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KANさんは自ら演出、いまどき「新葬儀事情」と遺影の印象を変えた超大物芸能人

週刊女性PRIME / 2023年12月7日 6時0分

ユーモアあふれる葬儀をプロデュースしたKANさん

 ヒット曲『愛は勝つ』で知られる歌手のKANさんが、11月12日に亡くなった。61歳という若さでの訃報は世間の悲しみを誘ったが、その独特な葬儀のスタイルが注目を集めている。

独特な葬儀のスタイルだったKANさん、葬儀の流行り

 近親者のみで行われた葬儀・告別式では、文豪・夏目漱石の肖像を模した遺影が祭壇に飾られた。これはKANさんのアーティスト写真で、本人の意向で選ばれたものだという。

 そして、お通夜の参列者に配られたのは、カラフルなパッケージのポップコーン。ドラマーの清水淳は自身のSNSで《葬儀の服装とバランス悪い》《最高だね》と投稿した。

 タオルやお茶など一般的な返礼品と比べると、かなり自由で個性的なセレクトだ。実は最近KANさんのように自分らしく、常識にとらわれない葬儀のスタイルが広がりつつある。自由なスタイルの提案に定評のある鎌倉自宅葬儀社・馬場偲さんにお話を聞いた。

「関東近県にお住まいの元大工さんの例ですが、ご自分で建てた家に愛着があるため、在宅医療と在宅死を希望されました。普通は火葬まで2~3日ですが、海外で結婚された娘さんを呼び寄せるため、10日ほど自宅リビングにご遺体を置いて、ゆっくりとお別れの時間を取りました」

 遺体はエンバーミングと呼ばれる技術で殺菌消毒・防腐や修復をした後に化粧を施し、生前に近い姿に整えられた。火葬場に行くまで、妻や娘が川の字になって眠ることもでき、しっかりとお別れを告げられたそうだ。自宅葬の大きな特徴は、生前と変わらぬ環境で遺族が見送れること。故人が生前可愛がっていた犬が遺体の足元に自然とうずくまるなど、微笑ましい光景も見受けられるという。

「皆さん、以前は受け身だった葬儀に対して、この15年ぐらいはインターネットの普及でがらりと変わってきた感じがあります。旧来の形式ばった一般葬に疑問を持たれる方が増えてきました」(馬場さん、以下同)

 費用に関しても、葬儀の松竹梅の差や祭壇の相場もわからないままに払っていたのが変わってきたという。

「究極の『直葬』といって、通夜も告別式も行わずに火葬だけをするような人も現れました

 一時期、DIY葬がバズったことがあります。葬儀社を通さずに、全部自分でやる葬儀のことです。

 ご遺体はレンタカーで移動。ドライアイスは近所のドライアイス屋さんで買ったりして、棺はネットで購入。アマゾンや楽天でも買えます。火葬も自分でオンライン予約して火葬場へ。

 確かに、葬儀屋というのは資格がいるわけではないですから、自分で1から10までやろうと思えばできます。受け身ではなく、主体的に葬儀に向き合う。そういう意味でDIY葬という選択は正解だと思っています。無論、ご遺体の管理など、専門的な知識が必要な部分もありますが」

葬儀のスタイルも自由な時代へ

 コロナ禍によって、葬儀の小規模化、簡素化が当たり前となり、葬儀に新しい流れをもたらした。多死社会に向けて、介護施設や病床数、従事者不足で在宅医療のニーズが高まったのも要因のひとつだという。

「家族葬や自宅葬はこれから増えていくのではないでしょうか。今までは葬儀に対して“何をしてはいけない/何をしなければならない”、という固定観念を持っている方も多かったと思います。

 でも、例えば火葬場に行くのに喪服でなければいけないというルールはありません。平服に近い地味な服でもいい。葬儀の食事といえばすしや天ぷらがお約束になっていますが、例えばよく行っていたファミレスからUberEatsで配達してもらってもいい。

 お母さんを自宅介護していた娘さんの例ですが、自宅葬で、身近な方に手作りのハヤシライスと、お母さんの好きだった『崎陽軒』のシウマイ弁当を振る舞ったケースもあります

 葬儀だからと旧来の形式に従うのではなく、故人が生前に日常で好きだったこと、家族が本当にしてあげたいことをする。それが最大の供養だと馬場さんは語る。

 通夜・葬儀で祭壇に飾る故人の写真「遺影」にも変化の波が押し寄せている。遺影といえば黒額が定番だと思っている人も多いのではないだろうか。

「ここ9年間ぐらい、遺影の黒額はまったく出ませんね。1000件に1件ぐらいかもしれません。皆さん、グレーとかピンク、黄色や緑など、カラフルな色を選ばれます。遺影だからというのではなくて、明るくポジティブに撮りたいのが今の流れじゃないかと思いますよ。“正装で正面向き、口は一文字で”というスタイルは今はもうほぼない。斜めに向いてポーズをつけてにこやかにスマイル、というのが主流です。服装もきれいめではあっても、正装ではない」

 とは、巣鴨のフォトスタジオ、えがお写真館の太田明良さん。生前遺影の撮影に自ら訪れるのは60代。きれいなうちに写真を残しておこうと考えてのことだ。70代以上は家族に連れられて来ることがほとんどだという。

「大前提として、遺影は残された家族のものでもあるので、自分の希望ももちろんあると思いますが、家族の希望を反映しています。例えば自分のお母さんの遺影なら、いつものお母さんの姿のちょっときれいなバージョン、そういう写真を希望される方が多数です。

 奇抜な写真はあまりありませんね。身体を鍛えているお父さんで、上半身裸の遺影を希望した方がいたんですが、さすがにそれは家族に反対されてました(笑)」(太田さん、以下同)

遺影の印象を変えた志村けんさん

 女性は友人同士で撮影にやって来て、女子高生がプリクラを撮る感じで盛り上がるが、男性は遺影の撮影に消極的な傾向だった。妻に嫌々連れて来られる様子だったというが、それが変わったのがコロナ禍だ。

「志村けんさんの影響は大きかったようです。彼がいきなりコロナで亡くなって、あの笑顔の遺影がバーンと出た。それが壮年の男性に衝撃を与えたようです。自分の遺影ってないよな、と」

 志村さんの遺影は、笑福亭鶴瓶とのツーショットを切り出し加工したもので、自然な笑顔がとても印象的だった。

「七五三や成人式が終わって大人になると、きれいに写真を撮ってもらう機会ってないじゃないですか。遺影撮影だからとかしこまらず、大人が写真を撮ってもらう良い機会として楽しんでもらえる方向に変わっている気がします」

 KANさんのように楽しい葬儀にしてもいい。自分らしく、自然に。それがこれからの葬儀の流れになりそうだ。

(取材・文/ガンガーラ田津美)

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