようになりました。自分の生活を優先してこのまま母を見捨ててしまったら、自分のことを一生許せないんじゃないかなと

 今の生活を手放して母の元へ行くのは苦労が多いけれど、母と苦労だけじゃないものを一緒につくることもできるはず。メリットとデメリットを整理して、母親のために団地へ移り住む決断をした。

「都会のマンションで暮らす老後は手に入れられないけれど、自分が満足して生きられる老後は、どこにいても手に入れられるはず。もちろん、団地でも。ポジティブに新しい方向に歩き出すことにしたのです」

明るい壁紙の部屋が生きるパワーをくれた

 母親のため、前向きに団地へ引っ越しを決めたものの、やはり新築マンションからの落差は想像以上。そのショックは大きかったと、きんのさんは当時を振り返る。

「実際に部屋を訪れると、壁紙は剥がれて床も天井もボロボロでカビだらけ。涙が出そうでした」

 それでも、落ち込んでばかりではいられない。団地で母親の介護をしていくと決めたのだから、せめて“心が元気になるような部屋にしよう”とリノベーションを始めた。

「例えば、キッチンは黄色、トイレは青色など、壁紙には明るい色を選びました。毎日過ごす部屋だからこそ、色からパワーをもらえるんじゃないかと思ったのです」

 もともと3DKだった間取りは、使いやすさを重視した1LDKに変更し、部屋全体に日の光が入る明るい空間にした。

 一方で、ネット通販で購入したシートを寝室の床に張るなど、できるところは自分で作業。「お金が本当になかったから」と話すきんのさんだが、そのDIYの過程が思いがけず楽しいものとなり、部屋への愛着を育んだ。

「オシャレなカフェのような空間にしたくて、100円ショップで買ったイミテーションの植物も飾りました。それが1つ、2つ増えて、次はベランダで季節の花を育てて。

 そうやって部屋に好きなものを少しずつ増やしていくと、気持ちが軽くなっていくのがわかりました。

 そうしているうちに、趣味で近所の陶芸教室に通える余裕もできて。知り合いが増え、ここでの暮らしがより楽しいと思えるようになりました。5年前には、こんな未来があるとは想像できませんでした」

 “毎日過ごす空間が、自分のマインドを変えてくれる”ということに、身をもって気づいたときんのさん。

 生活を第一に、やりがいのあった都内での仕事も通勤時間がもったいないと思い辞めた。そして自宅から近い、介護の仕事へ転職をして“自分時間”を確保した。

 そして、生活をさらに良くしていくために、月に1度、“じぶん会議”を行う。

「靴の数を減らしたいといったたわいもないことから、老後のお金のことまで、具体的に困り事や不安なことを書き出して解決策を練っています。

 生活を見つめ直し、自分らしいシンプルな暮らしを続けることに役立つだけでなく、これからを考えてワクワクできる時間なのです」

 きんのさんは、団地への引っ越しを機にお金の使い方も見直し。引っ越し代やリノベーションで貯蓄の大部分を使い果たし、老後資金の不足に気づいてから“月12万円のプレ年金生活”を遂行している。

「母の生活を見ていると、女性が年金だけでひとり暮らしをするのがいかに厳しいかわかりました。母には私がいますが、おひとりさまの私に生活費を補填してくれる人はいません。

 思えば、マンションのローンがなくなり、居住費がグッと抑えられたことも大きいですが、気力も体力もある50代のうちからコツコツ貯め、コンパクトな予算で暮らせるよう準備をしておこうと思っています」

月12万円で過ごすきんのさんの1か月の内訳

・住居費…………2万円
・食費……………2.5万円
・教育娯楽………2.5万円
・水道光熱費……1.1万円
・保険・医療……0.8万円
・交通・通信費…1.5万円
・衣服類…………0.6万円
・その他…………1万円

 楽しむこと、学ぶことは生きがい。教養娯楽費はしっかり確保。その他の1万円が心の余裕を生む。

老後を見据え、お金をどう有意義に使うか

 300円の予算でお弁当作りをしたり、3000円以内で日帰り旅に出かけたり。出費を抑えながら生活を豊かにできる方法を模索して楽しんでいる。また、お金をかけず簡単に作れる健康的な料理のレシピ集も作成。老後の生活に活かす予定だ。

「お手頃でも栄養価が高い旬の食材を選んだり、外食はせずとも、ちょっとリッチな食材をお取り寄せして、“おうちレストラン”の気分を味わったり。

 お金がないから使わないのではなく、いかに有意義に使うかを常に考えます。お金に働いてもらうため、投資も行っています」

 一方、団地に引っ越すきっかけとなった母親との関係は相変わらず。朝食を用意したり、仕事の後に母の部屋に立ち寄って安否確認をするなど、“スープの冷めない”近距離別居で、干渉しすぎず見守りを続けている。

「80代になった母は、足腰が弱くなり、認知機能の衰えが目立つようになりました。些細なことがスムーズに行えないこともしばしば。散らかった母の部屋を見て、イライラしてしまうこともあります。

 でも、今の母の姿は未来の私の姿。それを心にとどめて、できるだけ母の不安に寄り添っていきたいと思います。とはいえ、老後の暮らしばかりにとらわれるのは悲しいもの。

 まずは今の自分が快適でワクワクできる空間を大切にすること。そうすれば、いつでもどんな場所でも豊かな気持ちで過ごせるはずです」

お話を伺ったのは……きんのさん(54歳)●母の介護をきっかけに都内の新築マンションから築50年越えの団地に引っ越し。団地での生活を綴ったブログ団地日記 築50年越えの団地暮らしが人気を博す。著書に54歳おひとりさま。古い団地で見つけた私らしい暮らし(扶桑社)。

物を捨てるのは悪だと思っていた

 ワンルームのアパートでの暮らしぶりを発信するインスタグラムが注目を集めるミニマリストのapartment301さん(以下、アパさん)。モノトーンで統一された無駄のない彼女の部屋は、7年前に起きた熊本地震が転機だった。

「揺れの後、整然と片づいていたはずの部屋には、一瞬にして物が散乱し、足の踏み場がない“汚部屋”に変わっていました。あまりの物の多さに圧倒されてしまって。

 たくさんの物が壊れてしまった悲しさより、自分の部屋にこんなにたくさんの物があったのかという衝撃のほうが大きかったくらいです」(アパさん、以下同)

 元来、“収納大好き人間”。以前の部屋では、サイズを測って買ったケースを並べた美しい収納に満足していた。しかし、

「地震を経験し、収納をいくらきれいに整えても、今の自分に不要なものをため込んで暮らしていてはダメだと気づきました」

 地震後、街中に出されたゴミを見ると、壊れたものだけでなく、明らかに“いらないもの”であふれかえっていた。いかに多くの人が自分と同じように不要なものと一緒に暮らしていたのかを実感したと振り返る。

「部屋にある大量の不要品は、ただ部屋を雑然と見せるだけでなく、時には自分の命を危険にさらす物に変わる瞬間があると、多くの人が気づき、震災後に手放したのだと思います。

 どんな物でも“大切にしなければいけない”、“捨てるのは悪だ”という考えは、地震によって強制的にリセット。自分に必要ではなくなったものは、手放しながら暮らすべきだと思うようになりました」

部屋が広いとムダを生むだけ

「実は震災の前は、もう少し広いところに引っ越したいと考えていた」とアパさん。しかし、今の自分に不要なものをそぎ落としていく作業を進めると、今以上の部屋の広さは必要ないと思い始めた。

「むしろ、スペースがあると無駄が多くなるとわかりました。家賃も水道光熱費も高くなるので、コスパが悪いのです。それに、広い収納があれば、意図せず物が置けてしまい、物が物を呼んでしまう。デメリットが大きいと感じるようになりました」

 広い部屋で物が充実した生活こそ、便利で快適だと思い込んでいたが、それは勘違い。自分の生活に合う物の適量と適度な広さがあることに気がついたと語る。

 さらに、必要性を感じないものを手放して好きなものだけを残していくと、部屋がスッキリするだけでなく、生活のスタイルも変わっていった。

「やらなければならないことを真っ先にできるようになりました。物が多いと、掃除も洗い物も面倒くさくて後回しになりがち。

 でも、物が少ないとやることのハードルが低くなるから、家事などのスピード感がグッと上がりました。洋服も食器も少ないので、選ぶ手間も時間もいらない。

 丁寧な暮らしがしたいと思っていたのですが、そういう暮らし方を選ぶ私は、実はシンプルで効率の良い、悪く言えば“手抜き”な暮らしが合っているのだなと実感させられました」

 そこからは自分らしく過ごす部屋をとことん追求。食事もメニューのバラエティーより栄養面を重視し、手軽に作れる料理で毎日を固定化した。

「誰に合わせることなく、自分が大切にしたいものだけを大胆に少数精鋭で残していけたのは、ひとり暮らしの醍醐味かもしれません」

 たくさんの物を手放した一方で、手放せなかったのは、部屋に飾るインテリアの数々。残ったものは、それが自分にとって本当に大切で興味のあるものだとハッキリしたという。

「人は物がたくさんあるからこそ逆に迷ったり、悩んだりするのかなと。好きなものだけに囲まれた部屋に整えることで、自分の歩きたい人生がより鮮明になりましたね」

お話を伺ったのは……apartment301さん(45歳)●家賃33000円のワンルームでのミニマムな暮らしをSNSで発信する。現在はお片づけアドバイザーとしても活動。Instagramは@apartment_m301。著書に捨て活で見つけた「私」が主役のワンルームライフ(主婦の友社)。

(取材・文/河端直子)

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